第27話
ドラッグストアを出て、ミミルのサングラスを選ぶべく眼鏡屋に入ったのだが、ここで問題が起きた。
まず、ミミルの顔が小さく、子ども用にフレームを選んでレンズを入れる方法でないと丁度いいサイズのものが見つからない。
そして、サイズ調整には店員に耳を見せないといけないことだ。
小説の挿絵やアニメの中のエルフのように極端に長いわけではないが、それでも先が尖った形状はエルフを連想してしまうことだろう。
それはやばい。
特に耳を確認されるようなことはなかったが、こんな形でミミルのことが知られるようになるのはいただけない。
ということで、サングラスではなく紫外線をカットすることができるカラーコンタクトレンズ――カラコンを買うことにした。
店員に声を掛けて話を聞くと、アルビノの場合は弱視であることも多いらしい。眼科を勧められるが、ミミル自体は視力に困っておらず、度なしのカラコンに買うことにした。
カラコンの色を選んだ後、装着方法まで教わる。
実に至れり尽くせりだ。
はじめてコンタクトを入れる際、ほとんどの人はかなり時間がかかるらしいのだが、ミミルはすぐに装着してみせた。
今までと違う自分の目の色を鏡で見たミミルは大喜びだ。ミミルが暮らした世界では殆どが碧眼だったようで、独りだけ赤い目をしていることがコンプレックスになっていたのだろう。
色違いのカラコンを何個か購入して店を出ると、既に時刻は夕方だ。
今日、調理機器なども入ってきたことだし、夕食は自宅で作ることにしたいのだが、包丁以外の調理器具がまだない。店の備品としての調理器具や食器類はあと数日後に届く予定になっているのだ。
『なやみ?』
「いや、なんでもない」
何か難しそうな顔をしていたのだろうか、ミミルが何か心配して声をかけてくる。
見た目の年齢でいけば心配するのは俺の方なのに、さすがは年の功とでもいうのか、よく気を配ってくれている。
「ただ、夕飯をどうしようかと思ってな」
『たべる、ちがう。わたし、てつだう、ない……』
食べるものが違うから、ミミルには手伝えなくて申し訳ないといったところか。
確かに食べ物は全然違うのだろうが、ミミル自身はこちらの食事に満足しているのだろうか?
「食べるものには満足しているかい?」
『おいしい。まんぞく』
これまで俺の好みで食べるものを選んできたが、満足してもらえているようで安心だ。
「そうか。それはよかった」
『しょーへい、おねがい。ここ、せかい、おしえる』
ミミルも昨日は自分がいた世界のことを教えてくれたのだ。俺は何も教えないという選択肢はない。
ただ、魔法やスキルに頼り、文明という意味ではミミルのいた世界はかなり遅れているだろう。
幸いにもダンジョンの中だと時間の経過はゆっくりとしているようなので、ダンジョンの中で教えることにしよう。
「そうだな。夕飯を食べてからダンジョンに入って説明しようか」
『ん、それ、いい』
ミミルも時間の流れの違いを利用することを考えていたようで、すぐに賛成してくれた。
あとは、夕飯を何にするかってことくらいだな。
『たべる、にかい。ダンジョン、じかん、ちがう』
「――ん?」
ミミルの手を引いて歩きながら考えていると、また脳内に話しかけられる。
どういうことだ?
こちらをジッと見上げているミミルを見つめ返し、首を捻ってみせる。
『ダンジョン、じかんちがう。たべる、にかい』
ダンジョン内は時間が違うから、食事は二回分用意しろということか。
正確に測っていないからわからないが、地球時間での一時間はダンジョン内で三時間だとすると、二時間潜っていれば六時間経過するってことだからな。確かに戻る頃にはまた腹をすかせているだろう。
「わかった。じゃぁ、そこで牛丼弁当でも買うとしよう。あとはコンビニでカップ麺でも買うことにするか。明日の朝食の準備も必要だしな」
『ん――』
目の前の信号を渡った先にある牛丼屋で弁当を買い、コンビニに立ち寄る。
今後、ダンジョンに入る機会も増えることを考えると、カップ麺ならダンジョンの中でもお湯を沸かして作ることができる。まとめていくつか買っておいた方がよさそうだ。
俺には波操作(電磁波)があるんだから、水さえあれば湯を沸かすなんて簡単だ。二リットルのペットボトルに入ったミネラルウォーターをケース買いしておいても良さそうだ。
他にも食パンに鶏卵、牛乳、ベーコン、水などをカゴに詰め、レジで精算を済ませる。
個人で使うための最低限の食器類は自室に置いてあるので、明日の朝はベーコンエッグとトーストくらいは作れるだろう。
店の工事予定は、明日からピザ窯の設置。
組み立てに三日ほどかかる予定なので、その間は店にいなければいけない。
問題は薪を置く場所。ダンジョンの入口ができてしまったので、元々薪を置く場所にするつもりだったのが、できなくなってしまった。
店の前に犬矢来を設置することも考えていたが、諦めたほうが良さそうだ。






