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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第29章 メニュー
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第289話

 この街で某タイヤメーカーの格付けで三ツ星を獲っているような日本料理の名店だと、夜のコースは数万円はする。

 だが、そのような店でも昼のランチタイムに出る弁当は5,000円程度に抑えられている。理由は2人で10,000円というわかりやすい金額設定というのもあるが、一般的な企業であれば会議費として経費処理できるというのも大きい。高級料亭の料理を比較的手軽な料金で試すことができる――それがお弁当だ。

 俺の店で言えば、それがランチメニューに該当するわけだ。


 では今考えているメニューは、うちの夜の料理を試してみようと思える内容になっているだろうか?

 答えは〝NO〟だ。何も具体的に考えていなかったからな。


〝ランチメニューは夜の営業につながるものにする〟


 メモ帳に文字にして残す。

 夜のメニューはこのあとに考えるとして、具体的にどのように繋ぐかということを考えなければいけない。


 本来なら「どのように(How)」は「ランチメニューとして出す」という選択肢もあったのだが、今となっては違ってくる。


〝どのようにして夜の営業につなげるか〟


 セットの前菜のような感じで、夜に出す料理の試食のようなことができればいいんじゃないだろうか?

 例えば、ピンチョスのような一口サイズの料理を用意しておき、組み合わせて前菜にするのはどうだろう。

 例えば、じゃがいものトルティージャ、ブロッコリーとカリフラワーのアーリオ・オーリオ、カジョス、カラマーレス・フリートス、ポルケッタ、ポロ・アラ・ディアボラ、タリアータ・ディ・マンゾ、アランチーニ、アルポンティガス等々……小出しでも出せる料理はいろいろある。

 流石にアヒージョやバーニャカウダを出すのは難しいが、問題はないと思う。


 料理に応じて組み合わせパターンを作るか、お客さんが選ぶようにするか……日替わりで組み合わせを変えてみたりするのもいいだろう。いや、日替わりにすることで、翌日の前菜を楽しみにしてくれるお客さんがいるかも知れない。そうして気に入った味ができれば夜の料理を楽しみに来てくれるはずだ。

 逆に夜にしか食べられない料理があることで、夜の料理を楽しみにしてくれるお客さんもいるかも知れない。


〝日替わりで3品くらいのピンチョス(ひと口料理)をランチにつけ、夜の集客につなげる〟


 なかなかいい案だと思う。うちのランチタイム名物になってくれるはずだ。

 いまから組み合わせ等を考えるだけで楽しくて仕方がない。


 続いて夜のメニューを考えようとしたところ、ミミルが風呂から戻ってきた。

 ランチメニューを考えることに没頭している間に一時間くらいが経過していたということだ。


「風呂でた」

「じゃあ、俺も入ってくるよ」


 言って、俺はウォークインクローゼットの中に入り。自分の着替えを取り出すと風呂へと向かった。


 10分後、俺は髪を洗い(なが)らまた考え事をしていた。

 裏田君と話をして、俺の身に何かあったときに店を任せる話をすることができたし、厨房側の仕入れを任せることもできた。それ以上の成果は、ダンジョンのこと、ミミルのことを正直に伝えることもできたことだろう。

 今日の課題はすべてクリアできたってことだ。


「……順調、順調!」


 世の中、どんなことでも自分の思い通りになるなんてことは滅多にないと思う。

 だが、今日の俺はやけに物事を上手く運べている気がする。


 身体も洗い終えて湯船に浸かる。

 アルコールが入った身体で風呂に入るというのは不健康だと思われるかも知れないが、ダンジョンに最適化された身体のせいか、とても醒め易い気がする。ミミルが風呂に入っている間にアルコールが抜けた感じだ。


 体育会系で先輩後輩、上下関係に関しては自分自身にも厳しい裏田君だからこそ、今日は上手くいったのだろう。

 逆に女性という立場からすると、()()()()ということに女性はとても敏感だ。明日、出勤してくる田中君の方が扱いは難しいだろう。


 俺は手先はいいのだが、人間関係という意味ではとても不器用だ。女性とお付き合いしたことなど、マリア以外にない。

 普通に話すことはできるのだが、つい必要以上に距離感を詰めないようにしてしまう。


 幼い頃から頭ひとつ大きかった俺は、ちょっとしたことで人に怪我をさせてしまうことが多かった。特に、女の子は簡単に怪我をする。俺が投げたボールを避けて転んで足を骨折し、蹴ったサッカーボールが顔に当たっただけで鼻血を出した。

 誤解の無いように言っておくが、女の子が転んだのは体育の授業で行うドッジボールの最中のことだったし、サッカーボールが当たったも授業中のこと。ゴールキックしたときに女子が前を横切ったのが原因だ。

 ただ、そういうことが何度もあって、俺の心理には女性は脆いものだという意識が植え付けられてしまったのだろう。

 中学に進む頃には女の子に接すること自体が怖くなり、俺は常に女性とは1歩引いて接する――と言うか、距離を置くようになっていた。


 そんな俺が明日は田中君にミミルを紹介する。

 裏田君が出勤してくるとは言え、いろいろと心配だなあ。

【料理の名前】

 ・カジョス(Callos)

  スペイン風のトリッパのトマト煮込み

 ・タリアータ・ディ・マンゾ(Tagliata di Manzo)

  イタリア風のローストビーフ

 ・カラマーレス・フリートス(Calamares Fritos)

  スペイン風イカのフリット

 ・ポロ・アラ・ディアボラ(Pollo alla diavola)

  [伊]鶏肉の小悪魔風

 ・アルポンティガス(Albondigas)

  スペイン風肉団子。イタリア風はポルペッティーニ(Polpettini)

  イタリア風は粉チーズを練りこむところが違います。


この物語はフィクションであり、実在の人物・地名・団体等とは一切関係ありません。

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