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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第26章 平安言葉
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第256話

 早速調べ物をするために俺は事務所へと移動した。

 またパソコンの電源を投入し、ブラウザを開く。


〝古文 読み方〟


 キーワードを入れて検索しても、どちらかというとお受験向けな解説ばかりが並ぶ。

 だが、俺が知りたいのは、奈良時代、平安時代などで人々が実際に話していた「話し言葉」だ。


〝古文 話し方〟


 今度は同じような疑問を持った人たちが質問箱と言われるサイトに投稿した結果がいくつか表示された。


〝平安時代は古文の授業に出てくるような話し方をしていたのでしょうか?〟


 この質問に対する返事がとても興味深い。

 大学教授や著名な言語学者が記したウェブサイトの情報では、平安時代の人たちは発音したことをそのまま文字に起こしていたらしい。とはいえ、現代の「ハヒフヘホ」という発音は、平安時代初期までは「パピプペポ」、平安中期から後期になって「ファフィフフェフォ」になったという。

 これはサ行も同様で、現代では「サシスセソ」だが、平安時代は「スァスィススェスォ」となるそうだ。


 これはミミルが風呂から出てきたら、神社で聞いた言葉を話してもらい、紙に書き出して適用してみると面白そうだ。


「これはかなり進みそうな気がするな」


 いま調べたことをメモにとりながら、ひとり呟く。


 何を言っていたかがわかれば、ミミルが話せるようになった事との関係もわかるかも知れない。


 だが、これだけではなんだか心許(こころもと)ないので、他にも参考になることが書かれたウェブサイトがないか確認する。


 目に入ったのは――〝なぜ古文には濁音がないのか?〟


 これも興味深い。


 確かに、枕草子や小倉百人一首などには濁音の表記がない。


 気になったので記事を読んでみると、万葉仮名には濁音を表す文字があったが、平安時代になって平仮名、片仮名が登場しても、共通して用いられる濁音専用の文字がなかったということらしい。

 明治時代の法律の条文は漢字と片仮名で、濁音表記がなかったらしく、漢字と平仮名、濁音表記が用いられるのは昭和に入ってからのこと。

 明治になって教育勅語が発せられ、富国強兵政策がとられることで、全国的に同レベルの教育ができるようになった。そして現在の濁音表記が共通的に用いられるようになった……ということのようだ。

 とはいえ、ミミルが話してくれた「謎の声」の内容には濁音が含まれていたはずだ。


 他にも色んな情報を求めて検索してみるが、20分ほどで止めた。なかなか良い検索条件が思い浮かばないので、同じような結果ばかり出てくるので仕方がない。


 椅子に座ったまま、両手を組んで背伸びをする。

 そんなに長く座っていないのに、なんだかとても気持ち良くて呻くような声が出てしまう。ミミルに見られていたらまた「変なやつだ」などと言われそうだ。


 あと30分くらいでミミルが風呂から出てくるだろう。


〝エルフ耳〟


 新たなキーワードで検索を掛ける。

 表示されたのは、コスプレのための付け耳の紹介や、エルフの耳がなぜ尖った形をしていると認識されているのか――といったことばかりだ。


 確か、モデルと女優をしている人がいたはず……。


〝エルフ耳 モデル〟


 他にもSF映画に登場する宇宙人が同じような耳をしていたと思うが、あれはメイクのはずだ。


 相変わらずコスプレ用の付け耳の紹介が検索結果として表示されるが、女優やモデルとして活躍している女性が出てきた。

 ホビットやエルフ、ドワーフ、ゴブリン、オーク等が登場する映画のエルフに憧れて美容整形した人の写真なども表示されるのだが、彼女の耳は生まれつきのものだ。


 これでミミルの耳を見られても、ダーウィン結節が残っていて、エルフのような尖った耳をしている人が他にもいることが説明できる。


 メモ用紙のページを捲り、新たにそのモデルの名前を書き留めておき、次の調べ物に移る。


〝ルーン文字〟


 文字を入力して検索を掛け、詳しく解説しているサイトを探して中身を確認していく。


 ――呪術や儀式などに用いられてきたと言われる文字だが、実際にはゲルマン民族の間で日常的に用いられていた。キリスト教の布教によってラテン文字に置き換わり、現在では殆ど使用されていない――


 地球にダンジョンが繋がり、ゲルマン民族がエルムヘイムへと渡った。エルムヘイム共通言語は彼らがエルムヘイムに渡り、ルーン文字と共に広めた言語と言える。

 ということは、ルーン文字が使われていなくても、一部の地域ではエルムヘイム共通言語に似た言葉が使われている可能性があるということだ。


〝ゲルマン人〟


 ――現在のアイスランド、アングロ・サクソン、オランダ、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ノルウェーなどの祖先――


 ゲルマン民族から派生したフランク人がフランク王国をつくり、分裂した西フランク王国が後にフランスになったとも書かれている。つまり、北欧、西欧の多くの国に影響している民族ということになる。

 そういう意味ではミミルの出身地は北欧、西欧あたりにしておくのが無難ということになる。


「困ったなあ……」


 娘だということにするにも、俺が暮らしていたのはイタリアとスペイン……南欧なんだよな。


この物語はフィクションであり、実在の人物・地名・団体等とは一切関係ありません。

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