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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 番外 ミミル視点 第1章
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ミミル視点 第7話

 ダンジョンの出口を指しているのに、それが出口と気が付かないということは、この異世界にはダンジョンは存在しなかったのだろう。

 つまり、ダンジョンそのものの説明から入らねばなるまい。そのうえで、なぜここに出口ができたのかを話せばいい。

 ただ、普通に話をしたところでこうも言葉が通じないというのも不便だ。仕方がないが、身振り手振りも加えて。


「これが私の生まれた世界がある宇宙だとする」


 両手で大きく円を描く。これなら解るだろう。

 次は隣に……。


「こっちは他の宇宙」


 大きく円を描きながら説明する。

 離れた2つの大きな円を描いたのだから、これくらいは解るはずだ。

 宙に描いているので見えるもので残ってはいないが、先ほどの円の間くらいに両手を伸ばす。


「宇宙と宇宙の間には異次元空間が広がっている。

 この異次元にも私がいた世界や、この世界にあるような資源がある。

 鉄であり、銅、金や銀などの鉱物。

 植物や動物がいて、それを獲ることができる」


 しょーへいは真面目に話を聞いているようだ。

 目つきは真剣そのものだし、私の話を理解しようとする姿勢が感じられる。

 他にも色々と教えてやるのも悪くはないな。


『しょうじょ、ばあさん……』

「むぅ……いま、変なこと考えただろう!」


 人が一所懸命に説明しているというのに、いったいどういうつもりだ?

 それに、少女なのか、年寄りだと思っているのかどっちなのかよくわからん表現をしおって……。


『いや、へん、ない。へん、よぶ、ない……する、おもう』


 また変な変換をされているようだ。

 しょーへいの言うことが理解できない……まあ、本題とは違うところだ。文句を言うなら後にしよう。


「真面目に聞け!」


 ビシッと指をさして言ってやった。

 いや、討伐隊のメンバーに命令するときよりも力強く言えたかも知れない。


 私の気迫が籠った言葉と指さしで、しょーへいも足が竦んだことだろう。


 さて、話を戻そう。


 右腕を直角に曲げ、胸の高さに上げて話す。


「異次元の中には他の世界を模した場所があり、私たちはそれを層と呼んでいる」


 その右腕に重ねるように左腕を出し……


「層と層をつないだもの……」


 交互に積み重なっていることが解るよう、手を動かして説明する。


「私たちは、この多層構造になったもの、全体を、ダンジョンと呼んでいる」

『ダンジョン!?』


 しょーへいが目を瞠っている。ダンジョンと聞いて驚いたのだろう。

 それに、彼が確認するかのように声をあげたので、私は頷いて肯定しておいた。


 首肯してみて思ったが、これで肯定の意味が通じるのだろうか?

 しょーへいは別に変な顔をしていないので、通じているとは思うのだが……。


 これで簡単だがダンジョンの説明は終えたはずだ。例えばどんな層があって、どんな魔物がいるのか、鉱物や採集できる植物はどんなのがあるか……それはまた別の機会に教えるとしよう。


「そして、ここの中がダンジョンの出口だ」


 穴を指さしてそう告げる。

 あまり細かなことを説明しても、仕方がない……実際に入ってもらえば済むことだ。


『なぜ、でぐち、できる?』


 なるほど、この世界にダンジョンがないのであれば、ここにダンジョンの出口ができた理由を説明しないと納得はしないだろう。

 だが困ったことに、その説明をするには時間がかかる。


「話が長くなるが、いいのか?」


 先ほどから念話を使った話をしているが、一向に翻訳の精度があがらない。

 お互いに辿々しい言葉で話をしているので、時間がかかるだろう。


『なか、はなし、きく』


 しょーへいが建物の中へと案内してくれるようだ。

 正直、この場所が熱いだとか寒いだとかと感じているわけではないが、空を見ると茜色に変わりつつあるようだ。

 暗いところで話をするのは野暮というものだろう。


『ミミル、ほこり。“シャワー”よごれ、おとす。あと、はなす』


 “シャワー”とはなんだ?


「その“シャワー”とは……なんだ?」

『ここ、ふろ。ほこり、よごれ、おとす――いい?』


 なんと、風呂がここにあるというのか。

 お、思わず顔がにやけてしまうぞ。


「風呂は5日も入っていなかったのだ。すごくありがたい」


 そうだ、先にダンジョンの入口を移動しておくべきだ。

 5日ぶりの風呂だからな……全身を隈なく磨きあげたい気分だ。


 となると、いままで忘れていたが、入口をこちらの出口に統合しなければならんだろう。

 このまま入口を移動しなければフレイヤやティル、エオリアがまたダンジョンに入って来かねん。

 そうなれば、いつまで経ってもこのダンジョンをエルムヘイムから分離できないからな。


 よし、急いでダンジョンの設定を変更せねば……。


 穴に飛び込むと、真っ直ぐに転移石に触れて、ダンジョン管理室へと移動した。そして、少し急ぎ足でテーブルに向かって歩きだす。

 ダンジョン管理室のテーブルにある黒い石を指で触れるだけでまたメニューが現れると、黄色い光に触れる。


 出口の設定ではドジを踏んだが、今回はエルムヘイムにある入口と異世界にある出口を統合するよう、設定を変更した。


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