『ホートル』
H28/2/12 『遠見』スキル追加、キルド→ギルド
トレーニングから帰ってきた俺は完璧に自分の力をコントロールできるようになっていた。
またトレーニングを始めて暫らくした頃には自分のステータスも表示されるようになった。
これにより、ずっと気になっていた現在の自分の力を知ることができた。
*
市原 翔太(17) 種族 人?
LV 1***レベルアップできます
HP 800,000/800,000
MP 1,500,000/1,500,000
Str 1,200,000
Dex 1,700,120
Vit 1,700,000
Int 1,400,000
Agi 1,800,000
Mnt 1,500,000
スキル
武術LV99
体術LV99
剣術LV99
刀術LV99
短剣LV99
投擲LV99
弓術LV99
槍術LV99
棒術LV99
調教LV99
射撃LV99
威圧LV99
隠蔽LV99
解析LV99
遠見LV99
鍛冶LV99
調合LV99
隠密LV99
潜水
吸血
指揮LV99
料理LV99
手加減
ステータス操作
経験値操作
言語理解
空間把握
危機察知
無詠唱
同時展開
魔力操作
攻撃力上昇
HP自動回復上昇LV99
MP自動回復上昇LV99
部位欠損回復
治癒速度上昇LV99
状態異常無効
呪術無効
限界突破
アイテムボックス
意思疎通
経験値増加
必要経験値減少
属性
全基本属性(火、水、土、風、光、闇、無)
全派生属性(雷、氷、炎、天気、飛行)
全ユニーク属性(時空間、契約、破壊、召喚、創造、重力)
称号
超越者
覇者
絶対者
理から外れしもの
刀術を極めしもの
剣術を極めしもの
射撃を極めしもの
武術を極めしもの
魔術を極めしもの
魔法を極めしも
完全に俺は人間をやめてしまったようだ。
明らかにステータスが異常だ。
というか、ステータスでも種族に?がついていること自体がおかしい。
俺は人以外になるつもりはないのだが。
自分で人だと強く思いながら、ステータスに意識を戻す。
以前の魔法の行使で経験値がたまり、レベルアップができるようになっていた。
一度、空間内でレベルアップしようとおもったのだが、どうやら外の世界でなければできないようだったので諦めたのだ。
トレーニングはかなりハードなものだった。
何度も空間を作り直し改良を加えたし、空間の内部にさらに別の空間を加えてLV1000超えの魔物を時空間魔法で作り出し、空間内で自分を死なないようにして、何度も死にかけながら魔物と戦闘をした。
ただ、残念なことに経験値としては反映されなようだった。
というのも時空間魔法で作り出した魔物はすべて偽物とみなされ、世界としてみたときに存在しないものになるかららしかった。
またトレーニングだけではHPやMP、STRは増加せずレベルアップ時にだけ増加するようだ。
トレーニングの休憩時間で、この世界の歴史や通貨、国の種類や世界情勢等を一通り確認した。
やはり知識として有っても、それを自然体で使えるようにしておきたっかのだ。
ついでに、人のステータスも調べてみたが、やはりLV1でこのステータスはあり得ないようだ。
LVUPしたらこれより強くなるようだが大丈夫だろうか?
なんとか人間の範囲内で収まってくれることを願う。
ちなみにとある国の王国騎士団団長がLV70でStrが2,350らしい。
『遠見』で団長を視認しながら『解析』で調べたら出てきた。
種族は人間以外にもドワーフやエルフ、獣人、竜人、魔族等地球では考えられない種族の人々が生活している。
種族ごとの特長もそれぞれだが、ゲームなどで用いられる設定とほぼ同じようなものだった。
通貨は下から順に鉄貨、銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、小金貨、金貨、大金貨、白金貨、黒金貨、国貨が存在する。
