第十二話(裏)
「くっ、かくなる上は!」
白衣の男は手元に神聖術で発動して炎を生成する。その動作と同時に白衣にしまった破ったページを取り出す。
おそらく白衣の男はマリアが手に入れたがっている破ったページを焼き捨てようとしている。
「⁉」
白衣の男が破ったページを焼き払おうとする直前、マリアの持つ光の刃が白衣の男の胸を貫いた。
白衣の男の胸を貫いた光の刃へ白衣の男の体内に溜まっている神聖力を急速に吸収していく。
白衣の男が発動した炎も白衣の男から吸収している影響でどんどん火力が弱まり数秒しないうちに生成した炎は消えてしまった。
「これだけ神聖力を吸収してしまえばもう神聖術は使えませんよね?」
マリアは白衣の男の胸に突き刺した光の刃を引き抜いた。光の刃で貫いたはずの白衣の男の胸には傷跡どころか白衣の男の服の胸元すら刺突の跡がない。
マリアが生成した光の刃は切っ先から霧散していき光の刃が消えて元のナイフに形を戻した。
「今のあなたは神聖術は使えません。正直に話すのが賢明です」
マリアは握っているナイフを白衣の男の首元に突きつけて白状するよう脅す。
「待ってください!マリアさん!」
ナイフを白衣の男に突きつけているマリアの背後から聞き覚えのある声がした。
マリアは背後を一瞥とそこにはシャルが部屋の扉の前に立っていた。
「あんた何でここに⁉」
マリアは先程まで頭の中に聞こえていたシャルの声が先入観となってまだ学園資料保管棟にいると思っていたが、ここへきてマリアの援護へムっていても何らおかしい選択ではない。
「その人から知ってること全て吐かせるならこれを使った方が確実です」
シャルはマリアがナイフを向けている白衣の男に歩み寄った。
「あなたが知ってるこの破り取ったページに関すること、全て吐いてもらいます」
シャルはマリアのナイフが首元に向けられて下手に身動きが取れない白衣の男に手を前に出して魔法陣を浮かび上げる。
魔法陣が浮かび上がると白衣の男のめが虚ろになっていきそのまま膝を付いた。
「一つ目の質問です。その破り取った資料のページは何ですか?」
シャルは膝を付いている目が虚ろの白衣の男に淡々と質問する。
「学園資料保管棟に保管されている法具の保管記録の資料の一部だ」
シャルの質問に白衣の男は抑揚のない口調で答える。
「あんた一体何したの?」
「後で説明します。今はこの人から情報を聞くのが先です」
膝を付いた白衣の男がシャルの質問を素直に答えた事にマリアはシャルに何をしたのか尋ねるがシャルはそれを説明するよりも先に白衣の男から情報を吐かせる事を優先した。
「二つ目の質問です。あなたはなぜそのページを破り取ったのですか?」
「この部屋に持ってきて奴と取引のために持ってきた」
白衣の男から離された言葉にシャルとマリアは互いに顔を見合わせた。
「三つ目の質問です。取引とは何の取引なのですか?」
「このページを渡す代わりに僕へ神聖術の研究に必要な費用と被検体を受け取る取引だ」
抑揚のない口調で白衣の男は取引の内容を吐いた。
「四つ目の質問です。あなたはそのページを欲しがっている相手がなせそのページを欲しがっているのか吐いて下さい」
「知らない。互いに交換するブツの情報を詮索しない契約だったから僕は知らない」
抑揚のない声で白衣の男から破り取ったページの情報を一切知らない事を吐いた。
「この男、本当に真実を話してるの?」
「はい。強力な自白作用を与えています。どんな人もこれには嘘も黙秘もできないです」
マリアが白衣の男がページの情報を知らずにここへ持ってきたことに疑問を抱きシャルへ問いかけるがシャルは自分が発動している自白魔術の強度をかなり下げている。どれだけ魔術に耐性のある人間でも絶対に真実しか言えないはずだ。その証拠に自白魔術が正常に聞いている人間は今の白衣の男のように目が虚ろになって動く気力すら湧かない。
「五つ目の質問です。あなたがそのページを渡す相手は何者ですか。知っていることを全て放して下さい」
「取引相手の姿は白のフードを被っていて顔は知らない。名前も契約上聞いていない。ただ取引相手はこのページに施されているものが欲しいとだけ口にしていた」
「施されているもの?それは何か知っていますか?」
「知らない。詮索しない契約だから僕も調べていない」
白衣の男から聞いて、ページに施されたものを欲しがっている事だけ理解した。
「さすがにこれ以上このページについて聞いても無駄みたいね」
「そうですね。でも最後にこの人から聞いておきたいことがあります」
「何そこ聞きたいことって?」
マリアは白衣の男が存外契約を遵守しているせいでまともに破り取ったページの情報を得られなかった事に諦めの色を見せるがシャルは白衣の男に最後に聞きたい事があると告げた。
「最後の質問です。あなたがそのページを渡す代わりに受け取るはずの被検体について知っていることを全て話して下さい」
「僕が受け取るはずだった被検体はかつてこの学園で研究していた人の手でつくられた聖女の胎児だ」
シャルとマリアは白衣の男の口から告げられた言葉に驚愕する。
お疲れ様です。
本日も読んで頂き誠にありがとうございます。
これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。