第十三話
ノクトはシルフィーと共に王宮から出ると王都の街路を進んでいた。
「そういえば、ノクトはなぜ招集時間前に王宮へ来たのですか?」
ノクトの隣を歩くシルフィーは自分と同じ招集時間前に王宮内にいたのか尋ねる。
「あぁ、王宮図書館の入館許可証を発行してもらったんだ」
「入館許可証、ですか?」
尋ねるシルフィーにノクトは王宮図書館の入館許可証の発行をしていた事を話す。
「勇者であるノクトであれば入館許可証がなくても王宮図書館へ入館できるはずですが?」
シルフィーは入館許可証がなくても王宮図書館へ入館できるはずのノクトがわざわざ入館許可証を発行した理由を尋ねる。
「放せば長いんだが——」
ノクトは今回の旅で訪れた村でホホと出会い、魔法薬の先生として旅に同行しながら魔法薬をを教えている事、自分達が王宮へ鞘腫されている間の時間を王宮図書館の魔法薬の専門書を読んで勉強させるために入館許可証を発行した事を説明した。
「——てわけなんだ」
ノクトの話を聞いたシルフィーは微笑を浮かべてノクトを見ていた。
「ノクトが先生とは驚きました」
「まったくだ。全然身の丈に合わないことをしてると思うよ」
シルフィーの言葉にノクトは自分が先生とは分不相応な肩書と自虐する。
「私はそう思いません。その教え子さんもノクトの下で魔法薬を学びたいからついて来ているんです。その自虐は自分の意志であなたを先生と決めた教え子さんにも失礼ですよ」
ノクトの自虐にシルフィーは優しい表情を浮かべながらノクトの教え子のために注意した。
「でもノクトが魔法薬にそこまで明るいとは思いませんでした。誰から魔法薬について教わったのですか?」
シルフィーはノクトが魔法薬について明るかったことに内心驚きながらノクトが誰から魔法薬を教わったのか尋ねた。
「……王女のシルフィーなら知ってるだろ。前聖騎士エドワードを」
シルフィーの質問に少し声を詰まらせた後、ノクトは自分の養父の名前を出す。
「もちろんです。現聖騎士レイノスと並ぶ凄腕の聖剣使いで魔術や神聖術も一流の腕だったと聞いています、もしかして——」
「そのエドワードから魔法薬を教わった」
ノクトがエドワードから魔法薬を教わったと聞くとシルフィーは少し戸惑いの表情を浮かべる。
「まあ、あのクソジジイからは大事なことからくだらないことまで教わったよ。そのおかげでホホに魔法薬を教えられてるしな」
ノクトはくしゃっとした笑みを浮かべて困り顔のシルフィーを見た。
ノクトは悲壮感の欠片も感じさせないどこか懐かしいことを思い出したような笑顔をシルフィーに見せていた。
「歴代最強と謳われた聖騎士に対してその呼び方をするなんて、あなたらしいです」
シルフィーはやれやれといった表情を浮かべた。その表情を浮かべるシルフィーはどこか安堵したような声音が微かに感じ取れた。
「けれど、エドワード様から魔法薬を学んでいたのならノクトが魔法薬に明るいのも納得できます」
「ジジイってそんなにすごい人なのか?」
「当たり前です。エドワード様は現役時代王宮の医務院の魔法薬開発の第一人者でもあった方です。しかも王宮専属の魔術師と神聖術師の育成も担っていたのです。まさに『多才』を体現したような逸材です」
シルフィーはノクトに現役時代のエドワードの偉業を語る。
ノクトは直接話を聞いてエドワードが残してきた功績の偉大さを実感する。
「シルフィーの話を聞いてやっとジジイの実力が誰からも認められる偉業を残したのを詳しく知れて良かったよ」
ノクトはシルフィーから聞いた養父の偉大さに今更ながら誇らしい気持ちになる。
ノクトとシルフィーが話をしながら街路を進んでいると目の前には二つの道に分かれた分岐点が現れた。
「俺は右に曲がるけどシルフィーは?」
「私は左です。王宮でまた会いましょう」
ノクトとシルフィーはそれぞれの目的地の方向へ進む。
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