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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第5章 店の準備

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第49話

 デパートの中には洋菓子を扱う店が数軒ある。だいたい神戸発祥のお店だが、それぞれに特色があるスイーツを出している。


 スポンジとホイップクリーム、イチゴを何層も重ね、その上にまたホイップクリームとイチゴをトッピングした定番のショートケーキ。

 チョコレートをふんだんに使い、スポンジやムース、ホイップクリームにもチョコレートを生かしたチョコケーキ。

 クッキー生地の土台にスポンジを乗せ、そこにシロップ漬けの栗、それを栗を使ったクリームで包み込んだモンブラン。

 タルト生地の上に季節の果物がたっぷりと乗った各種のフルーツタルト。


 ミミルは完全に心を奪われたようで、よだれでも垂れるのではないかと心配になるくらい、一つひとつのケーキを見つめている。


 これまで近所にあるデパートではこういう店があるところを通らなかったので、彼女にとっては初のケーキ屋さんだ。仕方がない。

 今夜は食後にケーキでも楽しんでもらうことにしよう。


「食べたいのがあれば、買うよ」

『ぜんぶ……』

「あーうん……そうだな、気持ちはわかる」


 まぁ、各種一つずつ買っても、ミミルには空間収納がある。

 この店の場合は店頭に並んでるのは12種類くらいだし、結構な金額になってしまうが、問題はない。正直、店のスイーツとして出すための研究として買えば経費で落とすこともできる。

 大量に買うということ自体、少し気恥ずかしい気もするが、手土産として12個くらい買う人もいるだろうし、おかしなことではないだろう。


 ただ、ミミルがひとりで食べる量としては多い。

 たぶん……恐らくだが、数日に分けて食べるものとして考えればいいだろう。そう思いたい。

 こちらで4時間でも、ダンジョン内では20時間が過ぎるのだから、向こうでのおやつ代わりにしてくれればそれでいいか。


『にもつ、もつ。ショーヘイ、かう』

「おまっ……」


 ミミルは荷物を持つから、お駄賃代わりに買ってくれという感覚なのだろう。

 だが、俺にしてみれば諭吉さん一枚近い金額になるので荷物持ちの駄賃としては全然割に合わない。


 ――金銭感覚


 まだこちらに来たばかりのミミルにそれを期待するのが間違いだと思った俺は、慌てて言葉を飲みこんだ。

 まぁ、仕方がない。


 結局、12種類のケーキを1個ずつ買う羽目になった。

 ホカ弁でのり弁当を買ったら20個は買えてしまうのだから、結構な出費だ。


 ケーキが入った箱は常に水平に近い状態を保って歩く……当然のことだと思う。じゃないと、グシャリと中身が崩れてしまうからな。

 だから、こういった繊細な商品を買うときはとても緊張する。混み合ったデパートの店内、食品売り場では周囲から迫ってくる人たちがすべて敵に見えてくるくらいだ。

 最近は無神経な人が多いから、明らかにケーキを持ち歩いているのに、平気でぶつかってくるのがまた難儀な話だ。

 これは早く、ミミルの空間収納に仕舞ってしまいたい。


 トイレ近くの「お荷物おまとめ台」なるテーブルにまでやってくると、ミミルと2人で荷物をまとめるフリをしながら空間収納へと仕舞っていく。

 収納には、置いてある場所から突然消すように入れることもできるし、手に持った状態から消すこともできるので、本当に移し替えるような仕草にできる。結構大きなケーキの箱が一瞬で消えてしまうのは不自然だと思うが、そこは誰にも気づかれることなく収納することができた。


 少し身軽になった俺たちは、デパートを出て西側にあるスーパーマーケットへと向かう。

 主な目的は生鮮食品――デパートで買うと高いからな……。


 デパートを出ると、すぐ隣といっていい場所にスーパーマーケットがある。新鮮な魚が手に入ると評判の店なので、アクアパッツァやグリルなどを作るなら旬を迎えた魚も買いたい。

 それに、俺は日本人なのでたまには白いご飯を食べたいと思ってしまう。多少は和食を食べれるように食材を買っておいてもいいだろう。


 買い物カゴを持って店内をうろついていると、ミミルもだんだんと店の雰囲気に慣れてきてあちこちに目を向けるようになる。特に、お惣菜が気になるようだ。お気に入りの鶏の唐揚げがあるのだから、しかたがない。惣菜売り場は基本的に揚げ物が多いので、どうしても食べすぎると太ってしまうのだが、見た感じ痩せすぎの感があるミミルには丁度いい料理かもしれない。


「欲しいものとか、食べたいものがあったら入れていいぞ」


 この一言でまたミミルは花が咲いたような笑顔をつくり、うんうんと声も出さずに頷いてみせる。

 そして、パッパと買い物カゴに鶏の唐揚げ、コロッケ、とんかつ、チキン南蛮などの主菜レベルの惣菜を入れてくる。


 まぁ、これもダンジョン内の食料だと思えば仕方がない。


 初日は食べないとか言っていたのに、いまは完全に日本の食べ物の虜。まだ食べたことがないであろうものまで、ポンポンとカゴの中にダイブしていく。

 そういえば、おにぎりやサンドウィッチ等も売っているんだから、これも入れておこう。


 レジに並んで精算を済ませ、サッカー台でレジ袋に詰める――ふりをしながら、半分以上を空間収納へと入れてもらい、店を出た。


次回投稿は 11月7日 を予定しています。


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