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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 番外 ミミル視点 第1章
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ミミル視点 第1話

 ダンジョン第21層目。

 森の中にある街の入口から見えるのは、たての屋根、やりの壁でできた城。

 そこに繋がる広い石畳の路上で、私たちフィオニスタ王国特命討伐隊は魔物と戦っている。



〈そのまま頭を抑えろ!〉

〈おう!〉


 5人の中で唯一、大きな盾を持つ男――ティルが私の指示に応じて高く飛び上がり、魔物を盾で叩き伏せる。

 大盾で叩きつけられるように地面に落とされたのはよろいまとった有翼ゆうよくの女――このダンジョンの守護者だ。


 私が指揮を取り、他の4人がそれに従って敵に当たっているが、既に2時間が経過しており、こちらの精神的、肉体的消耗も激しい。

 ただ、さすがは守護者、とてもしぶといのだ……。


 既にいくつかのダンジョンを踏破してきた我々は、その度にこの魔物と戦っている。

 いや、見た目は似ているが、それぞれが異なる守護者なのだろう。まず、槍や剣、弓など得物えものが違う。最初に戦った守護者は剣を得物とし、次に戦った守護者は弓を得物にしていた。槍を持ち、目にも留まらぬ突きを繰り出す3番目の守護者、2本の曲剣きょくけんを持ってうように戦う4番目の守護者……。

 次に、装備が異なる。まぁ、これは得物が変われば装備も変わるので仕方が無い気もする。

 そして、この5番目のダンジョンの守護者は身長よりも大きな斧槍ふそうを得物にしていて、その力強さはこれまでに戦った中でも一番だろう。


 だが、力強さだけがこの守護者の特徴ではない。


 横薙よこなぎして斧刃おのばを振るったかと思えば、次は刺先しせん石突いしづきを使った連続突き。突きの最後に鉤爪かぎづめをつかった肩や肘の引っ掛け。これらが、高度を生かした急降下や滑空かっくうからのヒット・アンド・アウェイの形で襲いかかってくる。

 大振りな動きに細かな動き、頭脳的な動きが随所ずいしょに散りばめられていて、実に厄介やっかいだ。


 ただ、やはり斧刃を使った横薙ぎや振り下ろしなどは動きが大きく、そこにわずかなすきが生まれる。

 いまも、魔物が大きく横にいだ直後、弓使いのローネが放った矢が魔物のひじに突き刺さる。


 追い詰めるたびに高く舞い上がられ、体勢を整えさせる余裕を与えるわけにはいかない。

 そこに、大きく跳ねて斧槍の斧刃をかわしたティルが真上から魔物の頭に大盾を叩きつけた。


「ギャッ!」


 魔物は顔面から地面に落ちて、悲鳴のような声をあげる。

 その隙を逃さぬよう、双剣士そうけんしのエオリアが猫人族の素早さを生かして一瞬で魔物の背後に回り込み、翼の付け根を切り裂いた。もう右側の翼は皮1枚で根本に繋がっているという状態。いくら守護者でも、もう舞い上がることはできないだろう。


 その様子を見て、私も魔力を即時に練り上げ、真空の刃を飛ばす。狙いは残った翼の付け根だ。

 音もなく飛ぶ真空の刃は、右翼の根本を切られた痛みに耐える守護者に向かって飛び、左翼を根元から切り飛ばす。


「ギャウッ!!」


 視覚や聴覚では認識できない真空の刃は、痛みさえも感じさせることがない。

 ただ、切断場所からは血が噴水のように吹き出し、あたりを血で染め上げていく。


〈いきますわ!〉


 最後に妹のフレイヤが自慢の剣――ウォルフレイヴを一閃。

 守護者の首をね飛ばした。


〈さすが剣姫ね、剣で簡単に首を刎ねるんだから〉


 ローネがフレイヤを褒める。


〈いいえ、放っておいても死んでた相手です。姉さまの風刃が翼を切り飛ばして、すぐに失血死させていたと思いますもの。

 ねぇ、姉さま?〉


 フレイヤは双子の妹とはいえ、姉贔屓あねびいきが過ぎる。

 私も褒められて嫌な気はしないが、今のは皆の連携が良かったから倒すことができた。

 それぞれが、それぞれにできる最善を尽くした結果だ。


〈いや、エオリアが右翼側を斬りつけたのも、ローネが肘の隙間に矢を打ち込んだのも、ティルが斧を上にかわして真上から盾を叩きつけて地面に落としたことも全部素晴らしかった。

 皆の動きが完璧だったからこそ上手くいった。

 みんな、ありがとう〉


 ニコリと微笑んで皆に礼を言うと、それぞれが照れたように頬や後頭部をき、うつむいてみたり、ちゅうを見上げてみたり……どうも、照れ隠しに忙しいようだ。


 さて、ダンジョンの中の生き物は魔素を元に作られた魔物。守護者であってもそれは同じだ。

 魔素で作られた身体が一定期間維持されれば部分的に実体化し、それが肉や骨、牙などの部位になって残ることもあるが、基本は分解されて魔素へと戻る。

 この守護者も数秒ほどで分解されて、魔素に戻って霧散していく。


〈おや?〉


 鍵に気がついたのはティル。

 不思議そうに鍵に近づくと、手甲しゅこうめた太い指で器用に小さな鍵を拾い上げる。


〈なぁ、守護者が転送鍵とは別の鍵みたいなものを残したぞ〉

〈なに? 見せてみろ〉


 ティルに手渡された鍵は、金色でずしりと重い。恐らく、ふんだんに金が使われたものだろう。

 形状は、特に絢爛豪華けんらんごうかというわけではなく、ただ金色の金属を棒状に伸ばして曲げて作ったものといった感じ。もちろん、ブレードの部分には歯がついていて、そこには〝Ⅲ〟と何やら文字らしきものが彫り込まれている。

 これまで4つのダンジョンを踏破とうはしているが、その中では守護者が残したことがないアイテムだ。

 今後もダンジョンを踏破していけば謎は解けるかもしれないが、我々の使命はそもそもダンジョン踏破ではない。

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よろしくお願いします。




※ ミミルの口調が偉そうに見えるのは、ミミルが異世界では「偉い人」だからです。

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