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怖い話11【問いかけ】1000文字以内

作者: 雨間一晴

「ねえ、帰ろうよ。冬の夜中に心霊スポットで撮った写真なんて、価値ないよ……」


「なんだよ、怖いのか?先に車に戻ってても良いんだぞ?」


「もう、いじわる!さっさと撮って帰ろ。このトンネル?」


 目の前には、大きなトンネルが口を開けていた。こけが所々生えていて、一つのオレンジ色の街灯に照れされている。

 彼は携帯電話を取り出して、私たち二人とトンネルが画面に入るように、トンネルに背を向けて自撮りを始めた。


「もうちょっと近くに寄って、入らないよ」


「くっつきたいだけでしょ」


「あれ?」


 私と彼の顔が黄色い枠で囲まれる。携帯電話が顔と認識して、ピントを合わせてくれる機能だ。


 私たちの後ろ、トンネルの中央、何も無い空間に黄色い枠が現れた。小さな枠が、どんどん拡大されていく。


「近付いてきてる!やばい!走れ!」


 ピピ


「それは面白い質問ですね」


「え!」


 走っている手に握ったままの、携帯電話の音声アシストが喋り出した。何かを聞くと答えてくれる機能だ。携帯電話に話しかける声など聞こえなかった。画面に話しかけた内容が表示されている。


『なんでここに来たの』


「おいおいおい!どういう事だよ!」


「そんなの分かんないよ!」


 何も考えずに走り続けた。後ろに気配を感じる、確実に何かが来ている。音声アシストが反応する距離、かなり近くに居たのかもしれない。


 急に気配が無くなり、肩が軽くなったような気がして、その場に崩れるように座り込んだ。


「もう何なのよ!なんであんな遠くに車停めたのよ!」


「仕方ないだろ!あそこのコンビニが一番近いんだから!」


「待って、誰か来てる」


「なあ。なんか、おかしくねえか?」


 トンネルが無い方向から、誰かが手を振りながら近づいてくる。街灯の逆光でよく見えない。


「警察かも!助けてもらおうよ!」


「そ、そうだな。おーい!」


 会話出来る距離まで近付いたが、黒い野球帽を深く被っていて顔がよく見えず、口元だけが見える。


「あの!助けて下さい!」


「ねえ、この人、なんか変じゃない?」


 その男性は、冬なのに黒い半袖の汚れたTシャツと、所々が敗れたジーパンだった。よく見ると首を吊ったような紫色のアザがある。


 血色の悪い男性の口元が動いたが、何も聞こえない。私たちは動けずに固まり、静まり返っていた。


 ピピ


「すみません、よくわかりません」


 携帯電話の機械音声が響いた。恐る恐る画面を見ると、こう書かれてあった。


『なんでここに来たの』

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