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第248話

 エスカレーターを上がり、文具売り場に到着したとき、ミミルの目にはどう映ったのだろう。

 いろいろな定規、鋏やカッターナイフ、鮮やかな色鉛筆、クレヨン、水彩絵の具に油揚絵の具、パステルなどが所狭しと……だが整然と並んでいる。


「しょーへい、ここは……」

「文房具売り場だよ。一部、皮細工の道具などもある」

「おおー」


 少し不安だったが、「文房具」という言葉が通じるようでよかった。堅苦しい説明しか脳裏に浮かばなかったので、正直少し焦ったのだが、取り越し苦労だったようだ。


「……かわざいく、みたい」

「先に目的を済ませてからだぞ」

「……ん」


 そういえばダンジョン用の装備品に皮を使っているし、ミミルのブーツも皮でできている。以前、ダンジョン第2層でミミルが皮を液に漬け込んでいるのを見たが、また自作するものがあるのだろう。


 だがいまは文房具が優先だ。

 最初にノート売り場へとやってくる。


「……いろいろある」

「ミミルがどう使うかで選ぶといいよ」


 ノートはA罫、B罫、方眼罫、無地……いろいろと種類があるが、用途に応じて何を選ぶかは変わる。


「図を描いて、文字も書くなら方眼罫がいいだろうし、絵を描くことが多いのなら無地も便利だと思う。文字ばかり並べて書くなら、このノートがいい」


 それぞれのノートを手に持って説明する。

 ミミルもいまの説明で理解したのか、方眼罫と無地の2つを手にとった。


 方眼罫は5ミリ間隔で網目に線が入っているので、比較的精密に図形を描きやすい。一方、無地なら絵を描いた後に罫線が気にならないというメリットがある。


 ミミルが小さく唸るような声をあげている。

 そこまで悩むようなら、2つとも買ってしまえばいいだろう。別に目が飛び出るような値段でもない、


「魔物の絵を描くなら無地だな」

「あ……」


 言って無地のノートを右手で取り上げると、ミミルが小さく声を漏らした。だが、気にせず方眼罫の方にも手を伸ばす。


「科学知識をつけるために勉強するなら方眼罫だ」


 続けて方眼罫のノートを取り上げ、纏めて買い物かごに入れてしまう。


「両方、ミミルには必要だ」

「……いい?」

「ケーキより安いからな。それより、次はペンだ」


 ミミルの「ぐむっ……」という小さな声が聞こえるが、そのまま手を引いて、筆記具売り場へと移動する。

 昔の人のように最初は鉛筆で……なんてことは言わないが、書いて消せるシャープペンシルを使うのがいいと思う。


「これもいろいろ。どれがいい?」

「持ってみて握り易いこと、疲れ(にく)いことなんだが……こればっかりは買ってみないとわからないよな」


 基本的に鉛筆、たばこ、箸などは直径が8mm程度に作られている。それが握り易く、手に馴染みやすい大きさだからだ。

 シャープペンシル、ボールペンなどもその大きさに作られているものが多い。後は重さや、滑り止めの有無など「好み」で決まってくると言ってもいい。

 例えば製図用のシャープペンシルがいいと言う人も入れば、筆圧が弱いので重さで書きたいという人もいる。


「この紙に試し書きしてみて、書き易い、持ち易いものを選べばいいよ」

「……ん」


 早速何本か手に取り、ミミルに渡して試し書きをさせる。

 ミミルのペンの持ち方は少し変わっているが、問題なく文字は書けている。書いているのはルーン文字だが、パソコンのフォントにも採用されているくらいだから問題ないだろう。


「……どれもおなじ。さき、やわらかいのがいい」

「重いものより、軽いほうがいいか?」


 硬いというなら、芯を柔らかめのものに変えればいい。基本的に店頭に並んでいるものだと標準的なHBが入っているはずだ。


 ミミルは視線を宙に彷徨わせ、直ぐに返事をする。


「……ん、かるいもの」

「じゃあ、これかな?」


 値段は安いが、軽くて製図にも使える先の部分が長いものを選んだ。定規を使って線を引いたりするにもこちらの方が使いやすいはずだ。


 あとは消しゴムと定規、念の為に鋏やカッターナイフ等も揃えておく。いまは必要なくても、必要になったときに無くて騒がれても困るからな。


「しょーへい、これも欲しい」

「色鉛筆か、こんなに色が必要かい?」

「……ん、必要」


 そういえば小学校の頃って、何色セットの色鉛筆を持っているかで競ったりしたものだが……いまは500色セットなんかもあるんだな。

 ただ、ミミルが指さしたのは70色以上入ったセット。

 色数が多いのはいいが、恐らく均等に色を使うことはない。よく使う色は使って減っていくが、使わない色はずっと残り続ける。それに、水性色鉛筆なら重ね塗りしたり、水で薄めたりすれば色数はそこまで必要ないはずだ。


「こっちは水で溶ける。色を混ぜることもできるよ?」

「……む、色たくさん。これがいい」

「これで何を描くんだ?」

「……ながめる」


 まあ、こんなにカラフルな色鉛筆を眺めるのも楽しいのは否定しない。たぶん、インテリアにすることを目的に購入する人もいるだろう。

 無地のノートも買うことだし、やはりミミルに魔物図鑑を描いてもらってもいいかも知れない。


 さて、あとは漢字ドリルだな。


この物語はフィクションであり、実在の人物・地名・団体等とは一切関係ありません。

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