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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第53章 メニュー完成

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第528話

 メニューの方はとりあえず3か月間だけ使う第1次メニューだから、と俺が作ろうとしたのは大きな間違いだったということは俺も強く認識した。


 21時を過ぎた頃に出来上がったので、そのまま賄いを用意して皆で揃って食べた。

 料理はツナ缶と白菜、キノコのペペロンチーノ。ナンプラーを使ってエスニックに仕上げた裏田君の得意料理だ。そこに、田中君が焼いたパンがついている。

 それを皆で席に座って食べながら俺は本宮君が作ったメニューをみせた。


「へえ、すごいやないですか」

「ほんま、ええ感じのメニューになったはるわ」

「いえいえ、下手の横好きというか」


 メニューを見た裏田君が大きな声で褒める。言われた本宮君ははにかむような笑みを浮かべつつ、謙遜してみせた。


「いや、これと比べたら元が同じとは思えないよ、あ、コラッ」


 俺が自分でつくった最初の2枚をチラリとみせると、それをミミルが奪って裏田君に差し出した。


〈ミミル!〉

〈比べるものがある方が、良さも際立つだろう〉

〈そ、それはそうだけど、俺が恥ずかしいんだよ〉

〈しょーへいに品書きをつくる能力がないのはよくわかった〉


 俺はミミルに抗議をするのだが、更に返ってきた言葉が尤もすぎて口を噤むことしかできなかった。

 一方、ミミルから俺が作ったメニューを受け取った裏田君は、とても困った顔をしている。どこのホテルのメニューか聞きたくないような堅い感じのメニューだからだろう。


「これは、あれですわ。レセプション用ですよね?」

「いや、そんなつもりはなくてだな……」


 確かにレセプションで出すためのメニューも用意しないといけない。

 招待客を相手にした、形式ばったお披露目パーティのようなものだからメニューは堅い感じがする方がいいのは確かだ。でも、裏田君が見ているのは俺が通常営業で使うことを想定して作ったものだ。


「うちも見てもええかなあ?」


 裏田君がフォローしようとしてくれているが、田中君が俺の作ったメニューを横から覗き込んだ。


「えらい堅いかたい感じですねえ。でもこれが元になったってことはよおわかります」


 ガチガチの明朝体文字からサインペンで書いたような自然な文字に変わり、配置も変っているものの、並び順や書いてある説明などは全く同じだからだろう。日本語名で大きく、その下にイタリア語、スペイン語の料理名が小さく書かれているのも本宮君の工夫によるものだ。

 そして単純に白地に黒の文字だけではなく、赤文字でオススメと書き込んだりしているし、写真入りの方は文字の中抜きなどもされているのでとてもわかりやすい。


「まあ、わかってはいたけど俺のは褒めてもらえないなあ」

「いえ、ほんまにレセプション用のお品書きやったら丁度ええと思いますよ。表彰状やないですけど、目立たんていどに装飾とか入れたらええ感じになるんちゃいます?」

「そうかな……」

「うちもそう思います」


 裏田君、田中君が後押しする。俺も、それだけ言われるとレセプション用なら明朝体ベースのもので良い気がしてきた。


「じゃあ、この後にでも作ってみるよ」

「大丈夫ですか?」


 本宮君が少し心配そうにたずねる。

 レセプションは立食形式のパーティなので、その日に提供するメニューが書いてあればいい。ただ、結婚披露宴の料理メニューと同じで、持ち帰る人も多い。大きさも2つ折りでポケットに入るくらいでちょうどいい。


「大丈夫だ。俺はどうやらお堅いメニューが似合うようだから、丁度いいだろう」

「そう、ですか」


 本宮君がちょっと残念そうな顔をしているが、本来の業務外のことをお願いしているわけだから、こちらとしても全部を任せるわけにいかない。

 但し、今後も定期的にメニューの見直しはしていく予定だし、その時は彼女の力を借りるとしよう。


 賄いを食べ終え、片付けを終えると明日のレセプションに向け、裏田君、田中君と共にやり残したことのチェックをして今日の業務終了時間を迎えた。


「みんな、ちょっといいかな?」


 俺は着替えを終えて1階に集まった4人に声を掛けた。いよいよ、明日の夜はレセプション、明後日は開店を迎える。

 各々に返事をして俺の前に集まると、皆の表情にも薄らと緊張の色が見えた。


「いよいよ明日がレセプション、明後日は開店を迎えます。くれぐれも体調には気をつけてください。明日もよろしくお願いします」


「はい、任せてください」

「はい、気いつけます」

「「はい」」


 裏田君は慣れた感じで返事をし、田中君は一層気を引き締めたような緊張感をもって返事をした。


「じゃあ、お疲れさま!」

「はい、おつかれさんです」

「「「おつかれさまでした」」」


 皆が頭を下げて店を出て行った。

 俺は皆に手を振り、全員が出たのを確認してから鍵をかけた。


「今日はダンジョンに入るのか?」

「ん、もじ、おぼえる」


 たぶん、ダンジョンで最も時間の流れが速い第19層に行くのだろう。

 そうなると俺はどうしようかな……。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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