第十四話
先に集合場所へ到着したノクトは近くの露店で売っていた軽食を食べていた。
ノクトの買った軽食は香辛料と供に炒めた薄切りの羊肉と葉物野菜を穀物が主原料の皮で巻かれた料理だ。
ノクトは買った軽食を咀嚼すると羊肉の癖の強い臭いは香辛料によって打ち消されて羊肉本来の強い旨味が口に広がる。
葉物野菜の瑞々しい食感と風味が穀物由来の皮のほのかな甘みと相まって香辛料の舌が痺れるような辛みを優しく包み込んでいる。
そして何より片手で食べられるので非常に食べやすい。
食べ進めていくとノクトの視界に集合場所に来る人物が映る。
周りの通行人より一回り以上大きいラザフォードは遠くからでも目立つのですぐに見つかった。
ラザフォードの傍にいるホホはノクトに手を振りながら歩み寄ってくる。
ラザフォード達がこちらに気付いたノクトはの食べ残っている軽食を早食いして呑み込んだ。
ノクトが食べ終わるとラザフォード達もだいぶ近づいていた。
そこでノクトはラザフォードとホホ以外の見知った人物が視界に映る。
「待たせたな。ノクト」
「いえ。俺もそこまで待ってないです」
ノクトの近くに付いたラザフォードは先に集合場所へ到着したノクトに声をかけるとノクトも返事を返す。
ラザフォードと共にノクトの近くに付いたホホにノクトは王宮図書館の入館許可証を手に取った。
「ホホ。これが入館許可証だ。失くすなよ?」
「先生、ありがとうございます!」
ノクトは手に取った入館許可証をホホに渡すとホホは両手で受け取りノクトにお礼を言った。
「それで何であんたがいるんだ。勇者ファルコ?」
「奇遇だね?僕も同じことを思ったよ。勇者ノクト」
ノクトは視界に映るファルコを睨むとファルコもノクトを冷たい視線を向ける。
「俺はラザフォードさんやホホとここで待ち合わせしてただけだ」
「僕もこのお二方と偶然同じ食事処で会って、ともに食事を摂った帰り道なだけです」
互いにここにいる理由を述べる時も依然と互いを見る視線は敵意剥き出しだった。
「シルフィーなら先にあんたとの集合場所に行ったぜ。待たせない方が良いんじゃないか?」
「そうですね。勇者シルフィーを待たせるわけにはいきません。ご忠告どうも」
ノクトの話を聞くとファルコはシルフィーとの待ち合わせ場所へ向かうために再び足を前に出す。
「勇者ラザフォード、ホホさん。一緒に食事できて良かったです。また機会があればご一緒に席を囲みましょう」
ノクト達から離れていくファルコはラザフォードとホホに手を振り別れの挨拶をする。
ファルコの背中が小さくなるとノクトは舌打ちをする。
「あのクソ野郎も相変わらずだ」
ファルコの姿が消えた所でノクトはやっと険悪な空気を消した。
「先生。あのファルコさんという方と何があったのですか?」
ホホは食事処でもそうだが直接ノクトとファルコが顔を合わせた時に感じたものすごい険悪な雰囲気に何が起きてそうなったのか質問する。
「あのクソ野郎が一番先に突っかかってきたんだ。どうやら魔王の子孫の俺が自分と同じ勇者であることが虫唾が奔るよりも気に入らないらしい」
ホホに説明するノクトは苦虫を噛み潰すような表情を浮かべていた。
ホホはノクトの説明と表情を見聞きして互いに相当反りが合わない事だけ理解した。
「そうだとしても、そろそろ勇者ファルコに歩み寄った方が良いぞ。このままだと悪魔達との戦いに支障が出るぞ」
「それはあのクソ野郎次第です。あっちが断固として自分の考えを曲げない限り俺が折れても意味がないです」
ラザフォードは出会ってしばらく経つというのに依然と険悪な二人の空気が原因で悪魔達との戦いに支障が出ないか心配していた。
そんな考えがあってラザフォードはノクトに優しく注意するがノクトはファルコの考えが変わらない限りラザフォードの案も意味がないと断言する。
ノクトの言葉を聞いたラザフォードは溜息を吐く。
確かにノクトが言うようにノクトが俺たとしてもファルコがノクトへの態度が変わらない限りノクトが折れても意味がない。けれどノクトの方もファルコに対する態度をもう少し気を付ければ今以上に険悪にならなかったとも思う。
「それよりもう王宮へ向かうますか?」
ノクトは話題を変えてラザフォードに今から王宮へ向かうか尋ねる。
「そうだな。そろそろ招集の時間だし王宮へ行くか」
ノクトに尋ねられたラザフォードは招集された時間がそろそろであるのも加味して王宮へ向かおうと告げた。
「ホホは俺達が戻るまでしっかり勉強してろよ」
「分かりました!」
ノクトが自分達の用件が終わるまでしっかり魔法薬の専門書を読んで勉強するように伝えるとホホは元気よく返事を返す。
「じゃあ王宮へ行くか、ノクト。ホホ」
ラザフォードは王宮へ足を勧めながらノクトとホホに声をかけた。
ノクトとホホは「はい」と一言返すとラザフォードの傍に着いてともに王宮へ向かう。
お疲れ様です。
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