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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第47章 治癒の魔法

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第469話

 女性がすれば色気がありそうな格好をしているせいか、男の俺にはなんだか小恥ずかしい。ただ、肩を出した程度では打撲したところまでは見えないようで、ミミルが襟口を摘まんで覗き込んだ。


〈ふむ……〉

〈ど、どうだ?〉

〈うむ、先ほど青紫色だったところが、いまは一部分だけ黄色になっている〉

〈もうそんなに治ってるのか?〉

〈う、うむ。治っているのかどうかは知らんが、黄色いのは確かだ〉

〈ああ、ありがとう。ほぼ完治する直前ってところまで治ってるようだよ〉

〈ふむ……〉


 ミミルは左手で右肘を抱えるように持ち、右手の親指で顎を支えて考えている。

 もしかすると、エルムの場合は違う変化があるのかも知れない。それなら俺の黄色くなった打撲痕を見たあとのミミルの反応も理解できる。


〈ニンゲンの場合、身体の内側で出血した場合は最初は青紫色になり、その周囲は赤く腫れる。その後は茶色くなり、黄色くなって消えるんだ。まあ、人によっては緑色になったりするけど、とにかく俺の場合は黄色くなったらもう次は消えてなくなるはずだ〉

〈ほう、そこはエルムとは違うのだな。エルムは赤くなり、その後は外側から色が抜けて消えていく〉

〈へえ、やっぱり違うんだな〉

〈エルムとニンゲンの違いがひとつわかった〉


 なんだか、ミミルの顔がとても満足げだ。

 地上のファンタジー小説やアニメ、ゲームのように治癒魔法そのものがあればとは思うが、わずかな時間で大きく腫れた打撲を治せるほど自身の治癒力を上げることができるのなら十分(じゅうぶん)だろう。

 だが、今回は打撲だったが、擦過傷(さっかしょう)や切り傷などの場合でも同じで良いのだろうか。


〈今回は打撲だったけれど、切り傷や骨折、火傷、凍傷でも同じ方法で治療するのか?〉


 今後、どんなけがをするかわからない。事前に得られるなら、それなりに知識は蓄えておきたいので、ここでミミルにたずねることにした。

 ミミルは、おとがいに指先を当てて数秒ほど考えを巡らせると、説明を始めた。


〈切り傷は血がでるから、まずはすり潰したモギの葉を患部に塗って止血する。布で縛ってしまえば、あとは治癒力を上げる魔法を使う〉

〈じゃあ、骨折は副子(ふくし)を使い、布で縛る。幹部は腫れるから冷やす。腫れが退いたら治癒力を上げる魔法を使う……でいいのか?〉

〈そのとおりだ。火傷は程度によるが、酷い場合はすり潰したモギを塗り、その上に第13層にいるアローという魔物が出す半透明の白い肉を貼り付けてから布で縛る〉

〈うへえ、たいへんだな〉


 ダンジョン内は魔素のせいで細菌やウィルスの類は存在し得ないという話なので、感染症の心配がないのが有難いところだろうか。

 少なくとも止血や手当をして、あとは魔力循環をして治癒力を上げれば治癒していくというのは同じなのだろう。

 では、大きな刀傷や、皮膚組織を超えてダメージを受けるような火傷はどうするのか興味が湧いてくる。


〈しょーへいは怪我をしないことが最優先だ。まだ使用できる魔法の数が限られているなら、使用できる範囲で最適な戦い方を考え、判断しろ〉

〈お、おう……〉

〈その服に付与されている物理耐性はあくまでも魔物の攻撃に対して強く発揮する。さきほどのように押し倒された場合、地面などから受ける衝撃は通ってしまう。だから、攻撃は受け流すようにしなければならん〉


 ミミルは簡単に言ってくれるが、さきほどは途切れることなくルーヴが襲い掛かってきた。あのような状況ですべての魔物の動きを俯瞰(ふかん)して捉えるというのは、現在の俺には困難だ。


〈それができれば苦労はしないさ〉

〈うむ、だから言ったではないか。しょーへいは戦い慣れていないと〉


 確かにミミルは、俺がルーヴと戦った直後に〝しょーへいはなかなか戦い慣れんな〟と言った。

 第1層で大量のアナコネズミ――エルムヘイム語ではリテン・フルマスと言うらしい――を相手にしたときは、蹴り上げれば飛んで行ってしまうし、体当たりされたところで俺は微動だにしなかった。それくらい、第1層の魔物は弱かった。だが、第2層からは明らかに俺よりも重く大きな魔物ばかりになっている。ルーヴの大きさから推測するに、体重200キロ近くあるはずだ。飛び掛かってくるときの速度も、第2層にいたダチョウに似た魔物と大差がなかったように思う。そう考えると、俺の体重の2倍以上あるルーヴが時速100キロで飛び掛かってきていたことになる。更に今後は大きく、素早い魔物も出てくるだろう。そのような魔物に完全に死角になっている場所から飛び掛かられたら避けようがない。


〈じゃあ、どうすりゃいいんだ?〉

〈まずは、一度張った魔力探知の網を維持することだ。そして、葉擦れの音や、魔物が地を駆ける音、漂う匂い、殺気のこもった視線……とにかく気配を感じることだ〉

〈魔力探知はわかる。でも気配を感じろと言われてもなあ〉

〈第4層は森だ。周囲を草木で囲まれた場所でそんなことを言っている余裕はないぞ〉


 まあ、ミミルが言うことも理解できるが、ルーヴで訓練というのは遠慮させていただきたいな。


ルーヴのモデルはライオンです。メスライオンの成体で体重は130キロ、速度は最大時速80キロ。オスだと体重は190キロにもなります。

ルーヴは設定上、ダンジョン内の魔物なのでひと回り大きく、体長3メートルくらいで、体重は190キロくらいと思ってください。



この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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