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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第47章 治癒の魔法

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第470話

 非常に残念なことだが、そのままルーヴの領域を歩いて南に向かい、再びルーヴと接敵すれば訓練を兼ねて戦うことになった。

 20分ほど歩いていると、100メートルほど先にある木の下にルーヴの群れがあるのを見つけた。目で見てわかるほどリラックスした状態なのだが、1頭だけは全く雰囲気が違っていた。身体の模様は他の個体と同じで斑点が入っているのだが、体格がひと回り大きく、頭部の毛に特徴があった。

 とても自己主張の強い個体だ。もしかすると1頭だけがオスで、残りはすべてメスという構成なのかも知れない。メスのルーヴを10頭以上囲ったハーレムを築いているところや、一度戦ったときの仲間同士の連携や動き方、木陰で休んでいる習性を考慮すると、非常に地球のライオンに近い習性のある魔物と言うことなんだと思う。

 ただ、どうしても言いたいことがある。


「どうしてモヒカンなんだよ……」


 ライオンのオスなら顔のまわりをぐるりと取り巻くような鬣をイメージしてしまうが、ルーヴのオスの場合は顎髭が生えていて、頭髪そのものは美容院などに行ってセットしてきたかのようなモヒカンカットだった。遠いのでよくは見えないが、似たような髪型なら丁髷(ちょんまげ)というものも想像できるが、あれは紐で縛って作る。いくらなんでもルーヴの指先でそれをつくるというのは無理だろう。爪で押さえつけられようとした俺には、肉球があるまるい手のひらが見えていたから間違いない。


「モヒカン?」


 呆れたような声をだした俺の方を見て、ミミルが不思議そうな顔をみせていた。明らかにあの髪型の名称に対する疑問を抱いていることだろう。


〈あれは一部のおしゃれでチキュウの男性がするモヒカンという髪型なんだ。チキュウでは2000年以上も前からあの髪型をしていた民族があったといわれているくらい、古い髪型なんだよ〉

〈ほう、ルーヴの真似をするなんて、ニンゲンは変わった趣向をした者もおるのだな〉

〈いや、まあ、うん、そうだな〉


 少なくとも俺の周辺にはいないが、街に出ればいるかも知れないし。それに、人間という大きな括りで言われてしまうと、日本に限らなくなってしまうので否定はできなかった。

 オスのルーヴに対する感想を話したあと、じゃれ合うルーヴの姿を遠くから見つめた。その動きは明らかに大きな猫そのものだ。どこかの惑星にいる猫に似た生物を元に再現された魔物と納得するしかない。少なくとも地球の雄ライオンから感じる威厳や威容を取り除いた――なんてことはないだろう。

 木の下で寛ぐルーヴたちに向かって俺とミミルがゆっくりと歩いていると、気が付いたのか寝そべっていた数頭のルーヴが頭を上げてこちらを見た。どうやって意思疎通をしているのかわからないが、見事に統制がとれた感じで正面に見て左に3頭、右に4頭が群れから分かれて歩き出した。正面の木の下に残っているのはオスが1頭、メスが4頭で、別れて行った7頭は挟み撃ちにすべく俺たちを包囲するように配置されるのだろう。俺の背後に回った2頭で追立て、左右から5頭が逃げ場を塞ぐ形にし、嫌でも正面に4頭の方に逃げざるを得ないようにする――そういう作戦のようだ。


『ミミル、ここで迎え撃つことにしたい』

『ふむ、危ういようなら加勢する』


 ミミルは、少し心配そうな表情を見せると、羽を生やして上空へと飛び立った。全体を俯瞰して見れるので、俺以上に状況を冷静に判断することができるだろう。いざというときは手を貸してくれるということだから、俺も安心してルーヴに相対する。

 だが、まだ範囲魔法のような派手なことができない俺にとって、合計12頭ものルーヴを相手にするというのはかなり厳しい。単体で潰していくのが最も確実な方法だ。

 俺はここで魔力探知を広げる。自分を中心として一定距離で横糸が伸びた蜘蛛の巣状になった魔力の網を広げ、12頭のルーヴたちを範囲に収まるサイズへと広げる。

 正面の4頭はそのままに、左に3頭、右に4頭。背後へと回り込むため、左から1頭、右から2頭が分かれて背後へと進んで行く。つまり、正面に4頭、背後に3頭、左右に各2頭という体制にするわけだ。俺からすれば、どちらに向かっても2頭以上を相手にしないといけない布陣になってしまう。


「ならば……」


 俺は両脚に身体強化を施し、左後方の1頭へと駆けだす。ターゲットのルーヴまで距離は約70メートルほどあるが、身体強化した俺は立ち幅跳びで10メートルほど飛べるほどの脚力になる。その強化した脚力で僅か数秒でルーヴの背後へと移動し、俺は両腰からナイフを抜いて魔力を込めた。

 足音や気配のせいか、ルーヴも俺が一気に間を詰めたことに気付いていた。しかし、それは正に一瞬の出来事。

 1頭目のルーヴは背後に立った俺に威嚇しようと口を開けて振り返った。

 その瞬間、緋色に輝く刀身がルーヴの上顎から頭部へと貫通した。


「まず1頭……」


 俺は背後に回り込もうとしていた、残りの2頭の方へと意識を向けた。


ルーヴの外観は、オスはモヒカン型のタテガミ、メスは耳の下から顎までのタテガミが生えていることになっています。



この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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