表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第4章 素材収集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/594

第38話

 ほぼ一直線にダンジョン入口に向かい、ミミルは進んでいるようだ。


「なぁ、ミミル……どうやって入口に向かって戻ってるんだ?」

『かぜ、むき、わかる。いりぐち、かぜ、ふく』


 隣を歩くミミルはすぐに俺を見上げて答えてくれる。

 でも駄目だ。入口から吹くのか、入口に向かって吹くのかがわからない。


 でも、草原にいれば草の動きを見ればわかる。確かに、風に揺れる草原の葉はいま俺たちが向かっている方向に吹いている。


「なるほどなぁ……」


 とてもわかりやすい。


 ただ、これは草原だからであって、荒野だとどうだろう?

 西部劇なんかで見かける、枯れ草が舞うのを見れば判るのかも知れないな。砂漠なら風紋の方向ということになるのだろう。

 まぁ、いざというときは指を舐めて、乾く方から吹いてるってことで判るよな。


『もり、わかる、むずかしい』


 確かに、下草が刈られていない森だと、風を感じるにも下草が邪魔でわかりにくそうだ。それに、木が多く生えていると風もさえぎられるだろうな。


 あと、溶岩ゾーンとかあったら熱風が吹き込んできてたいへんだろうな。ないといいけど……。


『ダンジョン、こばむ。つね、ぎゃくふう』

「うまいこというなぁ」


 入口に向かっていつも風が吹いているなら、出口に向かう者にとっては常に向かい風。

 ダンジョンが拒んでいるように感じるのも仕方がない。


 進路上にいたスライムを倒して、ゼリーと魔石を拾って歩く。


 このフロアの太陽を見ると、もうすぐ地平線に接するだろう。

 地球と同じように空が茜色に染まり、俺たちの影が遠くに伸びている。


 入口に戻るまで、まだまだ時間がかかりそうだ。到着はこのままだと日が沈んだあとになるのは確実だな。


 俺はポケットからスマホを取り出す。

 時計の時間は午前四時三七分。もう八時間以上、ダンジョンに潜っていることになる。

 スマホの時計機能は内部に内蔵されている時計機能で動いているから、圏外の場所でも地球のことわりでそのまま進む。入口から出て電波が入るようになると自動的に日本標準時に合わせて表示が変わるはずだ。

 ダンジョンに入った時間が午後七時五〇分なので、圏外のときに示す時間と、圏内になって修正された時間の差を見れば、第一層の草原フロアの時間の流れがわかるだろう。


 ところで、日没後の明かりはどうするのだろう?

 音波探知があるので日が沈んでも、魔物の存在は確認できるから基本的には大きな問題はない。それに、赤外線を可視化すれば俺は夜中でも問題なく行動できるだろう。

 念の為、太陽と逆の方向に目を向ける。


 そこには地球上における月のようなものが浮かんでいた。


 恐らく、充分な月明かりが得られるだろう。衛星は一つとは限らないが、一つあることを確認できただけで充分だ。



    ◇◆◇



 やがて夜の帳が下りてくると、風は少しずつひんやりと冷たくなってくる。

 長袖のTシャツ一枚という服装では気温の変化に対応するのが難しそうだ。防刃素材でできた上着を買ってもいいかも知れない。


 途中にあった小川は既に越えているので、入口まであと一時間といったところだろうか。

 既に合計で六時間くらいは歩いていると思うのだが、そんなに疲れない。さっき時計を見たときの時間を考えると、既に眠くなっていてもおかしくないのだが、そうでもないんだ。


「これだけ歩いても疲れないもんなんだな」


 不思議に思って、つい呟いてしまった。

 ダンジョンに入っていることで高揚感みたいなものがあるからだろうか?


『まそ、こい。つかれ、すくない』


 ダンジョンの中は魔素が濃いから疲れにくいと……なるほど。

 理屈はよくわからないが、そういうことなんだろう。

 だが、地球上とダンジョンをあわせて二〇時間くらい起きたままなのにそんなに眠くならないのは、ダンジョン内にいることによる高揚感や緊張感なんかもあるのかも知れないな。


『しょーへい、チン、また、せつめい』

「あぁーそうだな。難しいからな……」


 休憩した時に電磁波をつかった攻撃のことを説明したが、そもそも原子、電子、陽子という物質を細分化した知識というものがミミルにはなかったので、そこから説明したんだが――ミミルは頭から煙がでるんじゃないかと思うほど難しそうな顔をして結局理解できなかったんだよな。

 もう少し説明しやすい何かがあればいいんだが……。


「物質を構成する単位に、分子というのがある。水分子に電磁波というものを当てると……」

『むずかしい。ぶんし、なに?』

「やっぱり、帰ってからにしよう。それに、俺も少し調べ直したい」


 ミミルがいた世界は地球から見ると文明的に遅れているから、原子や分子の説明は必須になるだろう。

 どうすれば効率よく、電磁波での攻撃ができるか調べるうえでも、ミミルに説明することは役に立つはずだ。


『ん、わかった。わすれる、ない、いい?』

「うん、だいじょうぶだ」


 電磁波が到達する速度は光と同じだから、ミミルの魔力打ち出しより速いはずだ。

 ミミルの負担を減らすためにも改善点を見つけよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓他の作品↓

朝めし屋―異世界支店―

 

 

異世界イタコ

(カクヨム)

 

 

投稿情報などはtwitter_iconをご覧いただけると幸いです

ご感想はマシュマロで受け付けています
よろしくお願いします。

小説家になろうSNSシェアツール


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