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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第41章 北欧神話

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第407話

 食事を終えた頃には完全に日が暮れ、丸い月が周囲を照らしていた。

 第2層入口の祭壇は魔物が出ない安全地帯なので、月明かりに照らされた祭壇の上でコーヒーを飲みながら北欧神話を読む……というのもいいと思うのだが、急に天候が変って雨になるというようなことがあっては困る。

 だから、読書中に飲めるようにとコーヒーを淹れ、道具を片付けてから入口部屋へと下りた。


 昨夜と同様、丸太をひとつ立てた上にLEDランタンを置き、全体を照らすライトにしたら、首にリーディングライトをかけて簡易椅子に座って北欧神話を読み始めることにした。


 昨日、読み終えたのが世界樹ユグドラシルが登場し、9つの世界があったという話まで。

 エルムヘイムの神話にも九つの世界が登場し、それぞれの領域に小人族や巨人族が住んでいたのだろうとミミルは言っていた。


 本の内容は世界樹の話から始まった。

 世界樹には3つの大きな根があり、そのひとつがアースガルズのウルザンブルンという泉に伸び、ひとつは霜の巨人たちが住むヨツンヘイムのミーミルの泉へと伸びている。最後のひとつは闇と霜の世界であるニブルヘイムへと伸びていて、そこにいるニーズヘッグというドラゴンに根を齧られている。

 ミーミルの泉にはこの世の知識と知恵のすべてが隠されており、毎日この泉の水を飲んでいたミーミルは物知りだった。


〝賢者の泉〟


 俺が加護としてエルムヘイム共通言語Ⅲを授かったときにみた夢の話をしたとき、ミミルから出た言葉だ。

 実際に俺の記憶にも、泉の(ふち)に背の高い男が座っていたし、遠くに大きな木が見えて、その根が1本伸びてその泉に入っていた。

 確か、ミミルもダンジョンの加護を得る際にその泉に落ちて溺れ、水をたくさん飲んだようなことを言っていた。更に、こうも言っていた。


〝賢者の泉のことは……第3層の出口に書かれている〟


 言った後にニヤリとミミルが笑みをみせ、第3層の出口に行って自分の目で確かめるようにと言われたことを思い出す。


 北欧神話に書かれている内容と、第3層の出口部屋の壁にある古代エルム語で書かれた内容が酷似していれば、1000年以上前のゲルマン民族の大移動の際、北欧のどこかにダンジョンが現れ、エルムヘイムへと繋がっていた証拠のひとつになりそうだ。


 既に第2層の出口に書かれていたオウズフムラが、北欧神話に登場するアウズフムラと名称や見た目などが酷似していることは判明している。


 そうなると気になるのは第一層の出口に書かれていたことが気になってくる。

 確か、第1層は守護者がボルスティという巨大な猪で、出口部屋には平和と豊穣をもたらすイグナールという王の話と、金色のイノシシであるギレンボルスティの話が書かれていた。

 イグナールとギレンボルスティに似た存在が北欧神話に記述されているか、楽しみになってきた。


 北欧神話の本は、世界樹の中に住む生き物の話がある。

 まずはフレースヴェルグという鷲。そしてフレースヴェルグの嘴に留まっているというヴェズルフェルニルという鷹。フレースヴェルグとニーズヘッグの間を往復して悪口を運ぶラタトスクという栗鼠。樹皮や葉を食べるダーイン、ドヴァリン、ドゥネイル、ドゥラスロールの四頭の牡鹿。そして、雄鶏のヴィゾープニル……


「……グリンカムビ、か」


 確か、第2層の攻略中にテントに飛び込んできた鶏冠が金色のニワトリの名もグリンカンビ。同じ名前だ。

 ここまで似た名前や同じ名前が出てくる以上、エルムヘイムとダンジョン、北欧神話に深い関係があることは間違いない。1000年前のゲルマン民族の一部がダンジョンを超えてエルムヘイムに渡ったという証拠にするには弱いが、少なくとも交流があったということを示ことはできると思う。


〈ミミル、教えて欲しいことがあるんだが〉

〈……なんだ?〉


 語勢や発音だけでも少々横柄な感じで返事しているのがわかるのだが、やっていることが小学1年生用の漢字ドリルなので強い違和感を受ける。


〈エルムヘイムとチキュウの時間の流れは違うんだっけか?〉

〈うむ、エルムヘイムの方が概ね二倍の速度になるな〉

〈ってことは、チキュウの1000年はエルムヘイムで2000年か?〉

〈そのとおりだ。それがどうかしたか?〉


 ミミルの話からダンジョンが地球側に繋がっていた時期が1500年前のことだと仮定すると、エルムヘイムでは3000年が経っていることになる。いくらエルムが長命だといっても、その頃のことを知る者はいないだろう。


〈いや……それで最も長生きなエルムって何歳くらいだ?〉

〈エルムヘイムだけの年齢でいえば、平均で600歳。長命な者であれば1000年くらいは生きているはずだ〉

〈じゃあ、3000年前のことを見てきたエルムはいない、と思っていいんだな?〉

〈うむ、エルムではおらんが……王宮は違うかも知れん〉

〈……お、王宮?〉


 確か、フィオニスタ王国という国とイオニス帝国という国があったはずだ。フィオニスタ王国がミミルたちエルムの国。その国の王宮ってことは、王族とはまた違うのかな。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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