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異世界転生~神に気に入られた彼はミリタリーで異世界に日の丸を掲げる~  作者: 鈴木颯手
第三章 皇歴6年~パララルカ王国殲滅戦~
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第二十二話 パララルカ王国殲滅戦6~蹂躙~★

 左右より目で追いつけない速度で放たれる戦車砲。それらは確実にパララルカ王国軍の士気と兵を削り取っていた。兵の体や頭を砲弾が貫通し触れた部分とその周囲を文字通り消し飛ばし地面に着弾する。瞬間、周囲の兵をばらばらにするほどの高威力の爆発が起こり兵を吹き飛ばす。

 それが十回同時に起こり間髪入れずに二回目、三回目と行われる。指揮官、雑兵問わずに平等な”死”が与えられていく姿に兵士の士気は完全に崩壊した。


「に、逃げろぉ!」

「ここにいたら殺される!」

「戻れ! 急いで戻るんだ! ……ぎゃっ!?」


 逃げ出した兵に副武装の機銃斉射が行われる。雑兵の胸当てどころか騎士の鎧すら貫通するその威力に兵たちの体はハチの巣にされていく。逃げだせば機銃でハチの巣に、その場にとどまれば戦車砲が猛威を振るい前進すれば野砲より放たれる砲弾の雨が降り注ぐ。パララルカ王国軍は完全に逃げ場を失っていた。

 しかし、そんな中でも本陣は比較的安全であった。戦車砲の狙いからは外れ、機銃は逃げ出す兵によって遮られていたからだ。


「敵は動く大砲も持っていたのか……!」


 アクラは悔し気に呟く。彼女の眼には火を噴く10式戦車の姿があった。彼女にはあの機械は死神のようにも見え、自部たちを地獄にいざなう最悪の存在に思えていた。


「将軍! 将軍!」

「っ!」


 部下の必死の呼び声で現実に戻される。彼女には茫然とする時間は残されていなかった。彼女は難しい、いや無理だと思いつつ指示を出す。


「……撤退だ! 撤退するぞ! 全力で南に逃げるのだ!」

「はっ!」


 アクラの命令が下された事で撤退の銅鑼が鳴らされる。しかし、耳をつんざくような砲撃音にかき消され本陣付近の兵以外に届いて否かった。彼らは逃げる事も攻める事も出来ずに戦車砲から逃げ惑い機銃斉射から身を隠す事しか出来ず、遠くないうちに全滅する事となる。

 一方のアクラは兵に銅鑼が届いていなかったとしても悠長に本陣で構えている様な事はしなかった。馬は砲撃音で混乱し暴れており使い物にはならない為走って逃げる。砲撃で一片に全滅しないように兵士たちは感覚を開けつつ逃げるがそれを許さないとばかりに4両の戦車が動き出す。馬車すら超える速度でアクラ達を追いかける。この速度なら直ぐに追いつかれるだろう。


「っ! アクラ様! 私はここで失礼します!」

「ビーン!? 一体何を……!」

「短い間でしたがアクラ様と共に戦えたことを誇りに思います」


 ビーンという騎士はそう言うと数名の兵と共に反転して戦車へと向かって行く。それを見てアクラは悟る。自分を逃がすために立ち向かう選択をしたという事に。後ろで機銃音が響き戦車が近づいてくる音が聞こえてくる。たかが十名にも満たない兵では足止めすら出来なかったのだろう。アクラにはそれが分かってしまったが彼女にはどうする事も出来なかった。


「……アクラ様! ここで失礼します!」

「……くっ!」


 一人、また一人と騎士が足止めを買って出る。それをアクラは涙をこらえて見送る事も出来ずに走る。既に彼女の周りには人はいなくなっていた。全て、足止めを買って出てまともに時間を稼ぐことも出来ずに命を落としたのだ。


「あっ……!」


 ふと、アクラは石に躓きその場に倒れ込む。立ち上がる事も出来ずにうつ伏せでいるとアクラの周囲を4両の戦車が囲む。すべての砲塔が彼女を狙っているが撃って来る事は無かった。そして、戦車から一人の男が出てくると銃を構えつつ話しかける。


「お前がこの軍の大将だな? 捕虜として帝都まで移送する」

「……好きに、しろ」


 抗う事すら諦めたアクラはそれだけ言った。男はそれを感じ取り彼女の体を縛ると戦車に乗せ自軍の陣地に戻っていくのだった。










 パララルカ王国軍二万と日本帝国軍一万の戦いは総大将アクラ・ベル・ブレストラッパー以外の兵の全滅と総大将の捕縛というまさに惨敗という結末で終了した。更に王都を破壊され中枢の機能が失われた事でパララルカ王国の抵抗能力はほぼ皆無となった。

 数日後、アクラは帝都ヤマトに移送され捕虜という扱いで監禁生活を送る事になる。一方の日本帝国軍は南下を続け更地とクレーターしか残らない王都に到着。パララルカ王国を東西に分断する事に成功したが東側の勢力は聯合艦隊によって攻撃を受けたため呆気なく降伏した。一方の西部も国王や宰相などの上層部が逃げていたがまともな兵など残っておらず降伏乃至寝返りは時間の問題となりつつあった。

 パララルカ王国が無法地帯を平定する時にぶつかって以来五年に渡る両国の戦いは日本帝国の圧勝という形で幕を閉じようとしているのだった。


挿絵(By みてみん)

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