表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第50章 緑の猿人シバンゼ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

551/594

第500話

 とにかく、守護者のいる方向へ進むべきだと思い、俺は遠くに見える人工的建造物に向かって歩き出した。

 ミミルの話では、シバンゼという魔物は樹上や地上で活動するというので、音波探知を使ってその所在を確認する。波操作の加護を用いて俺の身体から超高周波数の音を出し、半径50メートルほどの範囲にいる魔物から返ってくる音を聞いて、再び波操作の加護を用いて俺の耳で聞こえる音に変換し、脳内で音像をつくっていく。

 40メートルほど先に、2匹いるのがわかった。どうやら草原に生えている草丈と同じくらいの身長しかないようだ。

 1匹は棒のようなものを手にしており、もう1匹も手に何かを持っているようだが、それが何かまではわからない。反響してくる音から作る音像では、細部まではわからない。

 俺は続けて魔力探知を行った。

 自分を中心に、蜘蛛の巣のように等間隔で横糸を張りながら魔力の膜を広げていく。すると、先ほどの2匹から10メートルほど先に10匹、他にも2匹でペアになってウロウロと歩きまわっている姿が確認できた。10匹いるあたりに木があるので、その木を目視で確認する。どうやら木の上にも数匹いるようだ。

 幸いなのは、最も近くにいる2匹が俺の存在に気付いていないことだ。

 こちらは風下になっているし、草が邪魔でシバンゼからは俺を目視できないのだろう。

 同様に、俺もシバンゼを目視できておらず、どんな魔物なのかよくわからない。


 遠くに見える闘技場らしき建物に向かいながら、できるだけ音を立てないように進んでいく。どうやら木の下は草が生えていないようで、そこにいるシバンゼの姿が視認できるていどにまでは近づいた。

 身長が80センチ、緑色の体色をした魔物だ。腕が長く、痩せた身体に、ぽっこりと膨らんだお腹をしていて、とてもアンバランスな体型をしているのがわかる。身体の中にたんぱく質が不足すると、浸透圧を維持することができなくなって血中から体液が逆流し、腹水が溜まる現象がある。飢餓地域の子どもが骨と皮しかないように見えるほど痩せていても、お腹が出ているのはそれが原因だ。それだけ栄養状態が悪い証拠だ。

 安全地帯の境界線に生えている萱のような草を使ったのか、シバンゼは腰蓑のようなものを巻いている。道具を作るという知能と、羞恥心や知性のようなものを持っている証拠と言えるだろう。

 言葉は違うかも知れないが、ミミルと同じように何らかのコミュニケーションが取れるかも知れない――などと考えている間に、最も近くにいた2匹が騒ぎ出した。どうやら俺の方から近づきすぎて、視界に入ってしまったようだ。

 まるで猿のような、だが猿特有の甲高い鳴き声ではなく、威嚇するような低く、濁った鳴き声を上げて俺に向かって駆けよってくる。その様子は、ドタドタとした感じで、体型なりの速度しか出ていない。

 歩いても変らないんじゃないかな、と思いながら20メートルほど離れたところにいるシバンゼを俺はジッと観察した。

 見た感じから猿だと思ったのだが、ギョロリとした三白眼に、バランスの悪い巨大な鷲鼻、疱瘡とその痕と思われる凸凹として荒れた肌。裂けているのかと思うほど大きな口には、汚れがたっぷりとこびりついたキザギザの歯がついていた。醜く、不潔で不快感を与える顔だ。そう、ゲームや小説の世界に出てくるゴブリンという魔物のイメージに近い。


 僅か数メートルの距離にまで近づいてきたシバンゼの1匹は棍棒らしきものを持ち、もう1匹は錆びついた青銅製のナイフを持っていた。道具として何かを切ったりするのも難しそうなくらい、ボロボロに刃こぼれしていてる。

 2匹のシバンゼはギャアギャアと喚き散らしながら、俺を牽制してくる。その声に気付いたのか、他のシバンゼがこちらに向かってきているのが視界の端に見えた。ダラダラしていると囲まれてしまいそうだ。

 でも、容姿が醜悪とはいえ、道具を使うことができ、仲間の間でコミュニケーションが取れているようだ。


(案外、俺たちとも会話できるようになるのかもな……)


 などと俺が考えていると、少し焦りの入ったミミルの声が脳内に響く。


『何をしている!! すぐに排除しろ!!!」

『いや、地球の『サル』という動物よりも知能があるようだし、会話とかできるんじゃないか?』

『馬鹿なことをいうな。さっきもグロービヨンの死体を見てわかっただろう。内臓がドロドロとした液体で、生物ではない。ただ、どこかの星にいる他の魔物を複製したにすぎん。言葉も騒いでいるだけで会話ではない! 遠慮なく殺せ!!』


 ミミルに言われて、俺は我を取り戻した。

 ミミルの言うとおりで、ダンジョン内の魔物は俺たちには敵以外の何ものでもない。


「ああ、わかったよ――ストーンバレット!」


 俺は急いで目の前にいる二匹のシバンゼの眉間を狙い、ストーンバレットを放った。

 至近距離で放ったストーンバレットがあたり、2匹の頭が爆散した。


第500話ですね……

読んで下さっている方がいるから、ここまで続きました。ありがとうございます。

でも、まだ第一部も終わっていないんですよね。

引き続き頑張っていきたいと思います。

よろしくお願いします。



この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓他の作品↓

朝めし屋―異世界支店―

 

 

異世界イタコ

(カクヨム)

 

 

投稿情報などはtwitter_iconをご覧いただけると幸いです

ご感想はマシュマロで受け付けています
よろしくお願いします。

小説家になろうSNSシェアツール


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