第十三話(裏)
「聖女って言ったわよ。この男⁉」
「そうですね。しかも人の手でつくられたと言ってました」
シャルとマリアは目を合わせて白衣の男の発言について驚く。
「人工的に人をつくり出すのは聖母教の教えに反しているはずよ!それなのに何で学園はその教えを破ったの⁉」
マリアは聖母教の教えにある近畿の一つの人をつくり出す所業に声を荒げた。
「けれど国の法律を犯しているわけではないです。教えを破っても認知されなければ誰も咎めませんし知られたところで法で裁けません」
シャルの言う通り聖典の記述によって生まれた聖母教の教えに反している所業でも現在のヒストリニアの方では人をつくり出す事を裁く法律が存在しない。
人を人工的につくろうが聖母教の教徒に疎外されるだけで法で裁かれることはない。
「それも聖女をつくり出す研究をしていた。しかも聖女の胎児をつくり出している段階まで研究が進んでいた。そうなれば聖母教もそんなことを気にしていられません」
「確かに、聖女の存在は聖典に世界を正しい道へ導くために必要な存在と記されてる。たださえ聖女を探し出すのに国は躍起になってやっと六人。探すよりもつくり出す方が効率的になったらそんなことどうでもよくなるわ」
聖女は勇者と同じ世界を平和に導く存在の一つとして崇められる必要な存在だ。その存在を量産できたとしたら聖母教も教えに反するという事など些末な話だ。
「これではっきりしました」
「何がはっきりしたのよ?」
シャルが白衣の男から自白させた破った資料のページを渡す代わりに受け取るものの一つに人工的につくられた聖女の胎児と知り、シャルははっきりと知ったような顔を浮かべるとマリアはそのはっきりした何かを尋ねる。
「この破ったページを欲しがっているのはこの学園の研究者とつながっている人物。そしてこのページには人工的につくられた聖女の胎児と同等かそれ以上の価値があるということです」
白衣の男がつくり出された聖女の胎児を手に入れたがっていたとしても資料のページ一枚と交換するには普通考えれば釣り合いが取れない。
まして破り取って所持している白衣の男にはその価値を知らない。その価値を知らない者にわざわざ聖母教徒が喉から手が出るほど欲しがるであろうものと交換するのだ。
取引において片方が交換するものの価値を知らない状況で相手が交換する価値と釣り合うものを渡して得る利益より交換するものより低い価値のものと交換する方が得られる利益が大きい。
つまり破り取ったページの価値を知らない白衣の男が交換する破り取ったページの価値が人工的につくられた聖女の胎児よりも価値が高い可能性が高いという事だ。
「つくられた聖女の胎児がどんなものかは知りませんがこの人にとっても国にとってもかなり価値の高いものに変わりないはずです。それより価値の高いこのページは一体何が施されているんでしょうか?」
シャルは白衣の男が持つ破り取ったページを奪い取っ手破られたページを見る。
破り取られたページは一見するとシャルが最後に見ていた学園が国から保管を命令された法具の一覧の一ページだ。そこには《写し鏡》の保管記録も記されている。しかし目を凝らして良く見ると神聖術の術式が描かれていた。
「この神聖術の術式、見たことも効いたこともないです」
目を凝らして術式を見ているシャルは破られたページに描かれている複雑な神聖術の術式に見覚えすらなかった。
「確かに、こんな古い術式見たことないわ?」
マリアもシャルが持っているページに描かれている術式に見覚えがないようだ。
「けどこれが聖母教徒も欲しがるようなものを手にしている人物が欲しがっている価値のあるものなのは確かだわ。これをどうする?」
「ひとまず私達の手元に置きましょう。今はすぐにここから出ましょう。学園の誰かにここにいるのが知られては面倒です。私がこの人の記憶を火山して私達の記憶を消します。マリアさんはすぐに私達が個々にいた痕跡を消して下さい」
「分かったわ」
マリアが奪い取ったページをどうするか尋ねるとシャルは一時的に自分達の元で保管する事を提案した直後、白衣の男に記憶改竄魔術を施して自分達の記憶のみを消去して辻褄の合うように改竄した。
マリアはシャルの提案に賛同して素部にシャルとマリアがここにいる痕跡を自力で消していく。神聖術を使ってしまえば後で神聖術師に痕跡を消して知る事が露呈してしまう可能性をなくすためだ。
「痕跡は消したわ。そっちはどうなの?」
「私もこの人の記憶を改ざんしました。すぐにここから退散しましょう」
シャルとマリアは互いにやる事を終えてすぐに神聖術研究棟から出て行った。
お疲れ様です。
本日も読んで頂き誠にありがとうございます。
これ皮も投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい