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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第47章 治癒の魔法

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第462話

 地球人の、それも日本人な俺の経験からくるアイデア――魔法の発現点に模様を描く方法をミミルが考え始める頃、俺たちは南に渡る橋を越え、チューダとナッチの領域に挟まれた安全地帯を歩いていた。

 少し先には俺が空間収納のスキルを得るに至った、ラウンがいたエルムの木が見えている。第3層の出口は滝のある方向が西で、いまの俺たちから見ると右側になる。つまり、正面が南になるはずだ。その位置関係からすると、第3層の太陽は少し西に傾いたくらいの場所にある。時間にすると、13時くらいといったところだろうか。


〈ミミル、もうすぐエルムの木だが、昼食にするか?〉

〈うむ、そう言われると腹が減った気がするな〉

〈なんだ、いらないのかい?〉

〈いや、もちろん食べるぞ〉


 食事は内臓を維持するためにも必要な行為だ、などと言っておきながらも毎回それを楽しみにしているようなので、こちらとしては嫌な気はしない。


〈じゃあ、あのエルムの木の下でいいよな?〉


 ミミルは発現点の模様について考え込んでいるのか、ただ頷くだけだった。


 4、5分ほど歩いてエルムの木の下に到着した俺たちは、食事の準備を始める。地上の食材がほとんどないので煮物は絶望的だ。ダンジョンから出たら必ず買いに行くことを再度心に誓い、あるもので料理をすることにする。

 セロリ、タマネギ、ニンジン、ニンニクがあれば大抵の料理に使える野菜のブロードがとれるのだが、それは地球の野菜の話。セレーリ、リューク、ギュルロ、トリュークといったダンジョン産の()()()()では煮たときに味が抜けてしまうので、煮物は出せない。

 仕方がないので昼食はまたバーベキューだ。

 簡易テーブルと椅子を出して並べたら、土魔法のブリックでレンガ状の石を作って地面に並べていく。


「ピザ窯を作るのも悪くないな」


 石を組み上げながら俺は呟いた。

 土魔法のレンガ状の石が摂氏何度くらいまで耐えられるのかは不明だが、500度近い高温にも耐えられるなら、この石を組み上げるだけで簡易な石窯も作ることができる。

 俺の店のピザ窯のような丸いドーム型は流石に耐火モルタルを使って固める必要があるが、簡易な四角い石窯であれば難しくはない。組み上げたあとは、空間収納に仕舞っておけば魔素に還ることもないので何度も使える。もしかすると、火が入った状態で空間収納に仕舞っておけば、必要な時に取り出してすぐにピッツアを焼けるかも知れない。できるかどうか、ミミルに確認だ。


〈ミミル、ちょっといいか?〉


 背後の簡易テーブルに並べた椅子に座っているミミルの方へと振り返り、俺は声を掛けた。

 だが、ミミルは方眼罫のノートを開いて何かの図を描くのに忙しく、それどころではないらしい。


 急ぐ質問でもないので、食事中にでも質問すればいい。いくら集中しているとはいえ、ミミルのことだから肉や野菜が焼ける香りがすれば食べることへと意識が向くはずだ。


 石を並べるのが終ったので薪を入れて火を着けた。

 十分に火が回るまでの間に、キュリクスの肉、ファルの肉、リューク、ギュルロ、グレスカ、オバシンを火が通りやすく、食べやすい大きさにカットしておく。

 残った地球の野菜も全部使い切るつもりで空間収納から取り出した。ジャガイモが1個、赤いパプリカと黄色いパプリカが1個入っていた。

 串に刺して焼くだけという簡単調理を考えると、ジャガイモは少し扱いにくいので、赤、黄色のパプリカの種を取り、縦に切った。

 ひと串に8個ほどの食材を肉、野菜、肉の順で並ぶように刺して塩と胡椒をし、石を積み上げたバーベキュー台の網に置いて、直火に当たらないように焼いていく。

 ダンジョン産の薪は元は魔素でできているせいか、火を着けるだけで煙や香りを出すことがないので、安心して焼くことができる。


 遠火でじっくりと火を入れていくと、肉の脂が溶けて滴り落ちる。それが直接、薪や木炭に落ちると煙が上がって焦げた香りが辺りに立ち込める。この匂いが食欲をそそるのだが、一瞬で煙が上がってくるので煙たくてしかたがない。しばらく目を閉じては、軽く擦っているとミミルの声が聞こえた。


〈いい匂いだな〉


 肉が焼ける香りが気になったのか、先ほどまでは声を掛けても気づかなかったミミルがバーベキュー台の向こう側に回り込み、俺の前に屈んで網の上に乗った串を眺めていた。

 あと1歩でも踏み出せば下した髪がバーベキュー台の上に掛かりそうな場所にミミルは立っている。強い風が吹いただけでも危険ではないかと俺は思った。


〈あまり近づくと髪に燃え移るぞ〉

〈大丈夫だ、心配ない〉


 ミミルが顔を上げて言った。それに釣られて俺の視線もミミルの顔へと上がっていく。既にリラックスモードに入っているのか、ミミルはダンジョン内でいつも着ているローブを脱ぎ、タンクトップ一枚になっていた。そのせいで、前屈みになったミミルの胸元がチラリと見えた。平らで何もない場所だった。何も見ていないというか、何もなかったので見えてない……そういうことにしておこう。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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