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蚕のひと  作者: Hank Memory
はじめに
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はじめに

はじめに



 日本の関西地区の何処かには風東(ふとう)村という未だ外界からの介入を拒むように閉塞的な場所が存在する。

 都市からは遠く離れ、町村が仲良くくっついた山に囲まれた地方の村。

 世間的な村の知名度はそこそこあるものの、歩いていけるような所ではないので物好きな輩しかやってこない。


 村の観光などたかが知れている。

 珍しい野鳥や草木花、天体観測地には丁度いいだろう。

 しかし風東村近隣にはレジャー施設があり、わざわざ村に立ち寄らなくてもいいくらいだ。


 それでもこの村目当てにやってくる他所者がいるとするならば、「狼伝説」類である。

 度々地方の新聞、週刊誌に登場しては消える程度の噂話であるし、まず狼そのものが絶滅種であり目撃されてもそれが本当の狼である証拠すらない。

 だが火のないところに煙は立たぬ、と言うように目撃情報はいくつか存在する。



 実際に風東村に住んでいた事があった私も日常的に狼の話をよく耳にしていたし、もしかしたら狼と道端ですれ違っていたかもしれない。

 村の掟にも夕方から早朝は山に入ってはならないとされていた。

 子供の頃は妙にそれが恐ろしく、律儀にも私はそれを守っていた。

 山に入れば、狼に腕や足を喰われると親にも脅された、一種の寓話的存在である。



 さて、本著は私が唯一無二とする友人、鳳満晃(おおとりみつあき)氏の半生とそれにまつわる風東村の狼伝説の真相を補足したものである。

 きっかけというのは(おおとり)氏直筆の手記が私宛てに届いたことが事の始まりで、住所は不明だが送り主は鳳満晃氏であると判断する。


 鳳氏と私との関係は彼の手記内にもある通りに、同じ村の出身であるということ。

 彼は私と同い年で幼なじみであること。

 私は小学校5年生の頃に市内へ引っ越したので疎遠になってしまったが、医大で再会できたことである。


 時事問題に詳しい方なら風東村災害をご存知だろう。

 そう、オオカミ村事件のことである。


 鳳満晃(おおとりみつあき)氏は大学病院で研修後、同病院に数年勤務しその後は実家の診療所の助手に就任。

 そして災害に巻き込まれて以来、消息不明となっていた。


 此度、彼からは手記と一緒に手紙も同封されていた。(内容に関しては守秘義務のため伏せる)

 手紙の返事は申し訳ないがこの本のあとがきに記す。



 この場を借りて私は(おおとり)くんにメッセージを送りたい。

 どうかこの本のあとがきを読むまで私への手紙は控えて欲しい。

 もし手記と私の考察が違えているのならどうぞご一報を。



馬宮修/2017年


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