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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第45章 アニメ

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第450話

 なんとかアニメの仕組みについて説明を終えると、続けて橋杭岩の映像を見せた。第3層の最初の橋……というか、飛び岩という方が正しいだろう。

 実際には橋杭岩の方が規模が大きく、夕陽を背負って数百メートルに渡って続く姿はなかなかに絵になっていた。


「どうだ、第3層の橋に似ているだろう?」

「ん。おもしろい」


 その見た目と、橋杭岩の見た目が似ているのでミミルも興味津々だ。第3層の橋はもっと間隔が狭いのだが、形状は似ていることはミミルも認識したようだ。


「川が土砂を運び、海や湖の中に堆積すると泥岩でできた地層になるらしい。そこに地震などで亀裂ができ、溶岩がその裂け目に流れ込んで固まる。その地層が隆起して海に浸食されてできた岩だそうだ」


 橋杭岩を紹介する動画を見たあと、俺はその成り立ちを説明するサイトがあったので中身を読み上げ、ミミルに説明した。

 だが、残念ながら、ミミルは泥岩だとか、地層だとかといった言葉の意味がわからないようだ。実際にエルムヘイム共通言語にしようとしても適切な言葉はわからない。これはエルムヘイムの科学が進んでいないからだろう。


「溶岩はわかるか?」

「ん。じゅうさんそう、かざんある。あかい、どろどろ、ようがん」

「そういえば、第13層は火山があると言ってたな。じゃあ、地層ってわかるか?」


 ミミルは少し考える時間をとってから、首を横に振った。

 やはり地質学だとか、そういう学問が存在しないのだろう。

 地球で地質学が発展してきたのは鉱山や石油などの資源を入手することも目的だろうが、地球の成り立ちや、宇宙の成り立ちを知る上でも必要だからなんだと俺は思っている。

 だが、身近に魔法が存在する世界の場合、魔法で作られたといわれる大地の下がどうなっているかなど興味も湧かないのだろう。


「じゃあ、エルムヘイムには地震があったか?」

「じめん、ゆれる、ない」

「そうか。じゃあ……」


 ミミルが地層や地震のことを知らないようなので、検索して動画を見せながら説明し、泥岩ができるまでの流れも動画検索して説明した。

 カッパドキアのキノコ岩もミミルに動画をみせた。こちらは泥岩とは違い、火山灰が堆積してできた凝灰岩の地層だ。俺が南欧にいたときに聞いたのは、キノコ岩の頭になる部分は玄武岩だという話だった。だが、近年行われた調査の結果、それが間違いだということが判明したらしい。藻類がそこに繁殖していた痕跡だそうだ。動画を見て話が変っているので少々焦ってしまったが、大した問題ではない。


「ダンジョン第3層の橋が不自然だって俺が思った理由、理解してくれたか?」


 俺が訊ねると、ミミルはまた少し時間をおいて考えている。

 たった30分やそこらで地震や地層のこと、断層、海や風雨による浸食など詰め込んだところなので、理屈を理解しても、すべてを飲み込むにはミミルには厳しいかも知れない。


「まあ、急いで理解してもらう必要はないけどな」

「ん。あたま、せいり」

「うん。まあ、そうだな」


 ミミルにとっては地球の表面にある大地が動き続けていることや、地下深くにはマントルや外核、内核などの液状のものがあるということの方がショッキングだったらしい。

 だったらエルムヘイムはどうだったのだろうかと気になっているのではなかろうか。

 とにかく地層だとか地質、泥岩などの言葉を覚えたばかりのミミルに、周辺の地形や地質を無視して突然現れた橋杭岩やキノコ岩のような橋に俺が感じた違和感を理解してもらおうとするのが間違いだと思うことにした。


「あまり頭を使ってばかりじゃ疲れるな」

「ん。どるちぇほしい」

「まあ、気持ちはわからんでもないな」


 人間の場合、脳細胞の主なエネルギー源はブドウ糖であり、多くの場合において砂糖や炭水化物から体内に取り込むことになる。だが、シナプスの形成にはビタミンDが不可欠だし、疲れを取るのはビタミンB6が効果的。幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンを体内で再生するには蛋白質も必要だ。また、脂質がないとステロイド系のホルモンが体内生成されないし、鉄分が不足すれば貧血になってしまう。

 とはいえ、やはり頭が疲れたときに手っ取り早く栄養補給をするならやはり甘いものが良い。その他の栄養素は普段の食事からも摂取できるし、太陽の光に当たっていればビタミンDやセロトニンは体内で生成される。

 但し、これは人間の場合の話だ。

 エルムという種族はどうなのか、魔素に最適化された身体の場合はどうなのか……それはわからない。

 エルムヘイムの文明レベルやエルムたちの気質からすると、生命活動について研究している人は恐らくいないだろうと思う。だから、ミミルにたずねても知らないだろう。


 風呂をあがって、1時間半ほど動画サイトを見て過ごしていたのだが、このまま寝るという選択肢はミミルには無いと思う。

 ダンジョンに入ればそれだけ時間を長く、有効に活用できるのだから。


「とりあえず、これでも食うか?」


 俺は空間収納から残り少ないチュロスの1本を取り出し、ミミルへと差し出した。


<参考>

TBS世界遺産 2019年11月17日放送

ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群 〜 奇岩の絶景 ナゾの地底都市

https://www.tbs.co.jp/heritage/archive/20191117/


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次回の投稿は5月31日(火)12:00を予定しています。


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