第一話
見渡す限り何もない空間にただ一人、黒髪と黒い瞳の少年——ノクトは立っていた。
ノクトは何もない空間をただただ歩いていると急に足場がなくなり体勢を崩す。前のめりに転び倒れる。ノクトは咄嗟に地面に倒れる時の受け身を取ろうするが体には地面にぶつかる衝撃と感覚がない。
その代わり高い所から落ちる時に感じる空気が体にぶつかりかき分けるような感覚を覚える。
落下していく先は底が見えない。底の見えない場所へ落ちていくノクトは落下していく恐怖とは別に何か心の奥底から感じる嫌悪感や憎悪などの負の感情が時は垂れたいと訴えかけているような感覚まで覚えた。
そこが見えない場所に落下しているノクトはどうにかして自信が落下している現状を打破しようと浮遊魔術を発動しようと試みる。しかしノクトが魔力を練る浮遊魔術を発動しようとするもなぜか魔術が発動しなかった。
ノクトはもういとど浮遊ms術を発動するも魔法陣どころか術式一つ組み立てられなかった。
他にも風の魔術や重力魔術など落下している状況を打破する魔術を試みるも℃の魔術も発動しない。
成す術がないノクトはただ落下する先を見ているしかなかった。
どのくらい落下したか分からない程時間が経過したのかまだ落下したばかりなのか時間間隔が分からなくなっているとノクトが見ている落下している場所の底から小さな音が聞こえる。
ノクトの耳に届く小さな音は何の尾とか判別できない程の小さい音にも関わらずなぜか聞きなじみのある音だった。
「……い…………ん……を……………あ…………」
そして落下する程にその音が徐々に大きくなっていく。徐々に大きくなっていく音は誰かの話し声のようだった。徐々に聞き取れるようになると落下している場所の底から凍てつく空気が噴き出した。
凍てつく空気に触れたノクトの皮膚は徐々に熱を奪われていく。けれどなぜか奪われる熱とは別に体に巡る魔力がどんどん活発に体中を奔流する感覚を覚える。以前悪魔に魔王の力の封印を解かれた時に感じた魔力の奔流とはまた違う感覚が体中を駆け巡る。
体の熱を奪われていくノクトはすでに体の自由が利かなくなっていた。
「これ……しん……をのぞ………まえ……とも……でき……」
そして耳の届く人の声がどんどん鮮明になる。
心の奥底から溢れる恐怖や憎悪などの負の感情が総動員で毛国を出すほど恐ろしい声のはずなのにどこか懐かしく感じてしまう声音がノクトの耳に声を届ける。
そして何を話しているのかはっきりしてくる頃にはノクトの体は凍てつく空気によって体中が凍り付きかけた。
もう動く事の出来ないノクトはそのまま底なしの場所に落下していく。
ノクトは凍り付き瞼を閉じることができない瞳を落下する方へ視界が移動すると声が届くそこから何か見えた。
それが見えた瞬間ノクトの危険を察知する感覚が総動員する。けれど凍り付き自由に体を動かせないノクトはそのまま視界に入るそれに対抗する手段がなかった。
底なしの場所から見えたそれは大きな顎とぎらつかせた鋭い瞳をノクトに向けた。そしてそれが話していた言葉がすべてはっきり聞き取れた。
「これ以上深淵を覗けばお前も後戻りできぬぞ」
お疲れ様です。
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