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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第2章 いざダンジョン

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ミミル視点 第18話

 ダンジョン内でツノウサギから出た土の魔石。

 これが5個あれば、技能カードを作ることができる。

 技能カードとは、魔力を通すことで所有者の氏名、年齢、職業、加護、所有技能とその習熟度などを表示する魔道具だ。その性質から、エルムヘイムでは身分証としても使用されている。


 しょーへいと共にツノウサギを狩って、5個目を手に入れると我々はしょーへいが生まれ育った世界――私にとっての異世界へと戻った。ここでしょーへいはダンジョンの内部とこの異世界との間で時間差があることに気が付いたようだ。

 実際、エルムヘイムの1日は、このダンジョンの第1層では2日、第2層では4日になる。

 だが、この異世界では何日になるのかは私は知らない。

 私がダンジョンの1層で10日いたとして、その後に異世界に戻ってしょーへいに何日経ったかを聞けばわかるだろうが、いまはしょーへいと共に潜っていたのだから仕方ない。


「しょーへい、さっきの土の魔石を出せ」

『なに、する?』

「まぁ、見ておけ。見ればわかる」


 しょーへいから土の魔石を受け取ると、空間収納から技能カードを作る魔道具を出す。


 そもそも技能カードは私の発明品なのだが、国家レベルで身分証明に使うことになって慌てて大量生産するための魔道具まで作らされたのだ。

 もちろん、これも私の発明品だ。


 魔道具が石を砕くようなガラガラという音を立てながら小刻みに震えると、次第に振動もなくなって自動的に蓋が開く。

 中から出てくるのは標準的な赤銅色のカード。

 これに本人の血液を垂らすことで、本人だけが身分証明として使えるように所有者登録される。

 だが、しょーへいが自分の部屋でないと指を傷つけるのが嫌だというので二階にある部屋へと戻ることになった。

 まったく、わがままな奴め……。


 早速だが、できあがったばかりのカードを見せてもらうことにしよう。


   ――◆◇◆――


 氏名:高辻 将平

 種別:ヒト

 所属:地球 日本国

 年齢:三六歳

 職業:無職


 技能:

 料理Ⅳ、目利き(肉Ⅳ)(魚Ⅲ)(野菜Ⅳ)、包丁術Ⅳ、狩猟Ⅰ、解体Ⅱ、皮革加工Ⅰ、短剣Ⅰ、弓術Ⅱ、四則演算


 加護:波操作(音波、電磁波)


   ――◆◇◆――


 わ、若いな……これは私の年齢を聞いて驚いたのも理解できる。

 それにしても、この若さで料理技能と包丁術、目利きの技能習熟度が高い。店の準備をしているところを見ると、生粋の料理人ということなのだろうな。

 他に、狩猟や解体、皮革加工などを技能として保有しているところを見ると、そういう経験ができる場所にいたということだ。それらを専門にやっていればもっと習熟度が高いはずだからな。


『まもの、だんじょん、でる?』

「――?」


 カードをしょーへいに返すと、そんな質問が飛んできた。

 魔物はダンジョンにでる。当然だと思うのだがなぜそんな質問をする?

 いや、また翻訳ができていないのだろう。


『まもの、ふえる。あふれる、ある?』


 なるほど、そういう質問だったのだな。

 ダンジョンの出入口は転移石で繋がっているため、転移石を使えるだけの能力が魔物に備わっていなければできない。そのため、基本的には魔物が出てくることはないと考えている。


「まぁ、仕組みのことを考えるとダンジョンから溢れて出てくることはないだろう。それに、ここは魔素が極端に薄いからな――魔物は耐えきれずに霧散するだろうよ」


 しょーへいは何か安心したように息を吐いた。

 確かに魔物たちが溢れ出てくることがあれば、このショーヘイの店は蹂躙され、破壊し尽くされるというのは想像できるからな。


『なまえ、ミミル、よぶ、いい?』

「いいぞ。エルムヘイムでもミミルと呼ばれていたからな」

『ミミル、よぶ』


 それが私の名前なんだから他に呼びようがないだろうに……。

 何か返事をするよりも、この場合は首肯するに止めておく方がよかろう。


 すると、しょーへいが妙に真剣な表情をして私の両肩を抑えてきた。

 おいおい、何をするつもりだ?


『ミミル、もと、もどる、ない?』

「うん、そうだな……戻ることはできない……な」


 いつも妹と一緒にいたからな……。

 時には鬱陶しいとさえ思うこともあったが、こうして離れ離れになると寂しいものだ。

 何の前触れもなく、突然別れがやってきたのだからしようがないのだが……。


 フレイヤは大丈夫だろうか。

 私が帰ってこないので、いま頃は泣きちらしているだろうな……。


『ここ、ほし、くらす、ほか、ない』

「そうだな」


 当然だ。戻るところがないのだから、この星で生きていくしか無いだろう。


『ダンジョン、ここ、いえ、くらす?』


 いいのか?

 私はこの庭に大きな穴を開けた張本人。

 それに、私はしょーへいから見れば異世界人で――でも、いまはしょーへいを頼るしか無いのか……。この世界の住人が全てしょーへいのようにお人よしとは限らんしな。


「そうだな……しかたない、一緒に暮らしてやろうではないか」


 む、また頭を撫でられたぞ。

 子どもではないと何度も言っておろう――でも、世話になるなら少しは我慢してやる。


 ――ん?


 しょーへいがとても白い紙の束を取り出して何かを書き出したぞ。

 くそ、文字が読めんのは難儀だな……何を書いてるんだ?


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