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第_話

「なぜ我らを呼んだ?」


「お前達に藩士がある」


 暗闇の中に一人の男性が立っている。

 その周囲には巨大な体躯の怪物が三体、中央に立っている男性を見下ろしている。


「この世界は狂っている。身分の高い者の利己的な思想が尊ばれて身分の低い者達の命が簡単に切り捨てられている」


 中央にいる男性は切実な声で自分を囲んでいる怪物三体に話し始める。


「しかも聖典に記される法によって裁かれるべき者が裁かれず無実の人間が裁かれている。まるで聖典によって人々を操っていると思えて仕方ない」


 男性のハンス内容に周囲の怪物達は依然と中央にいる男性を見下ろしていた。


「お前達もおかしいと思わないか?古代から生を受けたお前達よりも前に存在する聖典は人間が集団で暮らして文明を築いた現在、人間だけが醜い争いを聖典によって正当化されている。あまりに都合が良過ぎる」


 中央にいる男性は周囲の怪物三体にそれぞれ視線を合わせながら話す。


「我もそう思う。我らが生まれる前から聖典が存在してこれまでの歴史からこれからの未来まで記されているが、今までの記録からあまりに未来の記録が一部の人間だけに都合が良過ぎる」


 怪物の一体が男性の話に賛同すると他の二体も小さく頷く。


「しかし、それを証明するのは不可能だ。ただでさえ人は魔術と神聖術を神々から得た事でより文明が発展した。人口も急増した現在、誰が聖典を利用して人間達を操っているのか分からない」


「それに書き換えられていた事実が分かったとしても書き換えた者を捕まえない限り本物の聖典の内容は誰も分からない」


 二体の怪物は最初に話した怪物の話を聞いて判明させるのは不可能と断言する。


「私に考えがある」


 三体の怪物が話している中、中央の男性が声を発した。


「私が聖典に記されている世界を終焉へ誘うとされている魔王の存在になる。だからこそお前達を呼んで話をしている」


 男性の発言に見下ろす怪物三体は驚愕で体を一瞬だけ震えた。


「聖典に記されている魔王は『人々が神々の力で生み出した世界の行く末を見守る三匹の獣の力を取り込んだ人間が世界を終焉に誘う』とされている。私がその魔王となって世界をより良い方向へ誘えば聖典の改竄んが証明される。そうならないように書き換えた者も手を下すはずだ」


 男性の話を聞いた怪物たちが互いに視線を合わせた。


「お前達の言いたい事も分かる。私が魔王となればお前達も含めて勇者に滅ぼされる宿命から逃れなくなる。私の独断を話している。お前達が拒否するなら私はそれを受け入れる。他の方法を探すまでだ」


 男性が話す声には強い意志が宿っていた。

 怪物三体は男性の言葉を聞いた後、少しの間を開けて口を開いた。


「我らは世界の行く末を見守る事が使命。世界を終焉に誘う魔王に取り込まれる宿命ならそれを受け入れるしかない」


「聖典の記されている通りなら遅かれ早かれ我らは未来の魔王に取り込まれてしまう」


「我らと同じ志を持つお前になら取り込まれても構わない」


 怪物三体から男性の話を受け入れる意見を聞いた男性は頭を下げた。


「ありがとう。私の独断で決めた事に賛同してくれたお前達と出会えた事を誇りに思う」


 怪物三体にお礼を伝える男性を見下ろす怪物三体は自身の手を男性の前に伸ばす。


「我らの命を一度救ったお前の目的のために力を貸すくらい容易い事だ」


「我らがお前に取り込まれるのだ。絶対にお前の目的を果たすまで滅ぼさせない」


「我らを取り込むのだ。ヘマをしたら後生も呪ってやるだけだ」


 怪物団体が伸ばした手は男性の当た目の上で重なった。


「ありがとう。お前達の思いは無駄にしない」


 頭の上で重ねられた手に向けて男性は手を伸ばして怪物たちの手に触れた。

 触れた手から怪物三体の力が急激に吸い込まれていく。力を吸い取られる怪物達は徐々に体が透けていく。


 怪物達の力を吸い取っている男性は人の体を維持できずに異形の姿へ変貌していく。

 怪物達の姿が完全に消えると怪物達を取り込んだ男性の姿は元の人間からかけ離れた異形の存在に変わった。

お疲れ様です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで頂けると幸いです。

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