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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第52章 ダンジョン攻略

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第512話

〈ああ、申し訳ない……〉


 俺は転移石を使うのは1日に2回ていど。要は、入るときと出るときくらいのものだ。だからそこまで慣れていないので勘弁してほしい。

 ミミルはいくつものダンジョンを踏破しているほどの力量の持ち主なんだから、ひとりで様子を見に行くことぐらいなら何も心配していないだろうが、残される俺としてはとても不安だった。

 これまでに第1層、第2層、第3層と各入口にある転移石から、店の庭になる出入口に出られるようになってはいたが、今回は特殊な部屋に飛ばされたはずだ。だから素直にここから庭の出入口に戻れる保証がない。


〈でも、ひとりで外に行ったりしないでくれよ〉


 俺はまたミミルの手をギュッと握った。

 いい大人の男がどうしたのかと思われるかも知れないが、いまは俺の目が見えない状況だ。しかもどんな場所か、どうすればいいのかもわからないのだから、心細くもなってくる。


〈まったく、仕様がないな。5デレットもあれば元に戻るだろうから、待っててやる〉

〈ありがとう〉

〈いや、まあ……うん〉


 どうやらミミルも心細いんじゃないかな。

 とりあえず、目が眩んで見えない状況だし、ミミルの目で見た情報を教えてもらうとしよう。


〈ここは部屋なのかい?〉

〈そうだ。各層の入口と同じだと思う〉

〈じゃあ、階段があるんだな。階段の先は、昼か、夜か、わかるか?〉

〈昼だ。青い空が見えている。あと、周囲に木が生い茂っているということはなさそうだ。第4層ではないことは確かだ。砂漠や岩石地帯という可能性もあるが、第3層と同じ草原の中にある可能性もある〉

〈そうか。もちろん、鳥が鳴く声などは聞こえない……でいいよな?〉

〈うむ。鳥の鳴き声や魔物の鳴き声なども聞こえない〉

〈出口の周囲は安全地帯になっているってことかな?〉

〈おそらくそのとおりだ〉

〈川で水が流れる音や海のさざ波のようなのも聞こえない、よな?〉

〈うむ。そのような音はないな〉

〈森じゃなく、海や川の近くでもない場所……どこか心当たりはあるかい?〉

〈草原、砂漠、岩場、荒野、火山……といったところでいけば、第1層から第3層、第12層から第14層、第18層から第21層までのどこかということになる〉


 階段の長さについて特に言及がなかったので、第2層というわけでもなさそうだ。だいたい、第2層や第3層の入口は俺たちがよく使ってきたから何かの痕跡がのこっていて、それにミミルが気付くはずだ。

 第3層出口から第1層入口に強制転移させるくらいなら、ダンジョン出入口である家の裏庭に出した方が早い。そんなことを考えると、第12から第14層、第18層から第21層のどこかということになるかな。


〈しょーへい、そろそろ目は慣れてきたか?〉

〈う、うん。そうだな、そろそろ大丈夫なんじゃないか〉


 返事をしながら俺は目を開けた。まだ少し慣れないが、あるていどは見えている。逆に暗いところにずっといるよりも、明るいところに出た方が目が慣れやすいかも知れない。


〈まだ慣れないが、まずは階段から上がろう。足下くらいは見えるから大丈夫だ〉

〈そうか、では行くぞ……〉


 歩きながら確認すると、確かに第1層や第3層の入口と大差ない。第2層は階段が長いので角度が悪ければ外が見えないが、ここの場合は階段の先までよく見えた。


 階段下について、ミミルに手を引かれながら石段を登る。

 少しずつ、階段の先の様子が見えてきた。

 階段を登り切った場所は、石で舗装された半径30メートルほどの円形状の広場になっていて、石畳の向こうは鬱蒼とした森になっていた。これだと、単純に地下から見たときに外は草原のように開けた場所に見えてしまう。


〈しょーへい、こっちだ〉


 階段から出て、正面に見える景色をぐるりと見渡しているとミミルが逆方向へと手を引いて歩きだした。その様子はどこかいままでと違う雰囲気があるのだが、それが俺には何故だかわからない。

 慌てて身体の向きを変えてみると、円形状の広場から石畳の道が森の中へ続いていた。緩やかにカーブを描く石畳の道路は、車4台がすれ違うこともできそうなほどの道幅があった。


〈ここは第21層、ダンジョンの最終層だ〉

〈なっ、本当か⁉︎〉

〈嘘をついてどうする。ここは守護者しかいない、ダンジョンの最深層。天界の層とも呼ばれている。あれを見ろ〉


 ミミルが前方を指さした。

 その白く細い指が示す先には石畳の道が続いていて、緩やかに上りながら大きくS字にカーブしているのがわかる。森を抜けた先にはいままで立っていた円形状の広場と同じような場所があるのが見えた。

 更にその広場の向こうには、とても重厚な印象を受ける建物、いや宮殿

 があった。


〈守護者は城の中から飛び出し、あそこにある円形の広場に降り立つ。ヴァルキリーと呼ばれる動く石像だ。どう考えてもしょーへいには荷が重い相手だが……倒さねばしょーへいが帰れぬやも知れぬ。私が弱らせるから、しょーへいはナイフで首を落とせ、いいな?〉


 ミミルは淡々と述べ、そして最後に口角を上げて円形広場を見つめていた。



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次回の投稿は8月26日(金)12:00を予定しています。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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