価値を日本円に直すと、鉄貨が1円、銅貨が10円、小銀貨が100円、銀貨が1,000円、大銀貨が1万円、小金貨が10万円、金貨が100万円、大金貨が1千万円、白金貨が1億円、黒金貨が100億円、国貨が1兆円になるそうだ。
ただし、国貨は国貨を製造した国のなかでしか使えないという制限があるようだ。
この世界には当たり前にギルドと呼ばれる組織が存在する。
冒険者ギルド、商業ギルド、魔法ギルドなど多くの人は何かしらのギルドに入っているらしい。
俺はまず冒険者ギルドに登録しようと思っていた。
冒険者ギルドでは魔物の素材買い取りや、薬草の買い取り、依頼を達成すれば依頼報償金がもらえる。
ランクも存在し、最高がSSSで、上から順にSS、S、A、B、C、D、E、F、Gである。
一流冒険者となるのはAランクからだ。
先ほどステータスを出された王国騎士団団長がSSランク。
世界で見たときにSSSランクは冒険者ギルドの長1人、SSランクは28人、Sランクは160人となっている。
200年振りに外に出た俺は、以前倒したクマを放置していたのでそのままアイテムボックスにしまい、刀を腰に差して歩き出した。
目指すはもちろん近くの街。
名前はホートルというらしい。
ホートルについたら依頼を達成して金を稼ぐ必要がある。
ホートルへ向けて歩き出しておよそ一時間後、俺の目の前には大きな塀がそびえたっていた。
塀の上には兵士と思われる人が歩いていた。
入口を見つけなければ入れないので、塀に沿って歩いていくと人の行列が見えた。
行列の先頭には巨大な門があり、門の傍で10人くらいの兵士が街への出入りを監視、検査していた。
俺の格好は黒のストライプのスーツに日本刀を携えるという、かなりおかしな格好になっている。
しかもこの世界の服にスーツというものは存在しないらしい。
一応少しでも違和感を抑えるために、メイン武器を刀からハンドガンに切り替えて懐にしまう。
因にハンドガンはFN5-7にレーザーサイトをつけたものだ。
これで少しはましになったはず。
念のためサブにナイフを選択し、隠し持つ。
戦闘になったとしても負けることはないだろう。
うまくいけばこのまま街に入れるはずだ。
門の近くに行くと、兵士が俺の姿を確認するなり全員が警戒態勢に入った。
「そこの者、止まれ!!
何者だ!」
やはりそう上手くは行かないようだ。
俺は勧告されたとおり立ち止まり、質問に答えた。
「ただの一般市民だ。
街に入りたいのだが何か問題でもあるか?」
自分で言っておいて何だが、問題だらけだ。
服装も怪しいし、返答も煽っているようなものだ。
「一般市民だと?
その服装はなんだ!
武器も持たずに護衛も付けずにその怪しげな格好で一般市民なわけがないだろう!」
案の定、余計警戒させてしまったようだ。
「騒がしい、何事だ」
俺がどう返そうか考えていると、一人の大柄な男が出てきた。
その男は他のものに比べ、随分と立派な装備に身を固めている。
加えその男に続くように5人の兵士が出てきて、門番たちに歩み寄る。
すると門番たちがその大柄な男の姿を視界に入れるや否や一斉に頭を下げた。
「き、騎士団団長殿、何故こちらに?」
どうやらあれが騎士団団長らしい。
「少し用があってな。
それよりも何事だ?」
話しかけられた門番はビクビクしながら事の顛末を説明する。
その間俺はただ突っ立っているだけだ。
説明を終えると団長は俺の方に歩いてきた。
「お前は魔族ではないな。
だが、かなりの手練のようだ。
一体何者だ?」
さっきの門番と同じ質問だ。
それに対して俺も、さっきと同じ返答をする。
「何者もなにも、これから冒険者登録しようとしているただの一般人だ。」
団長は俺の顔を凝視したあと何か言いよどんだ。
しかし直ぐに切り替え道を開けてくれた。
「…嘘は言ってないようだが、もう少しマシな返答はないのか?
