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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第41章 北欧神話

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第403話

オーディンたちはユミルの体をバラバラにして大地や山、海、川、天空を作った。日が経つとユミルの体が腐り、そこからずる賢くて嘘つきな黒い小人と、色白で美しく気立ての良い白い小人――妖精が生れた。オーディンは黒い小人を大地の下にある暗く冷たい場所へ、白い小人を大地と大空の中間の場所に住まわせた……と、書かれていた。


「――つまり、神が新たに2つの世界を作ったということか」


神話の本を読んだからと言って、すべてを覚えられるほど俺は賢くないのでメモを取った。

白い小人は妖精と書かれているので、これが北欧神話に登場するエルフに繋がっているのだろうことが想像できる。


「黒い小人かあ」と、呟きつつメモを取る。


先へと読み進めれば何か書かれているのかも知れないが、小人と言えばドワーフを思い出す。だが、()()()()と言われるとアニメやネット小説ではダークエルフのことを想起する。


俺はメモを書き終えて、続きを読んだ。


オーディンたちは自分たち神々が住む場所を作ることにし、アースガルドと名付けた。

ある日、3人の神が海辺に落ちていたトネリコの木から人間の男を作ってアスクと名付け、楡の木から人間の女を作ってエムブラと名付けた。3人の神は、そのまま人間を大地に住まわせることにした。


ここまでが創世神話になるだろうと思い、俺は要点をメモに取っていたので、まとめてみることにする。


  神は5人

  ユミルの死体から妖精が生れた

  三人の神が木から人間を作った

  男はトネリコの木、女は楡の木


  アースガルズ――神々が住む場所

  妖精が住む天空と大地の間の場所

  大地と呼ばれる人間が住む場所

  黒い小人が住む地下の暗く冷たい場所

  ムスペルヘイム――火の世界

  ヨツンヘイム――世界の果て

  ニブルヘイム――霜と氷の世界


ミミルの様子を見ると、1年生の漢字ドリルの1周目が終わったようだ。懸命に消しゴムを掛けている。


第2層へと出る階段の先に見える空はまだまだ暗い。


〈ちょっといってくる〉

〈……うむ〉


催してきたので俺は外に出て小用を済ませることにした。

階段を上り、祭壇のような作りになった場所に出る。


「そういや、前もこうして用を足したよな」


暗い草原に向けて用を足しながら、俺は呟いた。

ここの周囲には群れを形成したキュリクスが住んでいるが、祭壇の周辺は安全地帯になっているので、安心して小用を済ませた。


胸元あたりまである石段を登って祭壇の1番上に戻った。

ダンジョン内の時刻がわからないので周囲を確認してみたが、青黒い夜空にぶちまけられた星々が輝くばかりで、夜明けの気配は感じられなかった。

諦めて階段を下りて入口部屋に戻ると、ミミルは既に簡易ベッドの上で小さな背中をこちらに向け、スウスウという寝息を立てていた。

俺はひと息ついて、再び北欧神話の本を読みはじめた。


「何の前触れもなく、出てきたな……」


創生神話としては人類が生まれたところで終わっていたのだが、続きはいきなり世界樹であるユグドラシルが登場した。更には、世界が九つに分かれていることになっていた。


  アースガルズ――アース神族が住む世界

  ヴァナヘイム――ヴァナ神族が住む世界

  アルヴヘイム――エルフが暮らす世界

  ミッドガルド――人間が暮らす世界

  スヴァルトアルヴヘイム――黒い小人が暮らす世界 

  ムスペルヘイム――火、スルトがいた世界

  ヨツンヘイム――霜の巨人が住む世界

  ニブルヘル――死人の世界

  ニブルヘイム――霜と氷の世界


突然、ヴァナ神族と呼ばれる神々が登場するし、ニブルヘルという国が出てきて俺はまた混乱した。


「ニブルヘルは死人の国、ねえ……」


日本でも古事記には伊邪那美命が治める黄泉の国が登場するし、他にも天国と地獄、現世と幽世という考え方がある。

北欧神話に死者が行く場所が作られたとしても不思議ではない。


もう一方のヴァナヘイムとヴァナ神族だが、アース神族と仲が悪かったが、互いに人質を出すことで親交を深めたとある。北欧の神が広まることで、他の地にあった信仰を別の神として取り込んでいった名残なのだろう――と解説されていた。

以前、ゲルマン民族のことを調べたときに、フィンランドは昔からフィン族が住んでいたため、ゲルマン人とは違う信仰を持っていたと書かれていた。あくまでも俺の推測でしかないが、そのような他民族との交流を描いている可能性もあると思った。


ただ、俺が知りたいのはミミルたちの世界と北欧神話に関係があるかということだ。北欧神話を研究している人たちには悪いが、ヴァナ神族やニブルヘルのことは枝葉でしかない。

それよりも、北欧神話に登場する神々がエルムヘイムでも同様に神として扱われていれば、地球とエルムヘイムがダンジョンを介して繋がっていた時期があったことを証明するための鍵になるだろう。


続きは神々の話となるため、ここから先は明日にすることにして、俺も眠ることにした。


※ 参考図書:

「北欧の神話」 山室 静  ちくま学芸文庫

「エッダとサガ 北欧古典への案内」 谷口 幸男  新潮選書

「エッダ――古代北欧歌謡集」 谷口 幸男訳 新潮社

「北欧神話がわかる事典」 森瀬 繚 SBクリエイティヴ



この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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