第十四話(裏)
神聖術研究棟から出たシャルとマリアは誰にも目撃されないように物陰に隠れながら神聖術研究棟から離れる。
「誰にも見られていないようね」
「そうみたいですね」
神聖術研究棟から随分と離れた校舎の物陰に隠れたシャルとマリアは互いに顔を見合わせた。
シャルは白衣の男から奪った破られたページをマリアにも見えるように手に取った。
「私の目的の物は手に入れました。これで後はこのページに施されている術式を解読すればこれを欲しがっている人物の狙いも分かりますね」
「けどこのページに施されてる術式を解読できる人がそうそういるとは思えないわ」
シャルが見せるページに施された術式がわずかに輝きマリアの視界に映る。
「マリアさん。流石にこの状況で嘘はいけないと思いますよ?」
マリアにも見えるように出した破られたページを持っているシャルは突然マリアが嘘を吐いていると口にした。
「何、いきなり。私が何で嘘を言ってるなんて言うの?」
マリアはいきなりシャルからマリアが嘘を吐いていると発言した事に抗議する。
「私が聞き逃してたと思いますか。マリアさん?私が最初に破られたページを見せてこの紙に施された見たことのない術式を見た時のマリアさんの発言を」
シャルは真剣の眼差しでマリアの目を見た。
「あの時マリアさん、『こんな古い術式見たことない』って言ってましたよね?何でこの術式が古いって分かったんですか?この術式を知ってなければ『古い術式』と断言できないはずです」
「⁉」
シャルは白衣の男から奪い取ってマリアと一緒に破られたページに施された術式を見た後に発言した言葉を聞いてから疑問に思っていた。
シャルでも見た事のない神聖術の術式を学園の一学生であるマリアがすぐに『古い術式』と発言した時から、マリアはこの術式を知っていてあえてその場では知らないと嘘を吐いた。そう考える方が筋が通っている。
「もし嘘を吐き通すつもりならマリアさんにも私があの人に施したように自白させてもいいんですよ?」
シャルは淡々とした口調でマリアに真実を話すように告げた。
「まさか私があんなところで口を滑らして、その発言から私があんたに嘘を吐いたとすぐに見破られるとは予想しなかったわ」
シャルから冷たい視線を向けられたマリアは小さく息を吐いて自分がシャルに嘘を吐いたことを認めた。
「あんたの言う通り私はこの破られたページに施されている術式を知っている。けれどこの術式の解読はできてもこの術式の神聖術を使えない」
マリアはおエージに施されている古い術式を解読できても使用できない事を伝えるとシャルの表情はわずかに驚きの色を見せた。
「あんたに嘘を吐こうが黙秘しようがすぐにバレるってあの男を見てつくづく理解したから私が知ってること全て話すわ」
「黙っていることは最初から知ってもしたが、やっぱりまだ何か私に嘘を吐いてたんですね。マリアさん?」
「分かってるじゃない」
マリアは息を吐いた後、シャルが白衣の男に真実を吐かせた力を目の当たりにした事でシャルに嘘や黙秘が通用しないと理解した。
これ以上無駄な抵抗を諦めたマリアは半ば諦めの表情を浮かべた。
「あんたに黙ってたことも嘘を吐いたことも多くてどこから話せばいいか分からないけど、まず本当の自己紹介からした方が良いかしら?」
マリアは今までシャルに付いてきた嘘や黙秘してきた事が多くて本当に何から話そうか考えていたがまずは本当の自己紹介をする事に決めた。
シャルはマリアの口から紡がれる真実を聞いて平静を装う事ができなくなっていた。
「私はミラー・ガブリエル。この学園が保管している《写し鏡》の新たな依り代っていえば理解しやすいかしら?」
お疲れ様です。
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