…おい、通してやれ」
やや呆れが混じってはいたが、その一言であれだけ警戒していた門番たちが、あっさりと道を開けた。
俺が拍子抜けしてしまうほどに、あっさりと。
「すまないな。
これも街の安全を守るためだ。
気を悪くしないでくれ。
俺はこれから王都に戻らねばならないが、用があればいつでも来てくれて構わない。
王都の騎士団詰所に伝言をしてくれれば私に伝わるはずだ。」
「あぁ、わかった。
何かあれば頼らせてもらう。
…またな」
少々トラブルはあったが、騎士団団長のおかげで無事街に入れた俺は、真っ直ぐ冒険者ギルドに向かう。
場所はマップで確認済みだ。
「またトラブルに巻き込まれそうだ…」
街の検問でのひと悶着からの騎士団団長、もうこれ以上のトラブルは御免被る。
しかし服を買おうにも金がないし、創造魔法で作れるができるだけそれは避けたい。
もしまたトラブルが起きても力づくでなんとかなるだろう。
冒険者キルドは大通りの直ぐそばにあった。
一軒だけばかでかい建物に、剣と盾の看板が掲げられている。
大きな扉からは多くの人が出入りをしていた。
もっともその大半が鎧に身を包んだり、ローブを着たいかにもな人たちだが。
俺はその大きな扉を押し開け歩みを進めた。
中はひどい喧騒だった。
酒場もあるらしく、注文が大声で飛び交い、一方で怒声や罵声、また一方では情報交換と普通に話しても声は届かないレベルの喧騒だ。
入り口の向かいには銀行のような受付が並び、依頼を終えた人や受ける人が列をなしていた。
俺は一番人の少ない列にならぶ。
運が良いことにここは進むスピードも速いようだ。
着々と進んでいき、俺の前にいた人の依頼の受注が終わり、俺の番が回ってきた。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付は耳の特徴的な綺麗な女性だった。
所謂エルフと呼ばれる種族だろう。
「冒険者の登録をしたい」
するとさっきまで騒がしかったギルド内が少し静かになった。
「かしこまりました。
では実力テストを行いますので着いてきてください」
エルフの女性は後ろで働いていた他の職員に受付を任せ、席を離れた。
俺は多くの視線にさらされながら受付嬢に着いていく。
受付嬢は一度建物を出て、裏手の建物に案内された。
そして、ここが試験場兼練習場だと説明された。
普段は開放しているが、週に1日ランク試験のため貸し切りになるらしい。
俺は運良くその1日に来たとのことだ。
「今回試験をしてくださるのはSSランクのマーゼさんです。
偶々こちらに来ていて今回試験を担当してくれることになったんです。
運が良かったですね!」
SSランクということは屈指の強者ということだ。
一発目の相手がSSランクとは、運がいいことなのだろうか?
俺は疑問に思いながら曖昧に笑みを浮かべて誤魔化す。
すると俺の苦笑いに気付いた受付嬢が更に言葉を続けた。
「SSランクの肩に相手をしてもらえることなんて、そうそう無いですよ?
きっと助言なんかもくれるはずです。
それに相手も本気で来る訳じゃないですし、安心してください。」
別に俺は自分が怪我をすることを心配しているわけではないのだが、受付嬢にはそう見えたようだ。
力加減を間違えられないな。
間違えば一撃で殺めてしまう。
受付嬢に適当に返答をしながら、内心では真逆の心配をしていた。
俺より前の人の試験は既に終わっているらしく、直ぐに試験を受けられるようだ。
さっさと終えられるならこちらとしては嬉しい限りだが、早速面倒事の予感がする。
試験では自分の武器か試験用の刃引きされた武器か選択できる。
自分の武器を使う場合は、馴染んだものなので取り回ししやすいし信用も出来る。
しかしその場合は相手もオリジナル装備で来るため、リスクもでかいようだ。
もう一方の試験用の武器を使う場合は、相手も同じく試験用の武器なのでリスクは少ないが、慣れない武器な上に種類が限られる。
俺は試験用の武器を使うことにした。
今はまだ下手に自作の武器を出して目立ちたくない。
受付嬢は武器の他に気をきかせて、防具も用意してくれた。
フルプレートや鉄の鎧もあったが迷わず動きを制限しない皮鎧を選んだ。
武器は片手剣に予備の短剣を装備して準備完了だ。
試験場の中は円形をしていた。
中心部分だけ地面が土で、周囲は何個かの個室と休憩スペース、それと客席になっていた。
俺が準備を終え試験会場に入ると、背の高いイケメンの男が俺がいた部屋とは別の部屋から出てきた。
手には槍をもち、腰に短剣を差している。
鎧はフルプレートアーマーではなく、動きを制限しない程度の急所に金属を使った部分鎧だった。
男は俺を視界にいれると、優しそうな表情を引き締めた。
「初めまして、僕はマーゼ。
君の試験相手を担当させてもらう。
よろしくね」
やはり強いだけあって、ある程度は相手の力量も測れるようだ。
部屋から出てきた時までの余裕の表情はなりを潜め真剣な表情で俺を見ている。
「よろしくお願いします。」
俺は敢えて少し笑みを浮かべながら返した。
男は一瞬驚いた表情を浮かべたが、直ぐに先程よりも表情を険しくした。
「君はかなり強そうだけど、以前何かの訓練か、指導を受けていたのかな?」
「以前少し自主トレーニングを。
どうしてですか?」
わかりきったことを聞きながら、完璧にこちらのペースに乗せる。
マーゼは少し困った顔を浮かべた。
「何も大したことではないよ。
ただ君は全く隙がなかったからね。
いや、人為的な隙以外はないというべきかな?
