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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第52章 ダンジョン攻略

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第519話

 どうにも話がわからないようなので、ミミルを風呂に入らせた。

 たぶん、ミミルに理解してもらえないのは、地球の兵器を彼女が知らないことにあると思う。

 拳銃、ライフル、戦車、戦闘機……もちろん図鑑には掲載されているのだが、具体的な殺傷能力なんてものは掲載されていない。また、実際にその威力などを俺はミミルにみせていないから、知る由もないわけだ。

 戦争そのものの動画をみせたりするのは、あまり気持ちのよいものではないが、風呂上がりにでも見てもらうつもりで再生する動画の準備を済ませた。


 ミミルは1時間ほど風呂に入るので、残った時間はベランダ菜園の手入れをすることにした。

 俺は先に自分の着替えを空間収納に仕舞うと、まずベランダ菜園に行って、ハーブ類に水をやり始める。

 バジルの摘心は済ませているが、どんどん横に広がっていく。虫がついていないか確認しながら、とりあえず育った枝を収穫した。

 イタリアンパセリは葉が乾燥してしまうと風味が落ちる。だから、まずは水をやってしっかり土を湿らせる。大飯喰らいと表現していいかはわからないが、とりあえず肥料を食うハーブなので、追加で肥料を与えておいた。これであと2、3週間は大丈夫だ。

 ディルも草丈が20センチを超えたので摘心と選定をした。葉と葉が重ならないように密集した部分を切り落とし、風通しをよくしてやる。

 ローズマリーは今が伸び盛りの時期。高温多湿が苦手な植物なので梅雨入りする前に剪定をしながらを少し収穫しておいた。タイムも同様で、高温多湿を嫌う。かなり密生しやすいハーブなので、風通しを良くするためにも時期を見てごっそりと刈り取らないといけない。


「ハーブ類の面倒も俺ひとりでは厳しいかな」


 他にオレガノ、セージ、ミント、キャラウェイと2階の菜園で栽培しているハーブが多い。梅雨入り前は忙しくなりそうだ。

 とりあえず、ベランダにあるシンクで収穫した葉をざっと洗い、厨房の冷蔵庫に入れておく。

 冷蔵庫も本当にいろんなものが増えていた。


「裏田君や田中君にもハーブは随時収穫してもらう方がいいかな」


 と考えながら冷蔵庫の中身を確認していく。


「――おふろ、でた」

「おう、じゃあ今度は俺の番だな」


 頬を赤く染めてミミルが風呂から上がってきた。今日の普段着は生成りのワンピース。ちょうど冷蔵庫の中を見ていた俺は、中からオレンジジュースを取り出して数回振ってからミミルに渡した。

 ミミルは「ありがと」と言って受け取り、小さくて細い指を使ってプルトップを開いた。

 プルトップの使い方はミミルが缶ビールを飲みたいといったときに教えていた。あの時はなかなかプルトップを上手く引けず、俺が蓋を開けたんだっけ。

 初めて自らプルトップを開けたミミルは、どこか嬉しそうで、頬のあたりが緩んでいるように見えた。

 幼稚園児くらいなら「自分でやるっ!」と言い出してできないまま、結局泣き出したりするものだが、10歳を超えた小学生の女子なら当然のように開けることができるだろう。その当然をしたことがなかったのだから、少し嬉しくなるのもわかるような気がした。


「じゃあ、俺も風呂入ってくるわ」

「――ん、にかい、いる」


 ミミルはサンダルを履いて隠し階段の上にある自室の方へ向かった。


 ダンジョン探索用の服と装備を外し、空間収納に仕舞う。洗濯物を籠から洗濯機に放り込んで、ジェルボールタイプの洗剤を一つ。あとはボタン一つで乾燥までやってくれる。

 素っ裸になって洗濯機を回すこの姿をミミルに見られるのを一瞬想像した。なんだか情けないような、恥ずかしいような気分になってくる。


 今後は風呂上がりにしよう……と、反省しつつ風呂に入った。


 20分ほどで風呂を上がり、2階へと上がるとミミルがドライヤーで髪を乾かしていた。


「ミミル、これを見てくれるか?」

「――ん、なにみる?」


 俺は大型モニターの電源を入れた。連動してストレージデバイスが動き出した。


「地球の兵器だ。日本では手に入れられないが、軍が持っている」

「ずかん、みた。てっぽう、らいふる」

「そう、実際に使うところを見たことがないだろう?」

「ん、まだみるない」


 外国の軍服を着た男が、手にした銃の説明をし、人型の的に向けて銃を構えて撃つだけの動画だ。


 男が銃を引き金をひくとパーンという乾いた音がして、前方の的に穴が開いた。男は続けて連続して引き金を引いて、連続して弾を撃った。


「今のが拳銃だけど、どう思った?」

「おと、うるさい。たま、とおくとぶ」

「4、5人で撃たれると避けられると思うか?」

「むり、おもう」

「ミミルを迎えに来たフレイヤたちがどこに現れるかわからないが、日本以外の国だと抵抗したら間違いなく撃たれる。そういうことだ」


 動画を見て、話を聞いたミミルは俺の顔をじっと見つめて言った。


〈ど、どうすればいい?〉

〈もし、フレイヤが地球に現れたら念話で話すことはできるのかい?〉

〈エルムヘイムならできるが、チキュウを含め、他の世界でもできるかと言われるとわからない……〉


 これは、念話が繋がることを祈るしかなさそうだ。


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また、誤字報告も非常に助かっております。

ありがとうございます。


次回の投稿は9月4日(日)12:00を予定しています。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 缶ビールのプルトップの開け方は第一部 出会い・攻略編 第5章 店の準備 ミミル視点 第44話(下) で教えてる気がします。
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