第28話
コンビニで買い物を済ませて、自分の店に戻る。
店の中はまだ何もないので、二階の自室へとミミルと共に上がって二人で夕食だ。
ミミルはまた異世界語でいろいろと話しながら食べていた。牛丼もかなり気に入ったようで、『また、たべる』などと話しかけてきた。
自分の店が開店を迎えると、なかなか外で食べる機会というのも減ると思うが、またデリバリーサービスを使えばいいだろう。
◇◆◇
食事を済ませて一段落ついたところで、ふたりでダンジョンに向かう。
俺はデニムパンツに長袖のTシャツという、昼間と同じ格好だ。ブーツだけは新品のものを履いている。ミミルから借りたナイフも、ベルトに鞘を通して腰の位置で固定した。
ミミルは洗濯した服を着込んでいるが、ローブだけは洗っていない。
何やら魔法的な効果があるとかで、洗ってもいいが、効果をつけなおすのが面倒だと言っていた。素材的にも羊毛のような感じで、洗濯機で洗うのには向いていない気がする。洗って縮むと困るので、「うんうん」と頷いておいた。
奥庭へ続く扉を開き、ダンジョン入口へとやってきた。
そういえば、雨が降ったら中に水が溜まるかもしれないし、この階段にも蓋なり屋根なりつけないといけないよな。
「ミミル、この入口に屋根とかつけることできるのか?」
最初に穴を開けたときはツルハシを使っていたが、その後はあっという間に石造りの階段と入口、地下室を作ったのだからそれくらいできるだろうと思って尋ねてみた。
『ん――、こんど』
日も沈んで暗くなっているのもあって、無理にいまやってもらう必要はない。
時間はたっぷりあるはずなので、どこかでやってくれればいいことにしよう。
入る前に時刻を確認する。午後七時五〇分。
そして、昨日と同じように転移石に触れて、ダンジョン内へと移動した。
◇◆◇
ダンジョン第一層の転移石の前でスマホを確認すると、当然圏外になっている。だが、時計機能は地球にいたときと同じように時間を刻んでいた。
そして昨日と同じように草原にでる。
快晴だ。
気温はちょうどいい。
空気が乾燥していて、からりとしている。
とても過ごしやすくて気持ちいい。
念の為、昨日と同じように音波を出して、近くにいる魔物を確認する。
半径五〇メートルの円内に、ツノウサギの気配が二つあるが、それぞれ別の方角にいる。他に、オカクラゲらしきものの反応も確認した。
『それ、すごい』
「そうなのか?
それはいいとして、こっちの方角にツノウサギが一匹、あっちに一匹」
『ん――。わたし、こっち。しょーへい、あっち』
今日は別々に行動するらしい。昨日は、ミミルの指弾のようなもので気絶させてから俺の電磁波を使っていたが、間に合うだろうか?
音を立てないよう、そろりそろりとツノウサギのいる方向へと足を向ける。
彼我の距離は約三〇メートル。まだ、草の間から特徴的な耳やツノさえ見えない状況だ。だが、再度音波を出して確認すると、方角に間違いがないことを確信する。
まだ見えないところに電磁波を出しても手前にある草が邪魔をするだろう。多少は音を立てたほうが、ツノウサギも立ち上がって耳を向けてくれるのでやりやすい気がするが、それでももう少しは近づかなければいけない。
音を立てないよう、そっと近づいていくとさすがにツノウサギもこちらの存在を察知する。
膝丈ほどの草の間から、ピョコンと耳を出してこちらを見るのが見えた。
こうなるとツノウサギは早い。逃げるのではなく、攻撃しようとこちらに向かってくるのだ。
彼我の距離は約二〇メートル。ガサガサと音を立てながら、草をかき分け、全速力でこちらへと向かってくるのがわかる。
こんなときは大音量の音を出して驚かせるという方法もあるかもしれないが、他の魔物を呼び寄せる可能性もある。違う方法を選ぶほうが賢明だ。
俺は右手を突き出して、ツノウサギの姿が見えるのを待つ。
残り一〇メートルといったところで、ようやくツノウサギの姿が見えた。
頭部をめがけて収束した高出力の電磁波を放つ。
「キュッ!」
残念だが頭を確実に捉えられなかったようだ。ツノウサギは小さく鳴き声をあげたが、構わずこちらに向かってくる。
いまの電磁波はどこに当たったのだろう……。
ツノウサギの動きが少し鈍くなっているようだが、残り一〇メートルを切っていたのである。すぐに目の前までやってきた。
俺は再度ツノウサギに向けて電磁波を放つ。
近くまで来ているので焦っているのか、それともツノウサギの動きが速いせいなのか……二発目の電磁波はツノウサギに掠りもしない。
あと二メートルといったところで、ツノウサギが飛びかかってきた。
実に直線的な動きだ。避けやすい。
俺は左足を軸にくるりと受け流すように半回転し、ツノウサギの攻撃を躱した。
ツノウサギは着地すると、すぐに向きを変え、自慢のツノを俺の腹に向けて飛びかかってきた。






