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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第4章 素材収集

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第33話

 ダンジョンに入ってから三時間ほどが経過しただろうか。

 あのあと、ソウゲンアリの集団には三回ほど遭遇し、甲殻を合計四つ手に入れた。


 防具の素材にするのなら地球のポリカーボネイト製の膝当てや肘当てなんかも有効なのではないかと思うのだが、このソウゲンアリの素材はそれ以上に丈夫なのだろうか?

 まぁ、変に地球上の素材で作って全然使い物にならなければ、それが原因で命を落とすのは自分。自己責任といえばそうなのだが、隣にこんなにも頼りになる……ミミルがいるのだ。ダンジョンのことはこの大先輩に任せるのがいいだろう。

 それにしても、服などは生地が必要になると思うのだが、ミミルのいた世界ではどんな素材を使っていたのだろう。


「ミミル、服の素材とかもダンジョンで手に入れるのか?」

『ん……くさ、むし、いろいろ』


 草や虫から……綿や亜麻、真麻みたいな植物性のものと、絹のような動物が出す糸を使って作るのか。たぶん、糸もそこから取るんだろうな。羊もどこかにいるのかも知れない。


『くさ、とる。むかう』

「ん? ああ、わかった」


 恐ろしく広いこの草原フロアは、少し離れただけで入口が草に隠れて見えなくなってしまう。

 魔物と戦いながらとはいえ、一時間以上は移動しているのだから、既に数キロは入口から離れたはずだ。もう俺にはどこに入口があるかなど判るわけもない。

 こうなったらミミルに頼るしかないのだ。


 探知は一二歩……約一〇メートル毎に一回、行っている。俺の探知できる範囲がいまのところ半径五〇メートル程度が限界なので仕方がない。これが一〇〇メートルまで伸びれば、もう少し回数を減らせると思うんだが……。

 まぁ、MPなんてものがハッキリわからないので、体内の魔力がどの程度残っているのかはわからない。疲れたり、めまいがするようなこともないので大丈夫だろう。


 最後にソウゲンアリを倒したところから数えて五回目の探知で、ぼんやりと犬のような形をした魔物がひっかかった。

 距離にして、約四五メートルといったところだろうか。幸いにもこちらは風下なのでまだ見つかっていない。


 ――ん? 風下?


 風が吹いているということは、このフロアの中に気圧の高低があるということだろうか?

 それとも、どこかから吹き出している場所でもあるのか?


 ミミルに聞いてみよう。まずは報告だな。


「こちらに約四〇メートル先、犬みたいな魔物が一頭」

『ソウゲンオオカミ、はぐれ、たぶん』


 はぐれ……金属系のスライムにそんな名前がついたのがいたと思うが、それはゲームの世界だな。

 では、どういう意味だろう。群れからはぐれたってことなのだろうか。


『オオカミ、せいちょう、あいて、さがす。むれ、でる。はぐれ』


 群れを形成している魔物だが、ある程度成長したオオカミは繁殖相手を探して群れを離れる……独り立ちするってことか。

 魔素でできているのに、生態までそっくりに作られているんだな。驚きだ。


「なるほどねぇ……」


 少しジジ臭い返事をしてしまった。

 ミミルの頬が少し緩む。たぶん、どちらが年上なのかわからないとでも思っているんだろうな。地球では充分におじさんの域に足を突っ込んでるから別にかまわないが……。


 残り二〇メートルといったところで、はぐれソウゲンオオカミもこちらに気がついたようだ。

 地球のオオカミと同様、威嚇するように歯をむき出して低い唸り声を上げている。


 残念だがここからだと俺の電磁波攻撃は届かない。

 ミミルもまだ射程範囲外なのか、指先を向けているが発射に至っていないようだ。


 また一歩踏み出すと、ソウゲンオオカミの方が仕掛けてきた。

 縄張り意識が強いのか、それとも腹を空かせているのかはわからないが、とにかく好戦的な魔物ばかりだ。


 動きはツノウサギと変わらない。直線的にこちらに向かってくる。


 ――だが、速いっ!


 ツノウサギの倍以上の速度だ。


 もちろん、ミミルの指先から衝撃波が発生し、打ち出された魔力の塊がソウゲンオオカミの眉間を撃ち抜く。

 その痛みに悲鳴にも似た鳴き声をあげ、ソウゲンオオカミは四肢を突っ張り、動きを止めた。

 いまがチャンスだ。


 続けて俺がソウゲンオオカミの頭部に向けて右手を掲げ、収束された高出力の電磁波を浴びせる。

 オオカミの大きさは一メートルを優に超える大きさだし、体高も一メートル近い。

 頭部そのものは俺の頭より大きいだろう。だが、脳はそれなりだ。


 突然襲う頭の激痛に苦しみの籠もった断末魔の叫びをあげ、ソウゲンオオカミはどさりと倒れた。

 ツノウサギと同様、脳死状態なのでまだ呼吸しており、胸のあたりは上下している。心臓も停止していないだろう。

 ミミルに借りているナイフを腰から引き抜くと、また首筋を掻き切って止めを刺した。


 穴の開いた気道から漏れる掠れた音が少しずつ小さくなると、その身体が霧散する。

 そこには、親指の先ほどの大きさの魔石が落ちていた。ツノウサギのものより一回り大きな琥珀色の魔石だ。

 そして、毛がついた大きな皮がその場に残っていた――。



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