表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第54章 レセプションそして開店へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

594/594

第540話

 目が覚めた。時計を見ると、朝の6時前だ。

 庭にダンジョンができる前の俺ならこんなに早くから目を覚ますなどできなかっただろう。でもダンジョンに最適化された身体のおかげで、短い睡眠でも疲れが取れるようになった。


 まだ寝ているミミルを置いて、俺はパン生地、ピッツァ生地、パスタ生地などの仕込みを始め、2時間ほどですべてを終わらせた。

 途中、ミミルを起こしに行って、ベランダのハーブに水を撒くくらいの余裕があった。


 8時を過ぎる頃、俺とミミルは商店街を抜けて神社にお参りに行った。ご先祖様に対してお願いをするということは避けてきたが、店の営業開始ということもあって、珍しく今日を無事過ごせるようにとお願いをした。


「きょう、なに、お願い?」

「ないしょだ。ミミルが教えてくれるなら教えてもいいぞ?」

「おしえる、かなうない」

「うん、だから俺も教えない」


 ぷうと頬を膨らませるミミルだが、いつもは俺が神様にはお礼しか伝えないことを知っているはずだ。今日から店の営業が始まることを知っているからこそ、こんなことを聞いてきたのに違いない。


 昨夜はミミルがダンジョンに入っていないので、空間魔法Ⅴの座標指定をやり直す必要がない。

 朝食をファストフード店で済ませた後、ミミルは店に戻ると階段を上って自室へ戻った。


 仕事用の服に着替えた俺は、サロンを巻いて1階に下りたら料理の仕込みを続ける。


「おはようございます」

「おはよう」


 ロゼッタ用の生地をリバースシーターを使って伸ばしているところに裏田君が出勤してきた。いつものように食材の納品が始まり、店の中が少し慌ただしくなる。


「おはようございます」


 田中君が出勤してきた。少し顔が赤いのだが、具合は大丈夫だろうかと心配になる。


「顔が赤いけど、大丈夫か?」

「だ、大丈夫です」

「熱でもあるんじゃないのか?」

「いえ、大丈夫です」

「しんどくなったら言ってくれよ。健康第一だからな」

「はい、ありがとうございます」


 田中君は何やら恐縮したようで、肩をすぼめて小さく呟いた。

 開店初日からメンバーが欠けるというのは避けたいので、本当に何もないと信じて仕事を任せる。


「パン生地は一次発酵が終ってるはずだから、先は任せる。いいかな?」

「はい、オーナーは何を?」

「ボカティージョやパニーニの具を作っておく。注文が入ったら切って挟むだけで済むだろう?」

「ありがとうございます」


 田中君が生地を成形して二次発酵へと進む中、11時少し前になって吉田、中村の2人も出勤してきた。とりあえず、当日になって出勤してこないという事態が無くて安心した。


「みんな、集まってくれるか」


 手を止めてもらい、厨房に全員を集める。

 裏田君、田中君、中村さんはとても緊張した様子で、吉田さんは人生経験からか、ただ顔に出ていないだけかわからないが、いつもどおりだ。


「間もなく、オープンですね。接客の基本挨拶を忘れずに、練習してきた成果を、準備した成果を発揮してください。何かあったらすぐに俺に報告すること。いいね?」


 4人が揃って「はい!」と返事をした。


「じゃあ、よろしく!」


 裏田君、田中君は調理に戻り、吉田さん、中村さんの2人は客席へと戻っていった。


 営業開始5分前になり、俺は隠し階段下にある倉庫から袋と木の棒を取り出した。ずっしりと重い感じがする袋の中身は生成りの帆布でできた暖簾だ。暖簾棒を通して広げると、右下にシンプルに羅甸と文字が染め抜かれている。


「吉田さん、ちょっと」


 汚れなどがないことを確認し、吉田さんを呼んだ。


「どないしたんです?」

「ちょっとこれを持ってみてくれるかな」


 店の扉が何故か幅広で、半間(はんけん)以上の120センチもあり、長さが140センチある。

 木の端を持って手渡すと、吉田さんはその重さに暖簾を地面に落としそうになった。


「こ、これ、重いです」


 旗を持って行進するときのように暖簾を持って吉田さんが俺に返そうとする。どうやら、吉田さんや中村さんに暖簾を掛けるのを頼むのは無理そうだ。

 実質2キロしかないが、幅が広いせいで梃子の原理が働く。余計に重く感じるのだろう。


「わかった。じゃあ、俺が暖簾を出すことにするよ。ありがとう」

「いえいえ」


 さすがに開店初日から暖簾を落とされたりすると縁起が悪い。

 俺は自ら暖簾を運び、店の扉を開けた。


「まいど」


 開店前から駆けつけてくれたのか、藤田と佐々木がいた。


「おおっ、びっくりしたよ。来てくれてありがとう」

「いや、サクラが必要やと思て」

「開店前から並んでたら、皆の興味引くよってな」


 たぶん照れ隠しだろう。2人はニヤニヤと笑っていた。

 その2人を眺めつつ、俺は真新しい暖簾を暖簾掛けの穴に暖簾棒を通して掛けた。


 2人が拍手をし、「開店、おめでとう」と言ってくれた。

 わざわざこのためだけに来てくれたのか、そう思うと少し目頭が熱くなった。


 俺は2人を店の中に案内し、「いらっしゃいませ」と声を上げた。

 店内からも明るい声で「いらっしゃいませ」の声が響いた。


これにて<第1部 出会い・攻略編>の終了とします。


本編540話、全体で約600話のお話となりました。

お付き合い、ありがとうございました。


元々はもっと簡単に考えていたのですが、最初は言葉が通じないことを前提にしていたことや、ダンジョン内の時間の流れが違う設定にしていたことが原因で長くなってしまいましたね。


途中、フレイヤたちの話がでてきていますが、国王との謁見シーンがあり、そこでフレイやスキルニルが出てきてしまってはネタバレになるので公開を中止していました。その結果、第2部の大雑把なプロットや既に書き上げているところにも変更が必要になっており、第2部の開始は少しお時間を頂きたいと思っています。再開時期はこの場でコミットできませんが、1年くらいはかかるかも知れません。ご容赦ください。



また、ミミル視点の追加や再構成をしていく予定です。例えばSSを時系列に並べなおしたり、ミミル視点の第1話から第4話くらいの話をプロローグにして、第5話から第10話などをまとめてしまったり。

書き始めの頃と文体が変わってきているのも理解していますし、数字表記も変っているので漢数字に統一していきます。

全体で約125万字もあるのですが、地道な作業になりそうです。


完結フラグを立てると沢山の方が読みに来てくださる可能性もあって、すぐにこれらの作業をすると、同じSSが2か所に掲載されているように見えたりするかもしれません。そこも考慮して作業する時期は3か月以上経ってからになると思います。

また、申し訳ありませんが感想欄は閉じさせていただいております。

活動報告に感想受付をご用意しましたので、そちらに書いていただけると嬉しいです。


他の作品も書いているので、順次掲載していきます。

まずはカクヨムで公開ですが、よかったらそちらも読んでみていただけると幸いです。

あ、展開は早い作品なので、ご安心を(笑)


最後に、下にある「応援ポイント」の入力がまだの読者様がいらっしゃいましたら、入力をお願いします。

評価が高ければ第二部の開始が早まるかも知れません。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓他の作品↓

朝めし屋―異世界支店―

 

 

異世界イタコ

(カクヨム)

 

 

投稿情報などはtwitter_iconをご覧いただけると幸いです

ご感想はマシュマロで受け付けています
よろしくお願いします。

小説家になろうSNSシェアツール


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