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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第33章 ダンジョン第三層へ
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第327話

 出来上がったパニーニを食べるにあたり、いつものようにコーヒーを淹れるつもりなのだが、今回はミミルの分も一緒だ。

 これまで、ミミルはコーヒーの苦さを嫌って飲まないんじゃないかと思っていたが、カフェラテやカフェオレのように牛乳を使い、砂糖を入れれば平気なことがわかった。

 ある意味、日本の子どもたちと似たようなものだと思えばいいのだが、それを口にすると大変なことになるのは間違いない。


 さて、これまでダンジョン内でいつも使っているパーコレーターは1人用。

 中の(ざる)に挽いた豆をセットした状態で水を入れ、直接火にかけて()()()タイプの器具だ。

 煮出すので香りが飛んでしまうし、雑味も出てくるという短所があるのだが、メンテナンスが非常に簡単。アウトドアでは非常に重宝される。

 だが、今後は2人分作るとなると違う方法にしないといけない。


「ミミル、買ってきたキャンプ用品でまだ使ってないのがあっただろう?」

「……ん、出す?」

「ああ、お願いするよ」


 買ったはいいが、まだ使っていないキャンプ用品がずらりと並んでいく。ちょっと調子に乗って買いすぎたのかな。

 出て来た荷物を確認し、そこから1つの器具を取り出す。


「それ、なに?」

「これもコーヒーを抽出するための器具だよ」


 フレンチプレスという器具だ。

 見た目は紅茶で使うティープレスに似ていて、一応は紅茶に使用することもできる。使っている間に匂いやコーヒーオイルが残るので、紅茶にそれらが移ることを考えると専用にしておく方がいい。また、これでティープレスと同じように紅茶を淹れると、茶葉を絞り過ぎてしまうらしい。雑味が出てしまう。


 箱から器具を取り出し、魔法で水を作って埃や汚れをサッと洗い流しておく。ダンジョン内で細菌やウィルスは生存できないので、これくらいで問題ない。


「いろんな器具、ある?」

「うん。それぞれに良いところと、悪いところがあって、これが最高の淹れ方だ……なんてのはないみたいだけどな」


 結局は飲み手側の好みによって変わる。

 フレンチプレスはお湯を入れて抽出するという意味では、パーコレータのように香りが飛ぶこともないし、ペーパードリップのようにコーヒーオイルまで濾過してしまうことがない。

 ただ、カップの底に濾過されなかった粉が溜まる。飲み進めると濃くなっていくし、舌触りが気になるという人もいる。

 イタリア人はエスプレッソが1番だと言うし、喫茶店ではやはりサイフォンがいいと言う人もいる。粗挽き豆のネルドリップが1番という人、ペーパードリップが好きな人……本当に様々だ。


「何通りある?」

「そうだなあ、器具で分類すると10種類程度かな」


 抽出する器具という意味で行くと、エスプレッソ、マキネッタ、ネルドリップ、ペーパードリップ、フレンチプレス、エアプレス、クレバー、サイフォン、パーコレーター等がある。

 加えて最近はコールドブリューと呼ばれている水出しコーヒーもあるので、複雑になってくるよな。


 続いて鍋の中に水を生成して火にかけて沸騰させる。キャンプ用品は金属製の鍋なので、マイクロウェーブは使えない。

 籠の中に2人分のコーヒー豆を入れて、容器にセットしたらお湯を流し入れたら蓋を閉め、徐々に抽出されるコーヒーの様子を眺めつつ二つの金属製マグカップを用意する。

 一方はミミルが飲む分なので砂糖を3杯、牛乳を半分ほど入れておく。

 牛乳を入れて温めなおすためにも、マグカップくらいは陶器製にしておくべきだったと少し反省する。


「そういえば、砂糖はどうしてるんだ?」

「第4層……」

「日本語でなくてもいいぞ」

「……ん」


 ダンジョン内の魔物、植物はエルムヘイム共通言語で名付けられているのだから仕様がない。


〈いい言葉が思い浮かばなかった。ホニング・バンバスという植物が第4層に生えている。それを切ると、中から甘い汁が出てくるのでそれを煮詰めて作る〉

〈ふうん。それはどんな植物なんだ?〉

〈こんな感じだな〉


 ミミルがノートとペンを取り出して、とてもザックリとした絵を描いてくれた。

 それでも特徴はしっかりと捉えているので、ひと目ですぐに理解できる。葉の形状は異なるが、幹の部分は竹だ。


〈節の中に甘い汁が詰まっている〉

〈それはまた便利だな〉


 天然のガムシロップ――といったところだろうか。

 竹のようなものなのなら、あの独特の香りがついていたりするのかも知れない。ロバシンを使ってトマトソースのようなものを作るにしても、酸味が強いなら砂糖を入れたいところなのだが……竹の匂いが付くのは嬉しくない。


 空間収納から黒い竹筒のようなものをミミルが取り出し、俺に差し出した。


「これ、ダンジョンの砂糖」

「ありがとう、味見しても?」

「……ん、いい」


 中に入っているのは少し黄色みを帯びた白い粉。

 そのまま器を寝かせて左手の上に少量を出し、舐めてみる。

 ふわりと柔らかな食感で、スッと舌の上に溶けていく。色味といい、味といい、和三盆糖のような味だ。


「美味い砂糖だな」

「……ん」


 短く返事をするミミルの顔はどこか誇らしげだった。


本当にコーヒーの淹れ方は好みがあるので、これが最高の淹れ方だ……などとは言えませんね。

学生時代、デパートの食器売り場でバイトをしたことがあって、そこにコーヒー用品も扱っていました。そこで読まされた本には「粗挽きネルドリップこそ至高」みたいな書き方がされていて、煮出すタイプのパーコレーターとサイフォンは美味しくないとありました。

しばらくそれを信じていましたが、エスプレッソで目が覚めましたね。


最近はステンレス製のコーヒーフィルターでドリップする方法を使っています。

お湯が沸騰してから少し冷ましてから淹れると美味しいです。


この物語はフィクションであり、実在の人物・地名・団体等とは一切関係ありません。

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