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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第41章 北欧神話

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第402話

 パソコンは50インチの4Kディスプレイモニタでゲームをしても問題ないよう、ゲーミングパソコンというものにした。

 これで夜中に調べものをする場合でも事務所部屋に行く必要がなくなるので安心だ。


 メニュー作成している間、ミミルが暇そうにしていたので風呂を入れた。ミミルが上がってくる頃にはメニューの方はひととおり出来上がっていた。

 あとは単価を確認して金額などのチェックをするだけだ。


 ミミルと入れ替わりに風呂に入ると、ミミルと共にダンジョン第2層へと移動した。

 残念ながらダンジョン第2層は夜中だった。例によって第2層の月と星の位置では何時頃なのかわからない。


 いつものように入口部屋に2メートルほどの丸太を立て、そこにLEDランタンを置き、簡易ベッドと簡易テーブル、椅子を用意した。


「ミミル、そういえばこれ」と俺は言って、LEDリーディングライトを取り出した。手元を照らすには十分な光量がある首掛けタイプのものだ。据え置き型のリーディングライトもあり、どちらにするか悩んだが、首掛け型ならぼんやりとだが足元まで照らしてくれるので夜中などに用を済ませたいときにも使える。

 スイッチを入れて先端が光った状態のLEDリーディングライトをミミルの首に掛けた。


「おお、明るい」

「ここがスイッチで、指先で押すと消える。寝るときには首から外して消すんだぞ?」

「……ん、ありがとう」


 ミミルが俺を見上げて礼を言うと、椅子に座って簡易テーブルで漢字ドリルを始めた。


「どういたしまして」と言って、俺もリーディングライトを首に掛け、椅子に座った。今日届いた北欧神話の本を空間収納から取り出して開く。


 ネットでいろいろと探してみたが、ファンタジーとしての北欧神話はかなり混沌としていて、俺の求める内容は期待できなかった。俺が求める内容は、実際に北欧で語り継がれてきた神話をまとめたものだ。

 具体的にはスノッリ・ストゥルトンが編纂した「エッダ」と、スノッリが生れる前にアイスランドの学者、セームンドに編纂されたとされる「セームンドのエッダ」や「古エッダ」が対象になるらしい。


 北欧神話を読みはじめると、まずはその一貫性のなさに何度も思考が停止した。

 どうやら吟遊詩人という職業が実在した時代、歌という形で各地に散在し、語り継がれた神話や英雄伝説(サガ)を集めて編纂したものが始まりだから抜けている部分が多い。更に、その歌を日本語にしているから、更にわかりにくくなってしまっているのだと思う。

 普段、何かの書物を読むつもりで読むのではなく、部分単位で1つの物語だと割り切って読み始めた。


 創生神話らしく語られるムスペルヘイム(火炎で燃え上がる国)とニブルヘイム(氷と霜の世界)、ギンヌンガ(奈落)が存在した世界。ムスペルヘイムにはスルトを代表とする巨人が住まい、ニブルヘイムの氷からユミルとアウズフムラ、最初の神であるブーリが生れる。


〈ミミル、確か第2層の出口にある記述にあったのは……〉

〈オウズフムラという牝牛だ〉

〈そうそう、ありがとう〉


 ミミルは〈気にするな〉と言って、また漢字ドリルへと向き直った。

 俺にはオウズフムラの綴りがわからない。ルーン文字を読めないからだ。だが、その発音が北欧神話に登場するアウズフムラに酷似していることはすぐにわかった。

 それに、古代エルム語で〝母なる牛〟という意味であるとミミルは言っていた。ユミルに乳を与えた母なる存在と解釈すれば、オウズフムラとアウズフムラが同じものを指す可能性がでてきたと思う。


「これは大発見だな……」


 と呟き、俺は空間収納から取り出したメモ帳にその内容を記した。

 北欧神話と他の出口部屋に記されている内容が近ければ、「いまから千年以上前、エルムヘイムと地球がダンジョンで繋がっていた」という俺の考えを裏付けるものになる。

 そこから、「ダンジョンとは何か」や「誰がダンジョンを作ったのか」ということも判明していくだろう。


 俺はそのまま北欧神話を読み進めた。


 最初の神であるブーリが、男の子――ボルを生んだ。


「――ん? ブーリは男神であり、美丈夫だったんだよな?」


 だが、ブーリがボルを生んだと書いている。

 先を読むとユミルも脇の下や足の間から子を生んでいる。

 古事記を含めて神話ではよくあることなので、とりあえず「そんなものなんだろう」と、理屈で理解することを放棄することにした。


 続いて、ボルは巨人の女、ベストラと結婚し、オーディン、ヴィリ、ヴェーが生れた。

 また、「ベストラはどこから出てきたのだろう……」と、俺は思ったが考えても無駄なので諦めた。


 とにかく、この3人の神が、邪悪で乱暴だったユミルを殺した。

 ユミルの血で洪水が起こり、巨人のベルゲルミル夫妻は世界の果て、ヨツンヘイムへと逃げた。他のスルトの巨人は全滅した。

 ムスペルヘイムとニブルヘイムしかないはずの世界に突然現れたヨツンヘイムという地名に俺はまた混乱したが、とにかく先へと目を走らせた。


※ 参考図書:

「北欧の神話」 山室 静  ちくま学芸文庫

「エッダとサガ 北欧古典への案内」 谷口 幸男  新潮選書

「エッダ――古代北欧歌謡集」 谷口 幸男訳 新潮社

「北欧神話がわかる事典」 森瀬 繚 SBクリエイティヴ



この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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