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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第13章 街の暮らし
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第125話

 まだ殆どが営業開始前の静かな商店街をミミルと2人で歩く。

 こんな朝から観光客が何組か歩いているのを見るが、昼間の賑わいのことを考えると少し寂しい。


 突き当りまで進むと、大きな石造りの鳥居が見える。


〈これは……〉

〈ああ、建物の中に刺さってるよな〉


 明らかに鳥居の木鼻(きばな)の部分までファーストフード店の二階部分に食い込んでいる。


〈この先はニホンの神様を祀った場所で、この門のようなものは俗世との境界を示すものらしい。昔はここまでが神聖な場所だったってことだな〉


 鳥居の柱のところに立ってミミルに説明する。

 この錦天満宮の境内を削って道路が作られたため、その道路向こうに鳥居が残った。その後、鳥居の柱を基準に錦小路の道幅を決めたものだから、(ぬき)島木(しまぎ)笠木(かさぎ)のはみ出す部分が他人の土地に()み出すことになってしまったそうだ。

 その後、建物を何度も建て替えているが、鳥居を削るなど罰が当たるとして食い込ませて建てているらしい。


〈なるほど。ところでチキュウの神はどのような姿なのだ?〉

〈宗教はいろいろあるから説明が大変なんだが……〉


 神様の話は正直難しいのでしたくない。そんなに詳しいわけでもないからな。でもまあ、この神社のことくらいは話しておこう。


〈とりあえず、この神様はニホンの学問の神様と言われる人を祀ったジンジャだよ。もうすぐ春祭りがあるはずだ〉

〈学問の神か……〉


 ミミルは「学問の神様」に興味があるようだが、詳しい話を始めるとキリがない。この神社がここに建てられたのは安土桃山時代とされているが、起源を辿(たど)れば1000年前にまで話が遡ることになるので流石に面倒臭い。


 それに春祭りで思い出したが、今日は葵祭が行われるはずだ。

 賀茂御祖神社(下鴨神社)と賀茂別雷神社(上賀茂神社)の例祭で千五百年前から続く歴史あるお祭りで、今日は平安装束を着た人たちが8kmの距離を練り歩く「路頭の儀」が行われる。

 ミミルに平安時代の服装をみせるのも悪くないのだが、残念ながら10時過ぎてから開催されるはずだ。今年は諦めよう。


 そんなことを考えながら歩いていると、沢山の提灯がぶら下がった門前に到着していた。残念ながら開門は八時らしい。


〈開門はまだ1時間ほど先だな……〉

〈む、そうなのか。残念だ。学問の神様に会ってみたかったが……〉


 (およ)そ神様や御神体などお目にかかることはできないのだが、寺のお参り、神社への参拝の仕方はしっかりと教えておかないといけないからな。また別の日にミミルを散歩に連れ出すことにしよう。

 ただ、神様のことを細かく説明するのは遠慮したい。


〈じゃ、こっちに行くぞ〉


 錦天満宮を正面に見て左に曲がる。昼時になると大勢の人が集まる新京極商店街だが、まだ朝早いのでどこも営業していない。喫茶店がそろそろ営業開始の準備を始めようとしている程度だ。

 今からお目当てのお店に向かえばちょうどいい時間になるだろう。


 殆ど人通りのない商店街をミミルと歩く。

 時折興味を引いたものを見つけては「あれ、なに?」と問いかけてくるので、都度答える。


「あれ、なに?」

「これは寺」


 誓願寺だ。

 枕草子を記した清少納言、和泉式部日記を記した和泉式部が晩年を過ごした寺である。

 このことを説明してもミミルにはわからないだろうな。いずれ日本の和歌や古文を読めるようになったら教えてやればいいか。

 いつになるかわからないが……。


〈テラとはなんだ?〉

〈テラはニホンで広まっている宗教の施設だよ〉

〈どんな神を信仰している?〉

〈神を信仰する宗教ではないな〉


 歩きながらミミルの質問に答えていく。

 仏教は何を信仰しているかと聞かれても俺には答えられないな。

 とりあえず、地球の宗教にはどんなものがあるか……というのを教えるか。


〈チキュウにはユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、ブッ教などがある。テラはブッ教の施設だ〉

〈ほう……〉

〈あと、ニホンにはヤオヨロズの神を信仰するシントウという宗教もある。そのシントウの神を祀るのがジンジャ――さっきの建物がそれだ〉

〈複雑だな〉

〈ああ、そうなんだよ〉


 それぞれの宗教にも宗派のようなものがあるからな。そこまで説明をしていたらキリがない。

 更には、その土地に定着している違う宗教もあるんだ。


〈ここを左に曲がるぞ〉

〈了解だ〉


 突き当り……三条通りを左に曲がり、また直進する。

 途中、巨大な動くカニを看板に据え付けた店があって、またミミルに「あれ、なに」と言われたが、「客の目をひくために作った看板だ」と答えておいた。


〈変わった発想をする店主がおるものだな〉

〈そうだな……〉


 ミミルが俺のことをジッと見つめる。

 もちろん俺の店に動く看板などをつけるつもりは一切ないのだが、疑われているのだろうか。


 そこからもミミルの質問に答えながら10分ほど歩き続けると、目指していた喫茶店へと到着した。


将平の実家は舞台となっている街の近くにあったので、将平は街の歴史をある程度学んでいるので、ある程度の質問ならミミルに答えられます。


白玉ぜんざい様よりミミルのファンアートをいただきました。

 

挿絵(By みてみん)


白玉ぜんざい様、ありがとうございました。

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