第二話
「っ⁉」
ノクトは瞼を開き上半身を起こした。
目の前は底なしの場所ではなくテントの中。テントの中からでも外が明るい事が見て伝わる。
「……また同じ夢」
ノクトは寝汗がひどい状態のまま手を額に置いた。
悪魔の襲撃を退けて村を復旧してから約半年が過ぎた。村の復旧を終えてすぐに旅を再開したころからノクトは今日と同じ夢を見た。しかも最初は一週間に一度の周期で見ていた夢が徐々に周期が短くなっていき半年経過した今ではほぼ毎日同じ夢を見ている。
ノクトはテントの外へ出ると空には地平線から昇ってすぐの太陽が大地を照らしていた。
テントを出たノクトはテントの傍に流れている川へ足を運んだ。川の水をノクトは覗くと顔色の良くないノクトの顔が水の反射により見えた。
ノクトは川の水を手ですくい救った水を顔をすすぐため手に溜まっている水を被せた。
程よく冷たい川の水がノクトの顔に着いた寝汗を洗い流して気分がすっきりする。ノクトはテントから出る時に持ってきた手ぬぐいを川の水に含ませる。水を含んだ手部食いを硬く絞り適度な大きさに畳み洗った顔の水気をふき取り全身に掻いた寝汗を拭い取っていく。
一通り寝汗を拭ったノクトは川の水で手ぬぐいをすすぎ硬く絞る。そしてノクトはテントに戻った。
テントに戻るとテントの前に焚火をしていたであろう灰の球った場所の前に大人より一回り以上大きい獣人の男性——ラザフォードが座っていた。
「警備お疲れ様です。ラザフォードさん」
「随分と早いな。ノクト」
昨晩から今朝の夜間警備を担当していたラザフォードは川の水で顔をすすいできたノクトと互いに挨拶をする。
「今日もあまり顔色が良くないな。大丈夫か?」
「大丈夫です。また夢を見ただけです」
顔色の良くないノクトを見てラザフォードはノクトを見て体調を尋ねるとノクトは夢を見たという事だけを伝えた。
ノクトが見た夢の内容はラザフォードは以前に聞いている。なにせテントの中でうなされているのを何度も見ているラザフォードが心配にならない方がおかしいくらい苦悶の表情を寝ている時に浮かべるからだ。
「もうすぐ新しい村に着く。そこには診療所があるらしい。そこで一度見てもらった方が良い」
ラザフォードはもうすぐ着くであろう村にある診療所に見てもらうようノクトに勧める。
「そうします。体にこれといったおかしな幹事はないですが念のため診察してもらいます」
ノクトはラザフォードの言葉に肯定して診療所で診察してもらう事を話した。
二人がそんな事を話していると後ろに設置してある二つのテントの片方からもぞもぞとという音が聞こえる。その後テントから一人の少女が顔を出した。
水色の髪を肩まで伸ばしていてその水色の髪の頭頂部付近に猫の耳を生やしていた。
「……おはようございます」
猫耳を生やしている少女がテントから全身を出すと髪の色と同じ水色の尻尾を生やしてだらんと力なく垂らしていた。
「おはよう。ホホ」
「おはよう。嬢ちゃん」
目を覚ましてテントから出てきた少女——ホホは寝ぼけ眼をこすりながら挨拶を返したノクトとラザフォードの方を見た。
「俺は少し寝るから、朝飯できたら教えてくれ」
ラザフォードは夜間警備の影響で眠気が溜まっているようだ。あくびを零して瞼を重くしているように見える。
「分かりました。朝食ができるまで休んでいてください」
ノクトはラザフォードの頼みを聞いて了承すると労いの言葉をかけた。
ノクトの言葉を聞いたラザフォードはホホが出てきたテントとは別のテントへ入っていった。二つあるテントの片方は男性専用、もう片方は女性専用に分けた。それは間違いが起きないようにというよりラザフォードが大きな体躯であるのと、ホホがラザフォードのいびきを聞くと一睡も寝られないためすでにラザフォードのいびきに慣れたノクトが一緒のテントで過ごす事になった。
「ホホ。川の水で顔を洗ってこい。朝食の準備をするぞ」
ラザフォードがテントに入るとノクトはホホに顔を洗うように言った。
「……わかりました……せんせい……」
ホホはノクトへまだ眠気が取れていないようで呂律が怪しく感じる口調でノクトに返事をした。
ノクト言う通りホホはそのまま川の方へ歩いて行った。
ノクトはホホが顔を洗っている間に昨日拾ってきた薪になる木の枝などを並べた。枝を中央に空気が入るように並べるとノクトは火の魔術を発動して火種を作った。
魔術で火種を作るとできた火種が枝に燃え移り徐々に他の枝に火が燃え移っていく。
ホホが顔を洗って戻ってくる足音が聞こえる頃にはノクトが焚火を起こしていた。
お疲れ様です。
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