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第三十二話 バルグラット内戦

No Side

 輝夜の妊娠が発覚し良太は臣民、国民に向けて大々的に発表した。臣民たちは喜び国民たちも事実上の君主の妻が妊娠したという事を祝うと評してお祭り騒ぎを起こした。別に問題はなかったため良太も特に咎める事はせずにむしろ推奨した。

 ガルムンド帝国との外交は順調に進み遂に国交樹立へと至った。日本帝国はまさに順調に国家として成長し始めていた。


 一方で、大陸西部に位置するバルグラットでは二人の王族が中心となってクーデターが発生していた。発生当初は大した勢力でもなく国政を担う議会は直ぐに鎮圧できると高を括っていた。しかし、反乱軍は瞬く間に勢力を伸ばしていき僅かひと月で互いの勢力は逆転していた。当初はバルグラットと反乱軍と呼ばれていた名称も”議会派”と”改革派”と変わるくらいには反乱軍、改革派の勢いは増していた。

 議会派は未だ首都を領有していたがそれ以外の主要都市は改革派の手に落ち次々と降伏していった。そんな改革派は議会派に止めを刺すべく三万の兵を率いて首都へと侵攻を開始した。それに対して議会派も四万の兵を差し向けた。


挿絵(By みてみん)


 議会派の総大将であるトレストスは両翼を広げるような陣形を組み対応した。対する改革派は一転突破を狙った陣形を組んだ。


「敵は”鶴翼”、こちらは”魚鱗”か。これじゃ三方ヶ原の戦と同じだな」

「だけどあれとは違ってこちらが少数だよ? 勝てるの?」

「当たり前だろ? でなきゃ態々主力を使って進軍したりなんてしないさ」


 改革派のトップ、皇大和と皇武蔵は本陣にて話し合っていた。二人はバルグラットの王族であったがクーデターに際して名前を変えていた。


「先頭の三千は俺達にとって切り札と言える部隊だ。彼らを信じよう」

「……そうだね。分かったよ」


 陣形を作った両軍の戦いは改革派の動きから始まった。改革派の五つの部隊総出でトレストスのいる本陣に向かって行く。それを待ち構えるのは中央軍七千と両翼の兵たちである。七千の軍勢は全員が重装歩兵であり騎馬の突進すら防ぎとめる防御力を誇る者達である。そんな彼らを倒そうと一人の男が飛び出る。線上にいるとは思えないほど軽装備の彼は右手で握り拳を作ると重装歩兵の最前列に打ち込んだ。


「ハァっ!」

「ふん! そんな攻撃が通用するわk……」


 重装歩兵の一人が打ち込んできた男を馬鹿にしたような口調で侮るが瞬間に訪れた肉すら破壊する衝撃に即死する。更に彼らが着こんでいた鎧は粉状に消滅していく。一瞬で百人以上が行動不能となった重装歩兵は混乱に陥るがそこを付く様に後からやってきた三千の兵士たちが襲い掛かる。


「くっ! 態勢を立て直すのだ!」

「……させんよ」


 混乱を静めようとした指揮官がそう叫ぶと同時にその頭部が吹き飛ぶ。それを行った男は頭部のなくなった死体の後ろでぼそりと呟いた。

 他にも人間とは思えない動きをする約十名(・・・)によって重装歩兵が混乱をきたし、死体へと変わっていく。あっという間に味方が殲滅されていく様子はトレストスのいる本陣からでも確認できた。


「馬鹿な……! 敵兵がこれほど精強とは……」

「将軍! 両翼が敵の妨害を受け包囲が出来ません!」

「何だと!?」


 トレストスが両翼を確認すれば敵の部隊と交戦している自軍の姿があった。本来なら包囲していき殲滅する予定だったが包囲すら出来ていなかった。


挿絵(By みてみん)

「これでは中央軍が突破されこちらに来るのも時間の問題だぞ!?」

「将軍! 指示を!」

「……撤退だ。撤退する! すぐに全部隊に知らせろ!」

「はっ!」


 トレストスは潔く負けを認めると撤収の準備に入った。しかし、伝令が全部隊に行き届く前に中央軍が突破され本陣が強襲された。トレストス自身も剣を取り戦うも異常な力を持った兵(・・・・・・・・・)によって指揮官クラスは全て捕縛された。

 中央軍および本陣の撃破を成功させた改革派戦闘部隊は左右の部隊へと攻撃を開始した。結果、議会派は次々と降伏していった。この戦いで改革派は1000人ほどの死者を出したが議会派は死者約1万、重軽傷者1万以上、その他投降者約2万以下と全滅という結果となった。

 その後改革派は悠々と首都へと進軍し兵が誰一人戻ってこなかった議会派は降伏した。


「へぇ、意外と貯め込んでいるな」


 首都にある政治中枢である議会館にやってきた皇兄弟は押収した金品のリストを見てそう呟いた。議会に参加していた人間は半数が逃げてしまったがその全員が着の身着のままの状態で残りは荷物を持って逃げようとしたところを全て捕らえられていた。その結果、議会がこれまで貯め込んでいた金品が全て皇兄弟に渡る結果となった。


「これだけあれば内戦後の復興もすぐに終わりそうだね」

「ああ、そうだな。一般人というのは自分の生活が保障されれば簡単にこちらを支持してくる。内戦で荒れ果てた土地を前以上の豊かな物にすれば我らに歯向かう者などごく少数しか出て来ないだろう」

「そうなったら絶対君主制と監視社会態勢を確立させて抵抗する力と結束を奪い取る」

「それが完了すればいよいよ”外”に目を向ける事が出来る。バルバリア共和国連合は国力のわりに軍事力は低いうえに決断力、結束力も低い」

「北部の小国家群も今の僕たち以下の国力しか持っていない。北でも東でも拡大し放題だね」

「だが、やりすぎは禁物だ。ハクレイド帝国、ガルムンド帝国と我ら以上の大国は多くある。今は大丈夫だが西の大陸も気がかりだ。やるときはこちらの邪魔を出来ない状況の時に行うべきだ」

「それまでは大人しく、国内の開発と技術向上を目指すだね?」

「そうだ。同士たちも戦闘系は暇になるかもしれないがそこは我慢してもらう事になるがそれ以外は忙しくなるぞ。無論、俺達もな」

「大丈夫だよ。このくらい、楽少さ!」


 皇兄弟は今後の方針について話し合う。数時間後、バルグラットは内戦の終結を正式に発表。国賊と断定された議会派の大物は次々と処刑されて行き皇兄弟への権力集中が行われていくことになる。


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