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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第5章 店の準備

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ミミル視点 第41話(下)

 しょーへいと朝食を摂りながら教わった言葉……それは、食べることに関わる動詞。


『タベル』

『タベル……タベル、タベル』


 しょーへいが朝食を口にし、飲み込んでからはっきりと声にだして発音した。

 食べ物を口に入れ、飲み込むまでの全体が『タベル』なのだろう。もちろん、あとから発音を真似して覚えていく。


『クウ』

『クウ?』


 今度は事前に何かを口にすることもなく、ただ続けて「くう」とだけ声に出した。

 これも後から追いかけて発音してみる。


『タベル、クウ、いみ、おなじ』

「同じ意味なのに、違う言い方をするというのか? それは難しいぞ……」

『タベル、つかう、いい。ミミル、かわいい、クウ、にあう、ない』


 こら、さり気なく人の容姿のことを褒めるな。照れるだろうが……ずるいぞ。


 軽く肩を殴る。


 これくらいの力加減だと効いていないのだろうな。


 少し頬が熱いのだが、しょーへいはこういうことを他の女にも言うのか?

 私だけなのだろうか……私が特別!?


 いや、ないな。

 私はしょーへいにとって異世界人だし、しょーへいから見れば子どものような姿かたちをしているからな。

 この「かわいい」というのも、小さくてかわいいという意味なのだ。最初の「ちいさくて」が前提なのが不本意ではあるが、まあいい――許してやろう。


 そして、今度は四角いパンに何度も齧りついている。


『カジル』

『カジ……ル……カジル、カジル』


 このようにして、続けていくつか言葉を教わった。


 こうして言葉を教えてくれることはありがたい。ありがたいのだが、とても気になるのだ。


 じとりとした視線でしょーへいを見つめる。


 どうして最初に教える動詞が食べることに関係するものなのだ?


 しょーへい、おまえ――私が食いしん坊だと思ってるんじゃないのか?


 くそう――残念だが、私の視線には気が付かなかったようだ。



    ◇◆◇



 先日、朝食を配達してきた男がいた箱――インターフォンと言うらしい――から音がすると、中に2人の男が入っていた。これは店の外の来客が見えるようになっているそうだ。


『らいきゃく、いっかい、いく。ミミル、どうする?』


 さて、こうなると私もこの家のなかでやることがない。

 掃除はソージキというデンキで動く機械がやってくれるし、食事したあとはしょーへいが皿を洗い、ゴミは捨ててくれるのできれいなものだ。


「うむ。ダンジョンに行ってくる。しなければならんことがあるからな」


 昨日、せっかく服の素材となるものが集まったのだ。ダンジョン内の戦闘に耐えうるしょーへいの服を作ってやろうではないか。第一層で入手可能なものなので、第5層より先になると新調する必要があるが、怪我されては困る。


 しょーへいは、私の返事に納得したようで来客に返事をすると、すぐに部屋を出て行った。

 さて、私もダンジョンへ向かうとしよう。



    ◇◆◇



 昨日、ダンジョン第1層で(わた)を集めてきたが、このままでは使えない。

 まず最初に棉を乾燥させるところから始まる。チキュウでは恐らく濡れない場所に安置して自然乾燥させるのであろうが、エルムヘイムでは魔法があるのでそれを使う。

 ダンジョンの入口部屋や出口部屋はこの作業をするのにちょうどいい場所だ。

 多数の者が出入りする場所では棉が舞うので(はばから)られるが、都市部では似たような構造の部屋を態々(わざわざ)作っていたりするくらいだ。


 工程は非常に簡単。


 火属性の赤い魔石を部屋の中央に置いて、魔力を流す。

 これで魔力に反応して魔石が熱を発する。元々魔石自体が持っている魔力量になるまでじわじわと熱を出してくれる。ここでのポイントは、決して火がでるほどまで魔力を入れないことだ。棉が燃えてしまっては意味がない。

 自然発火しない程度まで魔力を流したら、棉の実を部屋全体に広げて、あとは風の魔法で小さな旋風(つむじかぜ)を起こしてやればそれでいい。


 ――ヴィン


 風を起こす生活魔法だ。魔素を集めて濃度の高いところと低いところを作ると、自然に魔素の流れが生まれる。その魔素に空気が流されて風が生じるというとても単純な魔法だ。

 ダンジョンの入口部屋はほぼ密閉された部屋に近いので、一方向に魔素の流れを作ってしまえば旋風のように棉の実が舞い始める。

 水分が少しずつ抜けて乾燥してくると軽くなる。つまり、綿の実が高く舞い上がるようになれば乾燥が終わった証拠――出来上がりだ。


 昨日集めてきた棉の実を(およ)そ30分ほどかけて乾燥させた。


 魔素が多いダンジョン内では常に魔素を身体に取り込んでいる状態なので、生活魔法で消費する魔力であれば全く疲れることもない。


 乾燥させたあとの量を見ても、しょーへいの服を作って余るくらいの棉がありそうだ。不足しそうなら追加で採りにいかねばならないと思っていたが、余計な心配だった。


 さて、すぐに次の工程――種取りに進もう。


 ダンジョン産の棉の実といえど、ちゃんと種――のようなものはついている。

 エルムヘイムの土地は魔素があるので育つのだが、チキュウでは難しいだろう。恐らく、魔素になって霧散してしまうはずだ。

 だが、乾燥した棉の実から糸を作り、布地にしていくにはこの種が邪魔なのだ。


都合により、次回投稿は 10月20日 火曜日 とさせていただきます。


注1:

乾燥させて種を取るまでは「棉」と表記しています。乾燥させて種を取ったものは「綿」と表記する予定です。

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