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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第47章 治癒の魔法

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第461話

 魔法に名づけをすると威力や発動工程が短縮される。そう聞いて俺も実際に魔法に名前をつけている。どの魔法を使う時も、発現点が明るく光るのだが、それを制御することはできるのかという実験だ。


 俺は歩きながら指先を前方に向け、アイスバレットを飛ばすつもりで指先で魔法の構築を行う。


 3センチほどの氷塊を、秒速60メートルで、まっすぐ前に飛ばす。指先を保護するように膜ができて、その更に先に白く輝く魔法の発現点が現れた。そして、俺がじっくりとそれを観察する間もなく、氷塊が打ち出されると、発現点は光を失った。アイスバレットではどうにも打ち出す氷塊が小さいので、発現点を観察する暇もない感じだ。


 何もないところで俺が突然アイスバレットを放ったせいか、ミミルが怪訝そうな目を俺に向けた。


〈しょーへい、どうした?〉

〈魔法の発現点に模様を作ることができないか、と考えていた〉

〈何故だ?〉

〈何故って言われてもな。とりあえず、先ほどミミルがやったように、自分の周囲に展開して連続して魔法を放つなら、発現点に模様をつけてみたら華があっていいと思ったんだよ〉


 ミミルは少し考えこむような姿勢をとると、俺を見上げて言った。


〈しょーへいは面白いことを考えるな〉

〈なにが面白いんだ?〉

〈私でも今まで魔法の発現点に模様をつけようなどと考えたこともないぞ〉

〈それは……〉


 日本のアニメなどを見れば、魔法が発現する瞬間に魔法陣が描かれるものが結構ある。それを見たことがある日本人がうちのダンジョンで魔法を覚えたら、その全員とは言わないまでも、「魔法陣は出ないのか」と何名かは落胆するだろう。

 だから、ミミルもそういうアニメを観ればいい、と言いたくなるのだが我慢だ。まずは国民的アニメで上手に日本語を話せるようになることを優先した方が良い、という思いが頭を(よぎ)った。

 俺の視界の中のミミルは、言葉を区切ってしまった俺を見上げていた。何と続けるかを待っているのだろう。


〈ニホンのアニメでは登場人物が魔法を使うときに模様を描くものが多いんだよ。それで、俺もと思いついただけだ〉


 先を急げと促すようなミミルの視線が痛い。

 だが、今日のようにストリーミングデバイスを使ってアニメを観るようになったことを考えると、ミミルが独りで過ごしているときにそのようなアニメを観ないとも限らない。つまりは、いずれ俺が嘘を吐いていたことがバレるわけだ。そのとき、ミミルは俺にどういう思いを抱くだろう――そう考えると正直に話した方が良いと自然に判断していた。


〈ふむ、そうなのか。私はてっきり魔法効率を上げるための手段を考えついたのかと思ったぞ〉

〈どういうことだ?〉

〈魔法を名前付けすることで固定化できるのは知っていると思うが、何も口に出す必要はない。長い名前を口に出さないといけないなら、それこそ先ほど見せたように連続して発動することはできない〉

〈そうだろうな〉

〈かと言って、暗唱するだけでもそれなりに時間が必要だ〉


 ミミルは魔法を連射する際、魔法名を最初に口に出すが、残りの魔法分は暗唱しているわけではないと言いたいのだろう。

 俺自身、アイスバレットやウォーターバレットを一秒間に5発くらいまでなら撃てるのだが、実際に魔法名を口で出して唱えるは最初の1発だけだ。特にウォーターバレットなど文字数にして9文字もあって、それを1秒間に5回も唱えられるわけがない。そして、暗唱したところで1秒間に45文字も暗唱できるわけではない。


〈ああ、だから俺は魔法名を告げた最初の1発から想像して、そこに魔力を込めて連射している〉


 最初から5発を連射するイメージを作れば楽だが、それだと名前を付けて固定化した意味がない。

 たぶん、ミミルも同じ方法で連射しているはずだ。


〈うむ、それで良い。ただ、空間魔法を使って魔法の射出角度を都度調整したり、迫りくる魔物を前にして同じ質で魔法を想像するのは難しい〉

〈うん、難しいと思う〉

〈そこで、私は想像した魔法を構成する要素を模様に組み込んではどうかと思ったのだ。それぞれの魔法に模様を作り、それを複写して使う――魔法連射の効率が上がると思わんか?〉

〈そんなことできるのか?〉

〈やってみなければわからん。でも、できればとんでもない功績を残すことになる〉


 鼻息を荒げてやる気をみせるミミルだが、魔法に関する研究に寄与したところで、発表する場がないことを忘れているのだろうか。でも、それを指摘するということは、ミミルにエルムヘイムには戻れないんだろう、と再度確認するようなものだ。そうだった、と落ち込む顔を想像すると、流石に言いづらい。


〈俺にはその方法すら想像できないが、頑張ってくれ〉

〈うむ〉


 確かに、固定化されるのが魔法名だけでなく、魔法陣のような模様や文字をイメージするだけで正確に魔法を放てるのなら、俺のような魔法素人にはとてもありがたい。それに、研究することが開店後のミミルの暇つぶしになると思う。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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