第四十二話 裁判
Taruto Side
パララルカ王国を滅ぼした日本帝国、その帝都で僕たちは裁かれる事になるという。十中八九処刑されると思うしなんで裁く必要があるのかは分からないけどね。
ただ、そんな国だから帝都には興味があった。きっと華やかで幻想的な都市なのだろう。
「これが、日本帝国の帝都……」
そして、僕が日本帝国の帝都ヤマトに到着して目に飛び込んできた光景はお世辞にも帝都とは思えない都市の姿だった。活気はあるようだけど王都にも総督府にも劣る都市の規模だ。とてもあの日本帝国の帝都とは思えなかった。
そんな風に思っていると僕たちは帝都の一角に連れて来られた。そこには日本帝国の兵士たちが沢山おりその後ろには一般人と思われる人たちが眺めていた。
「総統閣下に敬礼!」
兵士たちが一人の男に敬礼した。見た目は僕と変わらないが周りの反応を見る限り彼がこの国の王なのだろう。建物の中ではなく外で行われているが総統という人物は立派な椅子に座った。
「では、裁判を始めようか。対象はパララルカ王国国王パルザ二世、第三王子タルト、宰相メルヘム。そして、アクラ・ベル・ブレストラッパー」
「え……」
その言葉に僕は驚いた。よくよく見ればこの場所には既に先客がいてそれはなんと日本帝国を倒すべく出陣し、そのまま行方不明となっていたアクラ将軍だった。厳重に縛られた状態で座らされていて日本帝国が彼女を警戒しているのが分かる。確かにこの場なら確実に彼女が一番の武力を持っているだろうな。
そんな事を思っていると裁判が始まった。最初は父上である国王だ。
「被告パルザ二世は国民への威圧や恐喝に始まり……」
語られた内容はでっち上げと言えるような内容のものばかりだった。しかし、この場において僕たちを擁護してくれる人は誰もいない。何しろこの裁判は僕たちを殺すためのものだろうから。
そして次々と罪状が述べられていった。僕に至っては権力を行使して平民の女性を無理やり襲ったとまで言われてしまった。僕に、そんな事が出来るだけの権力なんてある筈ないのにね。
「……以上の事を以てパルザ二世、宰相メルヘムは処刑。第三王子タルト、アクラ・ベル・ブレストラッパーには50年の強制労働を命ずるものとする! 総統閣下、宜しいですね?」
「勿論だ。o……、私はこの判決を認可する」
こうして僕たちの裁判は終了した。父上と宰相はこの裏手に作られた絞首刑用の処刑台に連れて行かれた。僕とアクラ将軍もその様子を見守る事となった。
「パルザ二世、何か最後に言い残す事はあるか?」
「……」
父上はその言葉に何も答えずにぶつぶつと何かを呟いている。結局、父上はアルバ島を脱出してから一度も正気に戻る事は無かった。……良い父親とは言えなかったけど肉親が目の前で死んでいく光景は自然と涙が出てくる。
「……何もなさそうだな。よし! これより処刑を執行する! 執行!」
……さよなら、父上。来世では攻めて穏やかな人生を送ってください。
僕は床が抜け首に縄が絞まり呆気なく死んでいった父上にそう呟くのだった。
Ryouta Side
パララルカ王国国王パルザ二世の処刑を終え、次は宰相の番となる。国王は心を病んでしまったのかこちらには一切に意識を向けずにずっと何かを呟いていた。それは死ぬ直前まで続いたが漸く静かになった。
しかし、宰相はまさに”悪役”と呼ぶにふさわしい煩さだった。
「き、貴様! このワシを処刑するなど何様だ!」
「くっ! 抵抗するな!」
「ワシはパララルカ王国の宰相だぞ! 貴様等のような野蛮な民族に殺されていい人間はない!」
「おい! 誰か猿轡を用意しろ!」
「ぬぐぅ! 放せ! 放すのだ!」
このように延々と喚き散らしていて周囲の呆れと嘲笑を買っている。俺もここまで醜い人間は初めて見たかもしれない。ちょっと、いや大分頼りなかった担任もここまで醜い姿を見せた事は無かったぞ。
「んーっ! んーっ!」
「よし、これで良いな。では! これより宰相メルヘムの処刑を行う! 執行!」
「んーーーーーーっ!!!!!」
宰相は最後まで抵抗していたが両手両足を縛られた上に口には猿轡、目は布で隠された状態ではまともな抵抗も出来なかったようだ。宰相は何かを叫びながら処刑が執行されこの世を去っていった。
その後、簡易的だが戦争裁判は滞りなく終了した。大分無理やりな内容になってしまったがパララルカ王国を終わらせるためには必要な事だと思っている。とは言え全ての王族を一斉に処刑すれば反乱がおきる可能性もあるからな。タルト第三王子には強制労働という形で終わらせた。50年と半世紀にしたがそこまで長く働く事は無いだろう。というか今の状態だと強制労働を行うような事は無い。なので牢獄で監禁という形になるだろう。
「パララルカ王国が降伏した事で領土は大陸にまで伸びた。そろそろ彼の大国との戦争の可能性も考えないとな」
俺はそう呟くとガルムンド帝国の対応を想定し始めるのだった。




