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プロローグ1

「おい!ノクト!早く触媒のドラゴンの爪持って来い!」


 白髪の男性が怒鳴り声を上げ地下の魔法薬学実験室の外にも響く。


「分かったよクソジジイ!いいから少し待ってろよ!」


 魔法薬学実験室の外から怒鳴り声が響いてきた。


 少しの間が開いて魔法薬学実験室の扉を開ける音がした。

 扉を開けた主は王都周辺では珍しい夜を連想させる黒髪と黒い瞳が特徴の少年だった。


 ノクトと呼ばれる少年が左手に持つ革袋はじゃらじゃらと鉱物が擦れ合う音が聞こえる。

 ノクトは地下室の階段を下りて男性が実験している実験台の上に少年が左手に持つ革袋を置いた。


「実験に必要な試料ならちゃんともっと前に準備しろよジジイ」


「その準備をノクトに頼んだのだが実験台の上になかったのはどういうことだ?」


「うっ」


 白髪の男性エドワードはノクトを睨みつけるとその視線に気づいたのかノクトは体をピクリとさせる。


「だって俺に頼んだのだ夜遅くで俺が寝る前に言ってたことじゃねえか!んなもん忘れるに決まってるだろ!」


 ノクトは自分が用意を忘れた試料の言い訳をエドワードに言う。


「なら次の日にでも何を頼んだのか尋ねれば良いものだが?」


「うっ!」


 何も言い返せない。


「まぁ今回は夜遅くに頼んだ俺の責任もほんの少しはあると思うからなかったことにしてもいいがな」


ため息交じりにエドワードはノクトが持ってきた試料を確認する。


「どうやら持ってきたものは間違いなくドラゴンの爪を持ってきたみたいだな」


「そりゃ、あれだけ魔法薬の試料は似たものが多いから間違えるなと口酸っぱく言われ続けた甲斐がありますよ」


 エドワードの質問にノクトは皮肉を口走る。


「前にドラゴンの爪を竜人の爪と間違えて持ってきたり、タマムシリンドウの根をマンドラゴラの側根と間違えて持ってきて怒られ続ければ当然か」


 エドワードはノクトが今までした失敗を語りノクトの皮肉に対して足元を掬った。


 ノクトは苦虫を噛み潰した顔でエドワードを見る。


 そんなうちにエドワードはドラゴンの爪を透明なビーカーに入った無色透明な液体に入れガラスの攪拌棒でかき混ぜ洗浄し、ドラゴンの爪を取り刺した。先程革袋から取り出した鈍色の輝きが嘘のようにドラゴンの爪は銀白色に輝いていた。


 洗浄を終えたドラゴンの爪は丸底フラスコの中に入れられ、次々に入れられる計量済みの試薬を注がれる。


 丸底フラスコに入れられた試薬は最初青色透明の液体だったがエドワードが丸底フラスコを適度に振る度、徐々に赤黒くなり丸底フラスコに入っているドラゴンの爪が融けていく。

 

 ドラゴンの爪が完全に融けた試薬をエドワードは様々なガラス器具に通していき冷却・混合・濾過を繰り返していく。


 そして様々なガラス器具のつなぎ目の最終地点——精製物の小瓶には淡緑色透明の液体が溜まっていく。


 特級回復薬。


 世に出回っている回復薬の中で特に傷の回復、毒の解毒など万能且つ飛躍的な治癒効果のある回復薬で、市場に出ている回復薬の100倍値が張る超高級品である。


 そんな超高価な回復薬を購入する人達は一級冒険者や戦地へ出向く騎士達くらいしか使わないがエドワードが調合する魔法薬は一級冒険者や国の上級剣闘士、王国騎士御用達ですぐ完売してしまう一級品である。


「何でこんなに金の源になる薬を調合できるのに、いつも人数分しか調合しないんかね」


 すぐ完売してしまう理由——


 それは、魔法薬の出来や調合した人物がエドワードというだけでない。それは、注文した人数分しか調合、生成しないからだ。


 無論、高品質の魔法薬を提供するのは魔法薬を販売する上では鉄則と言って良い。しかし販売する品数が必要人数分だけでは商売としては黒字にならない。


 せめてもの救いは、販売している商品が原価が低く調合する調合士の腕が定価を決めその定価が原価の数百倍する特級魔法薬のみを調合・販売していることだ。


そのおかげで必要人数分だけでも十分生活をしていけるだけの財源を得ることができている。


「俺は金儲けがしたくて魔法薬を調合している訳じゃない。良い魔法薬を必要な人が買ってくればそれでいい」


 ノクトの質問にエドワードは自然とこのようなことを口にした。


「だったらもうちょっと魔法薬を作って私生活の古くなってひびまで入った小物を新調できるだけ稼いでくれたらアンリとシャルの小言を聞かなくて済むんだけどなぁ」


「うっ」


今までノクトが受けたエドワードの言葉のカウンターを今かとばかりにノクトはエドワードにカウンターを仕掛けた。


 ノクトにとってエドワードは養父であり同居人のアンリやシャルの養父でもある。しかしノクトと違い、エドワードはアンリとシャルを溺愛する節がある為二人には強く言い出せない。


そうしているうちに小瓶には特級回復薬が溜まり切る。


「薬もできたことだし昼飯にするか」


エドワードがそういうと時刻は十二時を過ぎていた。


「そうだな。早くしないとアンリやシャルが後で説教を言い出しかねないから急ごうぜジジイ」


 ノクトとエドワードは地下魔法薬学実験室を出た。


 魔王の子孫と勇者の紋章 ~愛する人達のため魔王を討つ~ をお読みくださりありがとうございます。

 tawashiと申す者です。

 今回初めて連載作品を掲載します。

 初めての連載作品を掲載するのでドキドキして手汗が止まらないと思ってましたがこの季節もあり手が乾燥して執筆しておりますw

 しかしドキドキするのは変わりありませんでした。

 稚拙ではありますが最後まで読んで頂いてありがとうございます。

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