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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第52章 ダンジョン攻略

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第515話

〈土魔法と短剣術、魔力強化、魔力操作がそれぞれ上がったくらいだな〉

〈むぅ……〉


 反対側からミミルがカードを覗き込んでいた。

 第3層でシバングを倒したのはほとんどがストーンバレットだったから、土魔法の練度が上がったのだろう。

 短剣術と魔力強化、魔力操作はさっきのヴァルキリーとの戦いのおかげだ。確かに、ミミルが言うように《《ひと皮むけた》》ような気がする。


〈確かにその4つだけのようだな。まあ、仕方あるまい……そんなことよりもだ〉


 ミミルが俺の正面に移動し、俺を見上げた。


〈しょーへいは、ダンジョンの守護者を倒した。おめでとう〉

〈お、あ……そうか、ありがとう。でもなんだ、第4層から第20層はすっ飛ばしてしまったから、悪いことをしている気分だよ〉


 ミミルが偶然、鍵を持っていなければここに来ることがなかった。おそらくいま頃は俺の愛車で動物園に向かっていたことだろう。


〈そういえば、第4層を少し覗いたら地上に戻るつもりだったんだが……いまから戻っても間に合うかな?〉

〈どうした、何か急ぐのか?〉

〈ミミルを動物園に連れて行こうと思っていたんだ。ほら、『カバ』とか『ライオン』とかを飼育しているところだ〉

〈なんだ、そんな気遣いをしてくれていたのか……だが、もうダンジョンを攻略したのだから、急ぐことはない〉

〈ミミルはそれでいいのか?〉

〈そうだな、それを答える前にしょーへいには大事な話をせねばなるまい〉

〈なんだ、どうした?〉

〈いや、なんでもない。先に、することがある〉


 俺にいままで隠していたことがあるということなんだろう。ダンジョンを踏破したことでミミルも話すことができる、そんなことがあるのかも知れない。


 ミミルと話をしているうちに、ヴァルキリーは魔素へと還っていった。

 そこにはヴァルキリーが使っていたハルバードが残された。


〈これは、すごい武器なのか?〉

〈いや、エルムヘイムではありふれた武器だ。まあ、あまり使いこなせるものはいないがな〉

〈そりゃそうだろうなあ……〉


 まず、重い。身体強化して初めて持ち上げられるほどの重さだ。どうやら、柄の部分を含めほぼ全体が鉄でできているようだった。それに斧の部分だけでも20キロくらいあるのではなかろうか。

 次に、長い。エルムの身長では間違いなく使いこなせないだろう。


〈私は必要ないから、とりあえずしょーへいが持っておくといい〉


 ミミルに言われ、俺はハルバードを空間収納に仕舞った。

 もう一度、振り返って周囲を確認すると、いままでよりはひと回り大きな金色のメダルが落ちていた。メダルを拾って確認すると、片面にはヴァルキリーの顔、もう片面には空を飛ぶヴァルキリーの姿が彫り込まれていた。

 これまでも守護者を倒すとメダルが手に入ったが、その意匠は守護者に関連する神話に基づいたものだった。石畳の先に続くヴァルハラ宮殿と、戦った守護者のことを考えると、拾う前からメダルの意匠が何かくらいは想像ができたのだが、メダルの中のヴァルキリーはどこか表情が柔らかいような気がした。人型だからだろうか……。


〈では、ダンジョン管理者の部屋に行く。ついてこい〉

〈あ、ああ。わかった〉


 ミミルは俺の前を歩き、ヴァルハラ宮殿の方角へと進んだ。

 石畳の道を進み、ヴァルハラ宮殿の入口に到着すると、そこに転移石があった。第一層から第三層までの間にあった転移石はメダルを嵌めると光るようになっていたが、ここの転移石は既にうっすらと光を放っていた。よく見ると文字のようなものが浮かんでいる。


〈中に入れるのか?〉

〈いや、管理者の部屋に入ることができる。この城の中に入る方法は未だに見つかっていない〉

〈そうか、残念だな。中に入れば他にもいろいろとあるのだろうに〉

〈いろいろとは?〉

〈ここはアズガルズを模した場所なんだろう? だったら泉があったり、別の建物や宝物があったりするんじゃないのか?〉

〈あくまでも模したところだ。ここから後ろを見てみればわかる〉


 一瞬、ミミルが何を言いたいのかわからなかったが、言われるまま振り返って第21層の景色を見た。緩やかな登り坂になっていたが、どうやらヴァルハラ宮殿は周囲で最も高い場所にあるらしい。

 だが、残念ながら一帯を見渡しても石畳の道と、円形の広場がふたつ。それ以外はすべて木に覆われていた。


〈アズガルズは虹の橋を渡った先にあった場所と言われている。渡った先には聖なる泉があり、グロウズスヘイムやヴァンゴールヴがあったというが、ここには虹も、他の建物もない。ヴァハラの城だけが複製された場所と考えるのが妥当だ〉


 ミミルは何度も第21層に来ているからそれを理解している。逆に俺は初めてだから何もわかっていなかった。確かにミミルの言うとおりだ。アースガルズには虹の橋を渡らなければ辿り着けないと北欧神話の本に書いてあった。


〈では、先に私が守護者の部屋に行く。しょーへいは起動鍵を嵌めてから転移するように。起動鍵を嵌めずに触るとダンジョンから出てしまうから気をつけろ〉


 言って、ミミルは転送石に触って姿を消した。


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次回の投稿は8月30日(火)12:00を予定しています。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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