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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第3!章 エルムとは
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第307話

 昼食を終え、4人で店に戻った。

 近くの店のランチタイムは終わっているので、看板を見て参考にするということもできないからだ。

 他にも、田中君がパンの二次発酵を気にしてソワソワしているというのもあったりする。


「で、田中君はミミルと何をつくるんだ?」


 店の近くまで戻ってきて、材料を買いに行かなければならないことを思い出したのだ。


「エスプレッソマシンがあるし、ティラミスとかやろか?」

「ちらみす?」


 自分も手伝うことになって、気になるのだろう。

 慣れない言葉だから上手く発音できないのも仕様がない。


()()()()()……やで。チーズケーキの仲間かな」

「ティ、ラミス……ティラミス」

「じゃあ、足りないのはサヴォイアルディとマスカルポーネ、ココアパウダー、グラニュー糖かな?」

「僕が買うてきましょか?」


 昨日、裏田君が卵を買ってきてくれたのがあるはずだ。

 マスカルポーネチーズはミミルの空間収納に入っていたと思うが手元にメモがない。

 裏田君に買いに行ってもらうのはいいが、明日の昼の賄いを兼ねて作る生パスタの材料も買わないといけない。キロ単位の小麦粉やオリーブオイルだ。

 先日買い込んでいた小麦粉は1キロしか買っていない。

 業者に頼むのはこのあと粗い原価計算などをしたあとになるので、とりあえず明日、明後日分くらいの食材は必要になる。

 相当量の荷物になるのだが、それを裏田君に買って帰ってこいというのは流石に忍びない。


「いや、俺とミミルで買ってくる。他に必要なものはあるかい?」

「明日から昼の賄いを始めるんやったら、パスタ用、パン用の小麦粉が要りますね。トマトの水煮缶、ツナ、アンチョビとかも欲しいですね……」

「田中君にパンを任せるとして、裏田君は明日、明後日の賄いを何にするか考えて、あとで教えてくれ。合わせて買い込んでくる」

「はい、わかりました」


 ランチ用の賄いだけじゃなく、ドルチェに必要な材料もあるなら買っておけばいいだろう。


「田中君は、他のドルチェの試作に必要な材料があれば裏田君に伝えてくれるか?」

「はい。イタリア系はパンナコッタ、ボネ、ネッチ、ズッパ・イングレーゼ、ラッタイオーロ、トルタ・カプレーゼ、デリツィア・アル・リモーネ、パロッツォ……」


 田中君がポケットからメモを取り出し、考えて来たメニューの数々を並べていく。


「できるだけ共通材料で作れるものにして、アレコレと仕入れが増えないように考えてくれないか?」

「あ、はい。わかりました」

「あと、客席側の酒類、ソフトドリンクやコーヒー豆の在庫管理をお願いしたい。方法は……」


 裏田君にチラリと目を向けると、無言で頷いてくれた。

 頼もしい男だ。


「裏田君に教わってくれ」

「はい、よろしくお願いします」


 小さく頭を下げる田中君に、裏田君は「よろしく」と軽く返す。

 料理の世界では後輩にあたる田中君から見ても、頼りになる先輩という感じだろう。


「とりあえず、明日、明後日くらいの分は買ってくる。ミミルは連れていくから、スイーツは戻ってからで頼む」

「ええ、大丈夫です」


 さっきからギュッと俺の左手を握ったままのミミルを見ているせいか、田中君が見つめる視線が暖かい。


 時計を見ると、14時半。

 16時にベランダ工事の業者がやってくるので、それまでには戻っておかないといけない。二階に設置する以上、ベランダに入ってもらう必要があるからな。


「じゃあ、行ってくる。ミミル、行くぞ」

「――ん」

「いってらっしゃい」

「お早うお帰りやす」


 2人に見送られて買い物へと出る。

 行先は近所のデパートにある食品売り場だ。


 デパートに到着すると、製菓用の食材を扱う専門の売り場で必要なものをカゴの中へと放り込んでいく。

 小麦粉は強力粉、準強力粉、薄力粉。特に強力粉はイタリア産のものを選んでおく。それに加えて、オリーブオイル、トマトの水煮缶、アンチョビ、ツナ缶……重たいものばかりだ。

 裏田君に買いに行かせなかったのはそれが理由だ。

 ミミルがいれば、空間収納に荷物を入れてもらえば楽だからな。


「しょーへい、たくさん買う。荷物、どうする?」

「ああ、ミミルに運んでもらうつもりだよ」


 カートにカゴを2個載せて押しているが、結構な重さになっている。恐らく、20キロは超えているだろう。

 加えてタマネギ、セロリ、ニンジンなどの香味野菜は買いそろえないといけないし、昨日のうちに裏田君が買ってきてくれた食材だけでは足りないので追加していく。


〈やはり、しょーへいには空間収納の技能が必要だな。今夜から第3層でラウン探しをした方がいい〉


 ダンジョンの話は日本語でできないので、ミミルがエルムヘイム共通言語で話しかけてきた。


〈滅多に見つからないし、技能が手に入るかは運なんだろう?〉

〈私は学校に通うことになっているからな。毎回、しょーへいの買い物に付き合うわけにはいかんだろう?〉

〈ああ、確かにそうだな……〉


 毎日買い物があるわけじゃないが、ミミルがいないと駄目なのはやはり都合が悪いよなあ……。


お早うお帰りやす :[共]早く帰ってきてくださいね

「いってらっしゃい」と同じように使われます。



この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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