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第280話

 暫く裏田君に向かって話をしていたが、居住まいを正してミミルへと問いかける。


「ミミル、ダンジョンの出入口っていうのは埋めることができるのかい?」

「砂に埋まることある。でも、砂はうごく」

「ああ、砂漠や砂丘って形が変わるからなあ。土で埋まることはあるかな?」

「ある。山崩れる」


 砂漠の土砂崩れ等でダンジョンの入口が埋もれることがある…ってことだろうな。では、埋もれたダンジョンの出入口はどうなるのだろう。


「埋もれた出入口はどうなるんだ?」

「時間かける。道できる」

「そうなのか……じゃあ、ダメだな」


 どれくらいの時間がかかるのかは不明だが、埋めたところで勝手に通路ができてしまうようでは意味がない。


「当然、破壊はできないんだよな?」

「いや、破壊とかどないしてしますのん?」

「それもそうか……」


 重機を運び込んでダンジョンを破壊しようなんてことを考えたら、まず重機を奥庭に入れなければいけない。店を壊してからでないとできないので、ダンジョンの出入口を破壊するという選択肢は無しだ。


「出入口、自己再生」

「やはりなあ……」


 ダンジョンの管理者は出口の場所を指定することができる。

 出口を指定してしまえばダンジョンが勝手に出口部屋を作るのだが、本来なら時間をかけて地上につながる通路や階段、出口まで作るのだろう。

 そういう仕組みなら、出口や出口部屋を破壊されてもダンジョンが自己再生するというのも納得できる。

 これはあくまでも俺の憶測だが、うちの庭の場合はミミルがツルハシで穴を開けたのだが、繋がった先を急いで確認する必要があったからだろう。

 何をしたところで再生されてしまうなら、ダンジョンの中に籠って出入口を埋めてしまうという手段は全く採用できないってことだ。


「まあ、答えを急ぐこともないと思うし、考えておくよ」


 いまの見た目のまま年齢をごまかし続けるとすれば、何歳くらいまでバレることなくやっていけるだろう。

 俺の場合、髭を生やすというのも年齢をごまかす1つの方法かも知れないし、(わざ)と髪を白く染めるというのもいいかも知れない。それなら肌艶のいい60歳――くらいまではごまかせるような気がする。最近の美容技術はすごいからな。


 だが、ミミルの方はどうだろう。

 身長が伸びず、体格的に女性的な丸みを帯びた成長もないミミルのことを考えると、1年ということはないが、2年もすれば「おかしい」と周囲は気が付くだろう。

 しかし、成人女性でもミミルくらいの身長という方はいる。ミミルがアルビノであることを考えると、「体質」ということでごまかすこともできるかもしれない。それでも、5年もすればいつまでも子どものままの体型をしているミミルを見て誰も不審に思わないなんてことはないと思う。


 まるで家の鍵をどこに置いたかわからなくなった時のように、いろんなパターンを想像するような感覚。何度も同じところを探し、最後に外出して戻ってきたときの記憶を辿っておいた場所を探す。それでも見つからない……。

 ああでもない、こうでもないと頭の中を思考が埋め尽くしていく。


「うーん、どうなんだろう……」


 俺とミミルの「不老」をいつまで隠せるかということを考えていると、いろんな要素が頭に浮かび上がってきて、ついぽつりと言葉を漏らしてしまう。


「――ん?」

「どないしはりましたん?」


 俺の言葉にミミルと裏田君が心配そうに声を掛けてくれる。


「あ、いや、なんでもない……」


 探し物をしているときに独り言が出るのは、思考が幼児化しているからだ――なんて話を大学教授か誰かが言っていたのを思い出す。

 リンゴなどを使って足し算をさせるとき、子どもが両手の指を使って声を出して計算するのをよく見る。子どもは脳が未発達のため、手や身体を動かして考えようとするからだ。

 これは大人でも同様で、強いストレスを感じると無意識のうちに独り言を出すことで退行現象を起こし、脳への負担を減少させている。つまり、いま俺の脳はかなりストレスと高い負荷を受けているってことだ。


 これは一度、じっくりと時間をかけて整理しなければいけない問題だと思う。


「そろそろ他所も開店時間ですよって、挨拶回り、行きまへんか?」

「おう、そうだな。じゃあ、着替えるか。ミミルも二階へ行って着替えるぞ」

「ん、わかった」


 ミミルは何をしに出掛けるのかわかっていないようだが、外に出られるというだけで嬉しそうだ。


 俺を先頭に、ミミル、裏田君の3人で2階へと移動する。

 俺とミミルは自宅へと戻り、裏田君は更衣室で着替えだ。


「じゃあ、着替えが終わったら玄関で集合ってことで」

「はい、タイムカードは?」

「要らないかな。役員になるなら給料じゃなくて役員報酬になるから固定制だし」

「へえ……そうなんや」


 この後、挨拶回りで訪れる店の中で食事しながらでも給与のことなどは(しっか)りと話しておく必要がありそうだな……。


この物語はフィクションであり、実在の人物・地名・団体等とは一切関係ありません。

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