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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第48章 ファングカット

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第477話

 ファングカットのドロップは牙と爪、毛皮。ルーヴと同じ構成だが、特徴的な犬歯は少し研げば刃物のように使えるらしく、鎌の先に使われたりしているらしい。そして、毛皮の方は鞣した後でも堅くて厚みがあって、ゴワゴワとしているそうであまり用途がないとミミルが話していた。


 南に向かって安全地帯に到着するまで、2つの集団と戦う羽目になり、いろいろと魔法を試してみた。エアエッジ、エアブレードは共に「投げる」という動作が入るので速度を上げることができないので諦めた。とはいえ、貫いたり、切り飛ばしたりするという目的であれば不可視であることも含めてとても便利な魔法なので今後も使うことになるだろう。

 一方、コラプスは指先に貯めた魔力の塊に別の魔力の塊をあてて弾き飛ばす魔法だが、それをストーンバレットと同じように指先から直接飛ばせるように変えた。速度が上がり、ミミルの魔力弾と同じように射出時に衝撃波が発生するようになった。名前もエアバレットに変更した。

 ただ、一定の速度以上にすることはできなかった。これには何か原因があるのだろう。


 せっかく安全地帯を歩いているのもあり、俺は周囲への警戒を解いてストーンバレット以外の魔法を試すことにした。まずは、ウォーターバレット。直径3センチほどの水球を連続して飛ばす魔法だ。


「――ウォーターバレット」


 誰もいない方向へと指先を向けて、ストーンバレットと同様、秒速200メートルで水球が飛び出していく。飛び出していくのだが、途中で小さな水飛沫のようになって拡散してしまった。


「おかしいな……」

〈今度は何だ?〉

〈水塊を飛ばす速度を上げようとしたら、途中で霧のようになってしまったんだ〉

〈それは、そういうものだ。諦めろ〉


 エルムの間では解決している、ということだろうか。ミミルは俺に詳細な説明を求めてくるくせに、自分が教えるときは面倒臭そうにすることがある。ミミルにとっては常識。でも、俺にとっては非常識ってことも多々ある。もう少しそのあたり気配りしてくれると俺も嬉しいのだが……などと考えながらジトリとした視線をミミルに送った。

 2歩、3歩と歩いてその視線に気づいたのか、ミミルが俺の方へと顔を向けてたずねる。


〈高い滝から落ちる水は、岩壁などに触れなくても拡散してしまうのを見たことがないか?〉

〈確かに、落差がある滝で、落ちる水が途中で拡散しているのを見たことがある〉


 南米のエンジェルフォールがそうだ。途中で拡散してしまうので滝つぼがない。拡散する理由は、落下するときの風圧などが原因なのだろう。雨粒のように小さな水の粒になって周囲に飛び散ってる感じなんだと思う。


〈なるほど。水塊を飛ばす魔法でも同じように拡散してしまうってことなんだな〉

〈うむ。魔法で作り出した水は一定の速度までは形状を維持するが、それを超えると形を維持できなくなり、崩壊する〉

〈速度はどれくらいだ?〉

〈水塊の大きさにもよるが、1シクで100ハシケくらいの速度だな〉


 液体ならではの現象ってことなんだろう。それに、魔法で作りだした水でない場合は、もっと低い速度で拡散してしまいそうだ。今度、雨粒の落下速度なんかも調べてみるといいかも知れない。

 それに、エアバレットが上手くいかなかったのも同じような理由なのだろうと思う。音速に近い速度で発射するとミミルのように小さな衝撃波が発生するが、ギリギリくらいで抑えないと霧散してしまっていた。


〈わかった。ありがとう〉

〈とりあえず、水魔法はそのままだと弱く、使い勝手が悪いということがよくわかっただろう?〉

〈そうだな。畑に水を撒いたりするには良さそうだけどな……〉

〈おお、明日から2階の草に水やりするときは使うといい〉

〈そ、そうだな……〉


 折角覚えた水魔法が、ベランダ菜園でのみ活用されるというのは少し寂しい気がする。まあ、ミミルが使っていた水魔法を考えると、他にも水の壁、水の刃なんかもあるみたいだ。まだまだ技術レベルが足りていないが、頑張ろう。


〈今日はそこのエルムの木で休もう〉


 ミミルが指をさした。そのまま南に進むのかと思っていたが、第3層の太陽は西に傾いていて、もうすぐ空を朱く染めるような時間帯に達していた。

 時計が無いと太陽だけで時間を計らないといけないが、少し心が高揚するのは何故だろう。些細なことだが、サバイバルしているような気分になっているからだろうか。それとも、何時何分という数字に表すことができないことで、時間に縛られている感覚が薄れるからだろうか。


 太陽を背にし、エルムの木に向かって歩く。距離にして残りは数百メートルだったので、数分で到着した。

 ちらりと上を見上げるとラウンがいたが、俺たちが近づいてきたことに気付いたのか大きく羽を広げて宙に舞う。


「あっ……」


 つい先日まで、必死で追いかけていたラウンが飛び去っていくのを見て、俺はつい手を伸ばし、声を漏らした。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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