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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第52章 ダンジョン攻略

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第517話

 地上に戻った俺はスマホの電源を入れた。

 出入口部屋ができてから2週間近く、少しずつ文字らしきものがここにもできてきている。

 階段を上がったところで、ミミルがブーツを脱いでいた。俺も早く脱いでしまいたいが、2人のブーツは編み上げだ。脱ぐのも、履くのも面倒くさい。

 手持ち無沙汰になった俺は、スマホを取り出した。電波の基地局から得られる時刻情報で表示される時間が変っていた。


「え、もう4時前じゃないか!」

「……ん?」


 確か、ダンジョン第3層の守護者と戦い、そのまま地上に戻ればまだ12時台くらいだと思っていた。そのあと、ダンジョン第21層へと行く羽目になったのだが……。


〈ミミル、第21層の時間の流れは?〉

〈少し待て、チキュウはエルムヘイムの倍の速度だから、第21層だと2分の1だ〉

〈と、つまり……第21層の30デレットはチキュウの1センダってことか?〉

〈そのとおりだ〉


 第21層の入口を出て、守護者のヴァルキリーがいるところまで約20分くらいかかっただろうか。そして守護者との戦いが1時間くらい、その後のドロップ品回収とミミルと話をしていた時間を考えると……地球側は4時間くらい経過していたってことになる。


「そうかあ……」


 今から準備しても動物園には行けないし、ダンジョンで過ごすための野菜類を買いに行く余裕も殆どない。


〈何を落ち込んでいる。ダンジョンは攻略したことになっているのだから、これからは毎日のようにダンジョンに入る必要もない。チキュウの様々な動物を飼育している場所に行くのも別の日で構わないし、草の類を買いに行くのも急ぐ必要はないのだぞ?〉

〈ん、なるほど……それもそうか。いや、でも他の階層も見てみたい〉

〈だから、急がなくていいと言っているだろうが〉

〈まあ、そうだな……〉


 話をしている間にミミルが靴を脱ぎ終えた。


「あ……」


 自分の靴を脱ぎだして思い出した。警備システムが動いているから、2階から家に入らないといけない。


「なに?」

「ほら、ダンジョンに入るときにこの梯子で下りてきただろう? だから、家に入るのも梯子ってことだ」

「くつ、ぬぐは失敗……」

「そうだな」


 ダンジョン内で2泊もしたし、とても濃い時間を過ごしたと思う。突然のことだけど、第21層の守護者を倒すことになってしまったくらいだから、いろんなことが頭からすっ飛んでる感じだ。


「ミミルは、とりあえず梯子で2階へ行ってくれ。俺は風呂の用意をしてから戻る」

「ん、わかった」


 ミミルは靴を空間収納に仕舞い、梯子を上っていった。イチゴ模様の下着が丸見えだが、日本の小学5年生、6年生くらいになるとそういうことを気にするはずだ。ミミルも少し気をつけてもらうようにしなきゃいけない。

 俺が言うよりも、田中君や岡田君、本宮君にお願いすべきなのかな……などと考えながら俺は靴を脱いだ。


 風呂の湯張りボタンを押して、俺はミミルと同じように梯子を上り、2階の自宅に戻った。自宅にはミミルがいなかった。ベランダや部屋の中にはいなかったし、警備を解除していないので部屋の外にいるはずがない……などと俺が考えていると、ミミルがトイレから出てきた。ミミルはソファに腰かけていた俺の横に歩いてくると、当たり前のようにすぐ隣に腰かけた。


「風呂を入れてきたけど、食事はどうしようか?」

〈風呂のあとでいい。それよりも話しておくことがある。そんな長い話ではないので、まずは聞いて欲しい〉


 深刻な顔をしてミミルが言った。

 先に小用を済ませ、確実に自分の言いたいことを伝えられるエルムヘイム共通言語を用いるくらい、大事なことなんだろう。


〈どうしたんだ?〉

〈私がエルムヘイムに戻る方法についてだ〉

〈え? 帰る方法があるのか?〉

〈帰る方法は2つある。ひとつは、エルムヘイムから迎えが来るのを待つ方法だ。元々、何かあって私が帰れないという事態に陥っても、探しに来ないという約束だったのだが……フレイヤのことだから探しにくるだろう。いつになるかわからんがな〉


 ミミルは人さし指を立て、自嘲気味に笑みを作ってみせた。

 まず、エルムヘイムに残されたミミルの妹たちはどの宇宙にある、どの星の、どこのあたりにミミルが出口を繋いだかを知らない。

 そして、ミミルから聞いた話を総合すると、ダンジョンに繋がっていたと思われる宇宙、星の数はエルムヘイムに住む各種族の数よりも多いのは間違いがない。

 候補になるすべての星にダンジョンを繋ぎ、小さなミミルを探さないといけない。

 そう考えると、本当に大変な作業になる。時間がかかるのは間違いない。


 続いて、ミミルは中指を立てた。2つめの方法に入るのだろう。


〈もうひとつの方法は、ダンジョンの種を使う方法だ〉

〈ダンジョンの種?〉

〈そうだ。それを土に埋めれば、新たなダンジョンが数日で生まれる。そこを攻略して、出口をエルムヘイムに繋いでしまえばいい〉

〈そ、そんな方法がっ!〉


 俺は思わず大きな声を出して驚いた。

 慌てて自身で口元を塞いだが、後の祭りだった。


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また、誤字報告も非常に助かっております。

ありがとうございます。


次回の投稿は9月2日(金)12:00を予定しています。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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