さて話はこれくらいにして、始めようか。」
話は終わりとばかりに男は槍を構えた。
それに答えるように俺も片手剣を鞘から抜き、脱力する。
そう、構えるのではなく脱力した状態で剣を下げているのだ。
普通に考えれば自殺行為にしか見えないだろう。
だが、このマーゼという男は俺見て厳しい表情をした。
俺の考えが読めずに出方を伺っている。
しかし俺から動くことはない。
いつまでもこのままというわけにはいかない為、結局マーゼから動いた。
「先制攻撃はあげるつもりだったけど、そっちから来ないなら僕からいかせてもらうよ。」
その言葉に俺は笑みだけを返す。
さて、SSランクがどれ程の強さなのか楽しみだ。
男は無詠唱で身体強化を掛けると全力で踏み込んできた。
この世界で無詠唱はかなりの高等技術と言われている。
それをマーゼは当たり前に行うのだからやはりそれなりの実力があるのだろう。
現にSSランクなわけだし。
俺に向かってきたマーゼのスピードは普通なら目で捉えることもできない速度だった。
現に受付嬢は目で追えておらず、突然消えたマーゼに目を見開いて驚いていた。
だが俺にとってはこの程度のスピードは身体強化を施すまでもなく余裕をもってとらえることが出来る。
寧ろ亜空間でのトレーニングに比べるとスローモーションにすら思えた。
槍が迫っても何もしない俺にマーゼは力を図り違ったかといった表情を浮かべた。
しかし直ぐに考えを改めさせられた。
少年は槍が目の前に来た瞬間に空いていた左手で槍を掴んだのだ。
槍はそのままピタリと止まり、マーゼが力を入れてもピクリとも動かない。
マーゼは自分の全力が全く通用しないことに顔を驚愕に染めた。
しかし直ぐに槍を手放し後ろに跳躍する。
そして息を継ぐ間も無く攻撃魔法を次々と放った。
流石SSランクだけあっていい判断力をしている。
接近戦では分が悪いと判断するや否や遠距離の魔法攻撃に切り替える。
簡単なように見えて実は難しいことだ。
俺はこんな状況でも冷静に状況を見ていた。
しかしその一方でしっかりと相手の攻撃魔法を対抗属性の魔法で撃ち落していく。
その余りにハイレベルな攻防に受付嬢は固まっている。
普通なら魔法を魔法で撃ち落とすことはできない。
なぜなら魔法がぶつかった時に拮抗するであろう威力の魔法を、相手の魔法が発動してからこちらも発動し、且つ同軌道上に放たなければならないのだから。
しかも俺はただ対抗属性で撃ち落とすのではなく、魔法自体が消滅するように細かな調整もしていた。
これも亜空間修行のおかげなのは間違いない。
やがて男は魔力が少なくなってきたのか魔法を撃つのを止め、短剣を抜いた。
決着を付けるつもりだろう。
俺もそろそろ決着をつけてもいい頃だと考えていた。
俺はさっき奪った槍を左手で投擲する。
狙いはマーゼの右足のすぐ横、僅か3センチの場所だ。
槍は狙い違わずマーゼのすぐ横に刺さった。
マーゼは槍の速度に反応できておらず、急に隣に刺さった槍に目を見開いた。
マーゼはSSランクの自分が全く手も足も出ないという余りにも現実離れした事態に諦めの表情を浮かべる。
しかし最後は自分に出せる本気の全力で掛かろうと、身体強化の重ね掛けをして一気に突っ込んできた。
魔法の重ね掛けは超高等テクニックで、効果も大きい分その反動もまた大きい。
特に身体強化の重ね掛けは反動が体に掛かるため、効果が切れたあとは全身が悲鳴を上げる。
俺は脱力していた片手剣を振り上げ、男の短剣を弾きとばして首に剣を添えた。
これで勝負ありだ。
マーゼは首に添えられた剣を見て直ぐに自分の負けを受け入れた。
「参った。
君は本当に強いな。
僕じゃ手も足も出ないよ。
ミーシャさん、彼のランクは最低でもSS、いやSSSだ。
正直なところ僕では力不足だったみたいだ。
あ、君の名前を教えてもらってもいいかな?」
「ショウタです。
今日はありがとうございました」
「ショータくんだね。
こちらこそありがとう。
僕もまだまだだということがわかったし、慢心せずにもう一度鍛え直すことにするよ!
これからの活躍を期待しているよ!」
じゃあね!とマーゼはどこか清々しい表情で会場を出て行った。
俺はその清さに本気で驚いていた。
あの清さはとても気持ちが良いものだ。
ミーシャというらしい受付嬢と俺はマーゼが出ていくのを見送ってから、そのまま試験場を離れ受付に戻った。
面倒事の予感を感じながら。