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第七話

 暗闇の中、再びノクトは召喚された。光が一点も差し込まない漆黒の暗闇に体にかかる重力が感じられない空間でノクトは目の前にいる怪物の片目と向かい合っていた。


「また会ったな。今日はお前と会う回数が多いが何かあったのか?」

『俺は会いたくて会ってんじゃねえんだよ』


怪物は今日で二度目の邂逅に何があったのか尋ねるが、ノクトは自分の意志で会ってるわけでないと伝える。


「まあ、お前がすぐに意識を取り戻したのが原因で我の自己紹介が途中のままだったから我としてはちょうどいいがな」


 怪物の顎から発せられる言葉はどこか嬉々とした雰囲気が感じられた。


『人が倒れ込んでいるってのにちょうどいいはないだろ』


 ノクトは怪物と違い現実世界で体調が悪く寝込んでいるからかかなり機嫌が悪い。


「それはすまんな。だがこれは我の本心だ。我はお前が魔王の力に目覚めてから二年半以上、お前の中にいたがお前とこのように対峙することが今まで叶わなかった。けれどこうして面と向かって会えるようになった。それが嬉しいのだ」


 機嫌を悪くしているノクトに一言謝罪すると怪物はノクトと面会できた事が本当にうれしいようだ。


『御託はいいからさっさと自己紹介しろよ。俺は早くここから出て元の場所に戻りたいんだ』


 ノクトは怪物の長い前口上に苛つきを感じたのかすぐに本題である怪物の自己紹介を催促する。


「そうだな。では自己紹介をするとしよう——」


 怪物は自己紹介をする直前に喉を鳴らし声を整えた。


「——我はファルザード。魔王の魔力に宿る意志とでも言えば理解しやすいだろう」


 目の前の怪物——ファルザードはノクトに魔王の魔力の意志であると伝えた直後、ノクトは険しい表情になった。


「まあ、予想通りの反応だな。お前は今は魔力だけとなった魔王を滅ぼそうとしている。勇者の役目ではなく、大切な家族のために」


 険しい表情を向けているノクトの反応はファルザードも予想していたのだろう。ノクトが険しい表情をしているにもかかわらずファルザードは何一つ言動を変えなかった。

 ファルザードがノクトが魔王を滅ぼそうとしている事、その真意まで語られてノクトは鋭い眼光で睨む。


『その魔王の魔力の意志が俺に何の用だ?』


 ノクトは心の中を読んだファルザードを睨みながら端的に質問する。


「ここからが本題だ。我が魔王の魔力の意志と言ったが元々はそうではなかった」


 ファルザードが本題を切り出した途端ノクトは疑問符を浮かべた。


「何を言ってるのかまだ分からないだろうがそのまま聞いてくれ」


 ファルザードは話の途中でノクトが質問しなくてもいいように最後まで話を聞くよう伝えた。ノクトもファルザードの意図に気付いたのかノクトは言葉を挟まなかった。


「我は元々魔王の魔力になる前は魔王がまだ人間だった頃に現実世界に住んでいた古代兵器魔獣だった」


 ノクトは聞いた事のある古代兵器魔獣という単語をファルザードの口から出てくるとづ腰驚いたが何となく納得できる部分もあった。


「そして魔王となる人間に取り込まれてから世界に三体いた古代兵器魔獣の精神が融合して我、ファルザードが生まれた」

『そんな昔話をして俺に何か関係があるのか?』


 ファルザードが本題を話すとノクトは本題の内容と今ファルザードがノクトと対峙している事と関係があるのか質問する。


「魔王とお前だけしか我はコノ事態を伝えられない。がからお前の精神世界の中で話してる」


 ファルザードは自身が魔王の魔力であるために魔王と魔王の子孫であるノクトだけにしか伝えられないと伝える。


「我は元々世界に繁栄や再生、破壊を司り、世界の秩序を保っていた。それは魔王に取り込まれてからも続けていた。だがこの数百年。この世界の者か分からぬ輩が世界中に何か画策しだし、ここ数年その輩の動きが活発になっている」


 ファルザードは真剣な眼差しをノクトに向けてノクトに重要な事実を話す。


『そうだとして俺に何かしろってのか?』


 ノクトはファルザードが語る事実に対して何をさせたいのか尋ねる。


「お前に何かさせたいわけではない。ただ画策する輩はなぜか勇者の動きや悪魔の動きを先回りして直接影響する罠を仕掛けていない。けれど直接影響しない罠をいたるところにしかけている。十分注意するよう伝えに来たのだ」


 ファルザードは勇者側と悪魔側に直接影響しない罠を仕掛けている輩がいると伝え注意するように忠告した。


『それが本当だとしてそのわなを仕掛けて画策している輩ってのは何が目的なんだ?』


 ノクトはファルザードの話で一番引っ掛かっていた事を尋ねた。ファルザードの言うように両者に直接影響しないと言えど罠を仕掛ける輩の目的が何なのか分からない以上、対策する手立てがない。


「我にも分からない。なにせ我が気付くまで数百年もかかってしまった。そしてようやくお前と対峙できて事態を説明できた。だからこれでひとまずお目の心の中から離れられる」

『どういうことだ?』


 ファルザードが最後に気になる事を言うとノクトはそれを聞き逃さずすぐに尋ねる。


「前から夢でも伝えていたが、我の力と同調しすぎると今のお前の肉体ではすぐに塵に変わってしまう。我が心の中に居続けると徐々に我の力と同調してしまう。だから必要なことを伝えた今、我は重要な時以外はお前と対峙しない」


 ファルザードがノクトの心に居続けるリスクを伝えるとノクトは腑に落ちた。約半年悪夢を見るようになりその頻度が徐々に増えたのもファルザードがノクトの心に居続けた弊害なのだと気付く。そして今日の体調の悪化もファルザードと矢維持して会話したからなのだろう。


『分かった。必要ないことでこれ以上俺の中にいるようだったらお前も討伐してやるからな』


 ノクトはファルザードの話を理解した後、ファルザードに余計な事で精神世界に入ってくるなと警告した。


「分かった。お前の武運を祈る」


 ファルザードはノクトに一言伝えるとファルザードの目と顎が暗闇に消えていきノクトも暗闇に呑み込まれていく。

お疲れ様です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。

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