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異世界転生~神に気に入られた彼はミリタリーで異世界に日の丸を掲げる~  作者: 鈴木颯手
第五章 皇歴7年~ハンラット大陸への上陸~
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第四十七話

No Side

 日本帝国において全権力を持つ鹿島良太総統の妻である稲荷輝夜が第一子を無事に出産したという情報は瞬く間に国中を駆け巡った。

 鹿島良太の能力で誕生した臣民達は無条件に喜び、ガルムンド帝国との戦争が近いことから暗くなりつつあった表情に笑顔と光が戻ってきた。特に、最前線と言えるシアーリス半島の駐屯軍の士気は多いに上がっており「ガルムンド帝国が攻めてきても追い返してやる!」と豪語する者まで現れる程だった。

 しかし、臣民以外の旧パララルカ王国民の態度は違っていた。良太の子供が生まれたという事は日本帝国による統治が今後も続くという事を意味していた。繁栄していた祖国を圧倒的な力で滅ぼされ、日本帝国民となった彼らの心境は推して知るべしだった。


 そんな風に秋津洲で表面上はお祝いムードになっている中、ガルムンド帝国では国内を掌握した宰相とグランハムは軍事拡大を行っていた。後退した前線の押し上げに反感を持っている将校の更迭や捕縛、処刑などと言った事を行う必要がありそれらの行動に忙殺されていた。


「南東方面軍司令アブラエルはこちらに従うと言ってきていますが南西方面軍は聖オクシデント法王国と密約を交わした様です。恐らく、その周辺で独立するつもりだと思われます」

「アブラエルに攻撃をさせろ。こちらからも兵を送り徹底的に叩き潰せ」

「ループル公国で離反の動きがあります。インテガリア公国はこちらに従うと大公自らが宣言しました」

「西部方面軍に対応させろ。最悪の場合、ループル大公の入れ替えも許可する」

「了解しました」


 次々と入って来る報告にグランハムは素早く対応していく。クーデター以来起きていた問題も少しづつ、だが確実に減っていた。そして、急を要する報告を捌ききったグランハムは近くで控えているズーク公爵に問いかけた。


「ズーク公爵、日本帝国の情報は入ったか?」

「勿論です。奴らはパララルカ王国を完全に滅ぼしシアーリス半島を掌握していました」

「何と? 確かあそこには我らを何度も退けた将軍がいたようだが……」

「どうやらアルバ島から逃げる時には行方不明になっていたようです。恐らく捕まったか、殺されたか……」

「成程な。敵はあの戦術家を降す実力は持っていると思った方がよさそうだな。……軍の規模は?」

「新興国らしく低いですな。シアーリス半島に展開している軍勢は五万以下、何やら国境付近で防壁を建造している様で詳しい情報を得る事が出来ていません」

「だがシアーリス半島にまで日本帝国はやってきている。船の建造技術は持っていると想定した方が良いか……」


 脳内でグランハムは日本帝国をどうするかを考え始めた時、ズーク公爵がもう一つの情報を言った事でそれは止まる。


「いいえ、どういう経緯か分かりませんがシードラ王国は日本帝国と友好関係にあるようです。もしかしたらシードラ王国の手を借りた可能性もあります」

「日本帝国の力は小さいがシードラ王国の手を借りたおかげでここまでこれたという訳か? 虎の威を借りる狐ではないか。いや、もしかしたら日本帝国はシードラ王国の属国の可能性もあるな」

「その様な事をシードラ王国が行う利点はあるのでしょうか?」

「あるだろう。分からないのか?」


 本気で分かっていない様子のズーク公爵にグランハムは冷たく告げる。


「我らと敵対する為だろう。日本帝国を育て我らへと当て馬とする。シードラ王国はこちらに付く代わりに技術なり武器なりをもらう……。商人国家らしい、姑息な手だ」

「な、成程……。ではすぐにでもシードラ王国の外交官を出頭させましょう。友好国という事で彼らは比較て自由に動く事が出来ています。その間に何かしらの工作を行っている可能性もあります」

「そうだな。直ぐに兵を向かわせろ。抵抗するような殺しても構わん」

「はっ!」


 ズーク公爵は部下を呼び寄せ指示を出していく。その姿を眺めながらグランハムは心の中で呟いた。


「(シードラ王国と日本帝国。貴様等がどんな姑息な手を使おうとも我がガルムンド帝国は世界最強の国家である。真正面から貴様等を粉砕してやろう。その日を楽しみにしておくがいい)」


 グランハムの言葉で日本帝国のみならずシードラ王国にもガルムンド帝国の魔の手が少しづつ近づいているのだった。







??? Side

 入隊して早数か月、ここでの生活は充実している。入隊希望者は少ないがその分教員役の上官に教えてもらえる頻度が高い。やる気と才能がある人間ならこの状況はまさに最適と言える。俺はそうではない為多少は辛いがな。


「おーい! ゼルキオー!」

「……ん?」


 後方から大きな声で呼ばれた為、俺は振り向く。ゼルキオは本名ではないがここではそう名乗っている。自分の名前として違和感ない様になるまで時間がかかったよ。

 俺を呼んだのは同期の松井弘(まつい ひろむ)だ。あまり成績は優秀とは言えないが臣民の一人らしく総統閣下に対して絶大の忠誠を誓っている人物だ。


「教官が用事出来たから次の講義は自習だってよ」

「そうか。分かった。教えてくれてありがとう」

「いいって事よ! 困ったときはお互い様だろ!」


 ……ここの生活は本当に充実している。このまま永住してもいいかもしれないと思ってしまう程に。

 だが、俺には大事な使命がある。ここに永住なんてできないし場合によっては彼らを裏切る事になるだろうからな。


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