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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第44章 お土産

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第438話

 ミミルの機嫌が直ったタイミングで、俺は厨房へと戻った。

 裏田君がトマトソースとボロネーゼソースの仕込みをしてくれていた。

 カレーでもそうだが、煮込んで作る料理はひと晩置いた方が味が落ち着く。今日のうちに仕込んでおけば、明日以降にいい感じの味になってくれる。

 3日後のレセプション、4日後のオープンに向けて準備は着々と進んでいる。


「他に何を予定していたっけ?」

「前日から仕込むのはカポナータとアランチーニ、トリッパの煮込み。当日はカチャトーラとラザニアくらいですね。あとは、オーナーが焼かはるピザくらいかと」


 一応、招待客だけを集めて行うレセプションに出す料理は相談して決めてある。


「スペイン料理は前日仕込むのがガスパチョくらいかな。他はピザとパン生地ってところか。田中君の方は任せると言ってあるけど、ティラミスとボネ、バスク風チーズケーキあたりかな」


 スペイン風プリンのカタラーナはご近所でも扱う店が多いので、ここは差別化を図るためにもうまく考えて欲しいところだ。


「そういや、さっき田中さんが言うてましたで。レセプションの参加者のお土産に焼き菓子はどうやろって」

「ん、さっきカウンターにいたときにそんな話はなかったんだけど。そうだな。いくつかお願いした方がいいか」


 記念品は別に用意している。だが、参加者は酒が振る舞われるレセプションに来るため自動車での出勤を控えたり、家庭で用意されている食事もいらないと言って来てくれている。そのぶん、ご家族に迷惑を掛けている――と、考えるとお土産を用意するのは悪いことではない。

 ビスコッティのような硬く焼いたものではなく、子どもが喜んで食べるような……フランス菓子で言うフィナンシェやマドレーヌ、パウンドケーキのようなものを1人あたり6個くらい、招待しているのは50人くらいなので、最大で300個か。それだけ作るにも型がないから無理だ。

 まあ、田中君も考えてくれているようだし、あとで何をつくるのか確認して決めた方が良いだろう。


 時計を見ると、17時少し前。

 営業開始後なら仕事終わりの人たちがやってくる時間帯だ。

 うちの店の立地条件からみて、土曜の昼から日曜の昼までの間は観光客が中心になるが、平日はオフィス街で働く人たちが主な客になると思っている。

 基本、火曜を定休日にするので月水木金の4日間の売上だけで十分(じゅうぶん)な利益が出るような状況が理想的だ。そのためには、うちの店の認知度を上げる必要がある。誰も店の存在や開業日を知らなければ店にくるはずもないからだ。


「裏田君、いまからチラシ配りしようかと思うんだがどうだろう?」

「ええと思いますよ。手伝います」

「じゃあ、田中君や岡田君、本宮君にもお願いしようか」

「いや、焼き菓子の量を考えたら田中さんはそっちに専念してもらった方がええんとちゃいます?」

「あ、そうだな。じゃあ、とりあえずチラシを取ってくるか」


 裏田君の反応を待つまでもなく、俺は2階の事務室へと移動した。机の引き出しの中に仕舞ってあるA6サイズのチラシを取り出した。

 右下隅に羅甸(らてん)という毛筆の文字が書いてあるだけの面が表。裏面には店の紹介と開業予定日、営業時間、住所、地図が書かれているとてもシンプルなチラシだ。開業前後の数日しか使えないチラシではなく、高品質な印刷と紙を使って1年近く配れることを前提に作ってある。

 とりあえず1000枚分を持って階段を下り、客席にあるテーブルの上に置いた。


「田中君、岡田君、本宮君。ちょっといいかな?」

「はい」


 声掛けすると、田中君が俺の方へと顔を向けて返事をした。田中君が代表して返事したという感じだ。まあ、全員が返事する必要はないが、客から声を掛けられたら岡田君、本宮君も返事するようにはして欲しい。


 俺が手招きすると、3人がテーブルの場所へとやってきた。

 チラシを配る前にバイト2人の研修状況を確認する。


「覚えてもらうことはひととおり説明が終わってると思っていいか?」

「はい、大丈夫です。もう少し練習できればええと思いますけど」

「岡田君と本宮君は、いまから2時間くらいの間、チラシ配りをしてもらおうと思うんだけど」

「そのあと練習できるんやったらええと思います。ね?」


 田中君が岡田君、本宮君に目くばせした。

 2人もすぐに頷き、異論がないことを示してくれた。


「それで、うちは?」

「裏田君から聞いたよ。田中君はレセプションに参加して下さった人たちのお土産を渡したらどうかって思ってるんだろう?」

「はい。お土産ですから、お子さんが喜びそうなものがええと思てます」

「残ってもいいが、50人分くらい必要だぞ?」

「そやったら、クッキーのようなお菓子かな。チャンベッリーネとか、リチャレッリ、カネストレッリ、テゴレかな。アモール・ポレンタもええかも」


 早速、田中君が何を作るか考えだした。いろいろと作りたいのは理解できるのだが、採算度外視というわけにはいかない。


「1つだけ条件をつけさせてくれるかな?」


 といってもそんなに難しいことじゃないはずだ。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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